麦茶
耳をモミモミされている。
私はこれから耳かきをする、その前に血行をよくておきたいのだ。
モミモミ
誰も私の耳かきをしてくれないので、自分で耳かきをして、満足するのは大変だった。
ここでな…
「じゃあ、耳かきしましょうか」
といってくれる人がいるわけないし。
「耳かき終わったら、ご飯作りますね」
って言ってくれるわけじゃないし。
いかん、考えてて悲しくなってきた。
でもだ…
外は暑い、そしてセミの鳴き声なんてもう聞きたくはない。しかし、ここは涼しい、そこには彼女がいる。
コポ…
ガラスのコップに、氷を入れて、そこに麦茶が注がれる。
「はい」
彼女は麦茶を私に手渡してくれる。
「ありがとう」
「ふっふっ」
受け取った私の姿の何が楽しいかわからない、けども、微笑んでる。
ちょっとその微笑みが気になって、私の目は泳いでいたが、泳ぎながらも、麦茶を最後まで、ほとんど一気に飲んで、カラになった麦茶の入っていたガラスコップを畳の上に置く。
「じゃあ、耳かきしましょうか?」 「…うん」
耳かきしてほしいのに、ぜんぜん素直じゃない。
「ほら、寝て」
彼女にほぼ強引に、膝枕にされる。
「じゃあ、始めるからね」
「…あぁ」
緊張してて、目なんてつぶれない、硬直したままで、耳にかかる髪をかきあげられる。
「綺麗にしちゃうぞ」
もぞもぞ
耳の中に、耳かきが入ってから、ようやく、私は目をつぶる。彼女の膝の上、安心しているのだけど、それでも耳かきをされて、とても照れくさい。 カリカリ
不意に、耳に彼女の指が触れる、体温は彼女の方が低いので、それだけでぴくっとくる。
自分でやったら、確かに痛くはないんだが、眠れないので、リラックス出来ているかと言ったら、とても疑問だ。
「今度から、ずっと耳かきは私がしちゃうからね」
妄想の彼女が、そこまで私に言った所で目を覚ます。
さすがに、そこまで言ったら、危ない人間だろうと、ツッコミを入れて、妄想を終了させた。
彼女欲しい…
自分の人生の寂しさに、耳かきをしていて気がついてしまった。




