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2nd.初恋




中学校は小学校の隣にあって隣の区の小学校の人もいる新しい共同生活。




でも入学式、私のクラス表に彼の名前はなかった。




初めて離れてしまった教室に焦りを感じる。




私は一組、彼は三組。




教室一個よりも私達の距離はもっと離れてしまった。




正反対のトイレや階段。




違う授業。




“会えなくなる”




そんなことを考えてしまう。




でも彼は廊下の雑巾がけをしている私に自然に声をかけてきてくれた。




「久しぶり」




「掃除してるの?」




「頑張って」




そんなたわいのない言葉が嬉しくて笑みがこぼれる。




そしてまた春が来て私達は二年生になった。




半ば諦めていたクラス替えもまた彼と一緒になった。




二年生の春




嬉しくて嬉しくて、




悲しかった…。




「遠藤隣のクラスの美波ちゃんと付き合ってるって」




信じたくない友達の言葉。




美波ちゃんは隣の区の小学校出身の活発なリーダー気質の子。




「告ったのは美波ちゃんらしいよ」




良かった、遠藤からじゃなくて。




それだけがせめてのの救い。




遠藤も好きってわけじゃないんだ。




同じ教室で一緒に過ごしていても距離は埋められなくて、




彼女がいてもいつも通りの彼に心が痛む。




“美波ちゃんとはどんな話しをするの?”




“私に向けていた笑顔を彼女に見せるの?”




聞きたくても、聞けなくて。




壊れ始めた心は彼の優しさで崩れてく。




そんな私に現実は残酷だ。




「部活行こう」




私は吹奏楽部でトランペットを吹く。




小学校の鼓笛隊の時は音すらでなかったが今では人並みに吹けるようになった。




だから楽器を吹くのは好き。




「湊ちゃん待って」




吹奏楽部は基本音楽室で活動していて一つ上の階にあるので部員は端にある螺旋階段で上がる。




今日も私は友達とその階段を上ろうとした。




「───」




「───」




誰かが階段で話しているらしい、男女の会話みたいなものが耳に入った。




「これ、さっき書いてたの」




「あっ、うん」




美波ちゃんと遠藤だ。




彼女は私達に気付いたのか帰る支度をし始めた。




「んじゃ部活頑張ってね」




顔を赤くして小さく手を振る彼女に彼は私の大好きな笑顔を彼女に向けた。




彼女だけに。




パァーと表情を明るくする彼女の顔を見ても現状を理解することができなかった。




彼は振り返るとやっと私達の存在に気付いたのか少し驚いていた。




「松本達もまたな」




さっき彼女に向けていた笑顔を私に向ける。




「バイバイ遠藤」




ちゃんと笑えてたかな。




小走りに階段をかけ上がった。




振り返ることができなかったのは、




歪んだ視界に彼を映すことができなかったから。




ツラいね。




苦しいね。




「湊ちゃん…」




後ろから聞こえる友達の声すら頭まで届かない。




私が好きなのはその笑顔じゃないよ。




彼女だけに向けた笑顔を私に向けないで。




泣かない




泣くもんか。




いいじゃん、恋ぐらい。




中学生の恋で一生が決まるわけじゃないし。




成績もそこそこ良くて




友達もいて




男子とバカやって、




中学生らしい学校生活でしょ?




ただ好きな人が違う人を好きになっただけだ。




それは、しょうがないことだ。




でも───。




「ごめん由利、先に部活行ってて」




後ろにいた彼女は“…わかった”と言うと先に部室に向かった。




ごめんなさい。




部活に私情をはさんじゃいけないのは分かってる。




でも少し、少しだけ一人にさせて。




部活に行ったら普段と同じように笑うからさ。




君はどうか知らないで




私がここで君を想って泣いていると知ったら君は欲しい言葉を私にくれるから。




それが嘘でも私信じちゃうから。




…好きなんだよ───。





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