梵天さわさわさんのお気に入りの店
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少し奥に耳かきを入れると、サジ部分がふれたところで、垢がボロボロと崩れた。
この辺りはみんなそんな感じになっている。
自分で耳かきをしたいが、自分ではやりにくい耳というのはあって、このお客さんの耳なんてまさしくそうである。かこうとして、耳の奥に耳かきを入れると、耳かきのどこかが当たってまっすぐ入らない、こんな耳はぐいっと耳を引っ張った状態で耳掃除を行う。
この状態はなかなか疲れるが、それでも奥まで覗けるし、白く反射した耳垢がよく見えている。
ボリ
だからこそ、こんないい音を立てることができるのだ。
こういう耳は先に大きいものから、片付ける、人によって色々とやり方はあるだろうが、耳の中はできるだけ余計なものはさっさと片付け、片付けたスペースを使って、他の部分をまた綺麗にしたいのである。
カッ!
剥がれたが、サジに乗ってないものはピンセットでつまんで、ペリペリペリ‥想像以上に大きく剥がれた。
この方の耳の中は全体的に膜が入った上に、ごつごつとした大物があちこちに鎮座している。やっていることしては、ボロボロと大きいものを崩し、サジの上に乗らないならばピンセット、そしてその後はこびりついたものを剥がすという繰り返しである。
店主はこういった細かい仕事をいくらやっても飽きない、むしろもっといいやり方はないか?という求道者気質を持っていた。
そういう精神というのは、耳かき好きには伝わるもので。
今ではあちこちから、あの耳かきいいんだよと、愛好家達が何気にこぼし、それを知った他の愛好家も、こっそり行ってみて。
「梵天さわさわさん(耳かき愛好家同士の名前)が前にいったお店よかったですよ」
「でしょう?」
その店主は脱サラ組であり、子供の頃は耳かきをされても「怖いから奥までしない」「動かないで」と言われたぐらいの思い出しかない。
目覚めたのはとある耳かきのせいだ、たまたま家に新品の耳かきがあり、これは耳を掃除する道具なのはわかったが、理容室に任せ、自分でしたことがなかったので、ちょっと試しにやってみた。
最初はもちろん、おっかなビックリである。
いつも掃除している場所より、ちょっと奥の方までおっかなぴっくり入れてみると‥
ヒタ
(ん?)
なんだ、今のは?今のはなんか変だったな、気のせいだろうか?
ヒタヒタ
あっ、これは‥ヤバイ。何かが目覚める感じのうずがゆさという奴である。
カリ!
ああ、ここでわかってしまった、彼はここで耳かきの虜になってしまったのだ。
これがこの店主、耳かき快楽求道者派になったきっかけであった。




