キッザニア横浜編
横浜の広大な埋め立て地に作られた、夢にあふれた、子供だけの社会キッザニア横浜。大人の社会を子供に経験させることで、世界に通用するグローバルエリートを育成するための施設のはずだった。そこに公立中学から三人が派遣させられた。夢に心躍らせる三人を待ち受けていたのは、大人の世界以上に残酷なカースト社会だった。これは、カーストの最下層から、労働者の自由のために戦った社畜達の記録である・・・。
横浜の広大な埋め立て地に作られた、夢にあふれた、子供だけの社会キッザニア横浜。大人の社会を子供に経験させることで、世界に通用するグローバルエリートを育成するための施設のはずだった。そこに公立中学から三人が派遣させられた。夢に心躍らせる三人を待ち受けていたのは、大人の世界以上に残酷なカースト社会だった。これは、カーストの最下層から、労働者の自由のために戦った社畜達の記録である・・・。
テレビのニュースのアナウンサーが焦りながら話す。俺はソファでくつろぎながら、自分が、かつていた。キッザニアの報道を見ている。
「現在キッザニア横浜で大きな動きがあったということです。現地から放送したいと思います。現地の鈴木キャスターお願いします。」
テレビには中学三年くらいの女子アナが映し出された。とはいえ、実際の報道に近い。
テレビの画面が国会の前に切り替わる。小さいが形は国会とそっくりだ。
「こちら国会前です。たった今、労働関係の法律が三つ同時に成立しました。ブラック企業対策法、ザービス残業禁止法、有給所得の義務化です。」
「キッザニア横浜では、過酷な労働が指摘されていましたが。新興団体のマーベリックにより社会党が選挙で快勝。労働関係の法律が同時に制定されました。」
テレビには三〇〇人以上はいるだろうか。国会の前に中学生たちが集結し、ブラックを許すな。とか、サビ残はやめろ。といったプラカードをもっている。そして、赤いロゴの入った帽子やシャツを着ている。そして今回の法律制定に歓喜して踊り狂っている者もいる。
「今、マーベリックの会長。野沢会長にインタビューします。」
そこには三か月前まで一緒に活動していた野沢の姿があった。最後にあった時より大人らしくなっていた。
「今回の、社会党の躍進。雇用環境改善に貢献されたということですが。キッザニアと社会に対して何かコメントはありますか?」
野沢は、マイクを受け取り息を吐いてから答える。
「今回は団結した労働者の大きな勝利です。今回の戦いで我々は自信を取り戻しました。ブラック企業は直ぐには無くならないかもしれない。ですが、今回の勝利で労働者の人権と勇気を回復できたのは大きいです。我々はこれからもブラック企業が無くなるまで戦います。」
その言葉は実社会に暮らす僕にも勇気を与えるものだった。キッザニアに行ったのは半年前のことだ。そして三か月前まで、そこにいた。同じ赤の帽子を手に取りながら懐かしくなった。
これを機にキッザニアと社会の空気を変えられるかがカギだ。