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ラヴァーズコンチェルト  作者: 神崎るか
9/11

九曲目

「僕は主に音楽関係のステージをプロデュースする仕事をしています」


私の乗った車椅子を押しながら、自分のことを話してくれているのは、目覚めた時に側にいてくれた男性だ。


「かっこいいですね」


「まだ駆け出しですけどね」


にっこり笑った時に目に皺が出来る彼の顔は、知らない人なのに知っている誰かを思い起こさせる。


「あの」


「はい?」


「私に、メッセージカードをくれたのはあなたですか?」


私が一番、気になっていたこと。


「あ...えぇ、その、毎日それを読んで、枕元に。声は届くと、聞いたことがあったので」


少し照れた声が頭上から降ってくる。今、私が上を向いたら、彼は更に照れるだろうか?


「私、読んでました。毎日、夢の中で」


「なんだか恥ずかしいですね」


「色々お聞きしたい事があります」


「何でしょう?」


きゅ、っと、車椅子が止まった。


「まず、あなたは何故私を知っているのですか?」


「父の店で、見かけた事があるんです」


「え...?」


それは、予想外の告白だった。


「貴女は幸せそうな顔でオルゴールを聴きながら無意識に曲を口ずさんでいました。そんな貴女の声に惹かれたんです。失礼ながら着ていた制服から貴女のことを調べました」


「あ、あの!!」


「はい?」


「あなたのお父さんって...」


まさか!!まさか!!!!


「そうです。貴女の通っていた雑貨屋の店主ですよ。貴女が目覚めるひと月ほど前に、病気で他界しましたが」


「え.....」


た、かい....?亡くなったってこと....?


「僕よりきっと父の方が貴女に会いたかったと思います。だから、というわけでもないんですが、父がどうしても貴女にプレゼントしたいと言っていたオルゴールを、父が亡くなったあと枕元で流したことがあるんですよ」


「あっ....あの!夢の中でも、お店に行ってたんです」


「そんなに想っていただけて、父が聞いたら喜びますね。そんなわけでこのオルゴール、貰ってくれませんか?」


彼がポケットから取り出したのは、白い小さなオルゴールだった。

夢の中で聴いた、愛の挨拶が流れてくる、あの、優しいオルゴール。


「えっ....」


「父との約束なんです。貴女に渡すと」


そうだ。

笑った時、あの男性の目にも皺が出来ていた。

そうか。だから、彼を見たとき懐かしかったんだ。

嬉しさと寂しさが混じって、私の目からは涙が溢れていた。


「......ありがとう、ございますっ....」

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