悪い耳
達哉としては時間があれば、真未の顔を見たいと思っている。
「最近、ちょっと冷たいんじゃないの?」
そう切り出すのは達哉であった。
「えっ、そうかな?」
「忙しいのはわかるけどさ、もうちょっと構えよ」
「…わ、わかった」
そういわれるとは思いもしなかった。
「なぁなぁ、耳かきしようぜ」
そうはいうものの、耳かきをするのは真未の方である。
「そんなに耳かきが好きかね?」
「あぁ、大好きだね」
耳の中をくすぐられるような気持ちよさ、最高だね!
「あんまり私は上手じゃないんだよな…」
「あれでか?あれで?あんな耳かき屋あったら、俺通っちゃうよ」
「え?いらっしゃいませ」
「いつもの膝枕堪能コースで!」
天然に、ボケを重ねてみた。
「いや、うちはそういう店じゃないんで」
嫌悪感まるだしで真未に断られた。
「なしで」
「え?」
「悪のりしすぎたわ、やっぱりダメだわ、お前はそういうやつなんだから、俺まで悪のりしたら、終わらねえ」
永久に続く天然とボケのコンビネーションをお楽しみください。
「楽しめるか!!!」
キレたところで。
「よっ!」
真未を抱き上げた。
「えっ、あっ、なに?」
もちろんいきなりなんでびっくりする。
体重は預けられたままなので、しがみつくしかない。
距離は近い。
「俺の耳はどうなっている?」
そこで聞いてくるので。
耳をつかんで、中をのぞいてみる。
「耳の外も若干白いのがこびりついているし、耳の中もたくさん入っているんじゃないかな?」
「ん~そうか」
とりあえず密着しているので、機嫌は戻るようだ。
「忙しかったじゃん」
「そうだね、最近は」
「会いたかった」
「そう?」
「そうだよ、そういうもんだよ!」
天然の土壌で勝負をしてはいけない、押しきられる。
「忙しくて返信もないから、もうどうでもいいのかと思っていたわ」
「うっ、それは…だな」
返す余裕もなかったようだ。
「俺、あんまり頭がよくねえし」
「あぁ、勉強してたのね、えらい、えらい」
頭を撫でられたが、嬉しいんだけど、それじゃない。
「…膝枕」
赤くなって俯いて、それだけ小さく呟くと。
「いいわよ」
真未は微笑むのである。
「ふっふっ、悪い耳はお仕置きしなければなりませんな」
「お前基準の悪い耳ってなんだよ」
「あんまり掃除してない耳かな、あっでも、掃除しすぎても悪い耳かも」
細い耳かきは準備するために、真未は戸棚に向かう。
「今日から新しい耳かきですよ」
「前のと同じように見える?」
「業務用の耳かきを買っちゃったんで、同じ形だよね」
「えっ、なんでそんなん買ったの?」
「歯ブラシを通販しようとしたら、送料が安くなるの後500円ぐらいでさ、じゃあ、何を買おうかって迷ったら、そういえば耳かきかなって」
「ふぅん」
「前まで使っていた耳かきと同じのが安く出てたから、まとめて買ってしまえって思った、なんか前のは耳かきが減ってて」
「減ってるってどこが?」
「ええっとさじの部分かあるじゃん」
「あるな」
「丸みが減って、角ができていた」
「それちょっと怖いだろう」
「そんなに気にならないかなって程度だったんだけど、その耳かきを使った後に、新しい耳かきで掃除をしてみたところ、とんでもなくとれてしまったので、あっ、これは捨て時かなと」
「耳かきって減るんだ」
「減るみたいだね、新しい耳かきの力を見せてくれるわ!」
そういって、サクっと耳の中に耳かきを入れて、クルリと回してみると。
「…とれすぎだと思うね」
「えっ、何、そんなにとれたのかよ」
「ちょっとコレはモザイクでしょうか」
垢と毛が絡まった黄色い物体が降臨した。
「いけませんね、これは…悪い耳です」
「なんかその言い方怖い…」
このあと、真未は少し本気を出した。
力を入れずに、耳かきの重さだけで、耳の中をかきあげた。
途中だんだんと気持ちよくなってきた達哉は、悶絶するはめになる。
自分で耳かきをしても、この気持ちよさは全くでないため、だからこそ真未に耳かきをしてと甘えるのであった。
…カリ!
そんな音が全身に響くと、我慢するために足の指をぎゅっと折り我慢した。