十二支のパグ
パグによるパグのためのパグ文学
むかしむかしのお話
神さまは揉め事に困っていました。
大きな体の動物が、小さな動物に仕事を押し付けて言う事をきかせていたのです。
ある年の大晦日の朝。
動物たちを集めて、こう言いました。
「明日から長を決める。任期1年。交代制。長に従って仕事をしてもらう。明日新年の挨拶に来た順番で、12位までが長だ」
一通り話終わった後、神さまは、そっとパグにだけ話しかけました。
「お前は食うだけだと思われているが、お前を最初の長したい。お前のような動物が長になっても、従わなければいけない事を示したい。何としても1位になるように」
パグは神さまに、
「1位になったら、おやつ沢山くれぐぁ」
と答えました。
そしてパグはおやつの為ならと、よだれを垂らすのでした。
偶然を話に聞きていたのはネズミでした。
「明日に神さまのところへ行けば、長になれる?」
「なんか貰えるみたいだけど、寒そうだぐぁ~ゆっくりこたつで暖まりたいぐぁ」
「そうか。明日だな」
ネズミがやる気を出していましたが、パグは寒い寒いと言って去っていきました。
大晦日にネズミが牛の家に行くと、牛は支度をしていました。
「うしはゆっくり歩くので、今のうちに出かけるもー」
ネズミはガッツポーズをして、牛の背中に
そっと乗り込みました。
牛は夜通し神さまの所に歩き続け、日の出前に神さまの住むところにたどり着く事ができました。
朝日が昇り初め、神さまが門を開きました。
牛がゴールしようとすると、背中からネズミが牛の背中から飛び降り、
「神さま、あけましておめでとうございます」
と挨拶しました。
神さまは驚きましたが、1位の札を渡しました。
牛は2位になってしまいましたが、
『2位なら大満足だ』
と考えました。
虎は朝出発し、千里の道を駆ける速さで3位に。
酉はいつものように鳴き声を上げ、朝がきた事を皆に知らせた後に飛び立ち。
長になりたい動物たちは、ふとんから飛び起きて支度を整え、急いで出発しました。
そして、兎、竜、巳、馬、羊、猿、酉の順で門をくぐりました。
神さまは遠くに犬の姿が見つけました。
「やれやれ。やっと来たか」
と思いました。
が、近づくにつれ、シワたるみのない犬が走ってくることが分かりました。柴犬です。
「柴くん、パグくんはどうした?」
「パグ君は『任せたよ~』って言ってましたよ」
走りすぎた猪が戻ってきて、最後の12位に門をくぐる事ができました。
落選したのは、猫と鼬。
猫はネズミに騙されたと言い、以降ジェリーというネズミを追いかけるように。
鼬は「ちくしょー」と言って鎌を持つようになりました。
神さまは、未だに来ないパグがどうしているのか、気になり探すことにしました。
千里眼ならぬ万里眼で探すと、神さまの近くにいることが分かりました。
「ここか!」
と神さまは、居間の炬燵の布団を捲りました。
「ぅんぁー、ご飯の時間?」
炬燵の中に、パグが寝ていました。
「い、いつの間に!」と神さまが問うと
「寒いから、ずっとここに居たぐぁ~。
おやつちょうだい」
おしまい。