1st.初恋
皆で鬼ごっことかを楽しんでいた小学校一年生の春。
私は恋をした。
それは子供ながらの単純な理由だったけど、
その単純な理由で私は恋をしてしまった。
彼はただのどこにでもいるクラスメート。
友達と遊ぶしか興味のなかった私は好きになるまで名前すら知らなかった。
それ以前に私に近寄ろうなんて思う男子はいないだろう。
“雑巾しぼり女”
これが私の幼稚園児時代のあだ名。
誰が付け始めたのかは分からないが“腕を雑巾のようにねじる”という事を私が男子にしてせいだろう。
そんなこんなで知っている人はからかうヤツ以外いなかった。
暴力的な男勝りな女。
それでもいいと思っていた。
───君に出会うまでは。
「大丈夫?」
小学校の給食に慣れてなくて急いで食べて咳き込んでいる私に降り注いだ優しい声。
「…これ、使っていいよ」
差し出された小さな手のひらにのるポケットティッシュ。
駅で配ってそうなただのポケットティッシュ。
だけど初めて心を打たれた。
えくぼを見せる彼の笑顔は幼い私でも分かるように、他の誰よりも輝いていた。
「ありがとう」
緊張していた私が出した精一杯の言葉。
嬉しくて笑う私にまた差し出された手。
意味が分からず彼を見ると彼は優しい笑顔を私にくれた。
『握手』
そう言った彼に応えるようにその手を握り返すと彼も強く握った。
彼の手は、温かくて、
彼の笑顔は日溜まりのように暖かかった───。
にこっと笑うと彼は友達の方に戻っていく。
この時は胸のドキドキの意味が分からなくてこの気持ちに興味を持った。
何で彼といるとこんなにドキドキするんだろう。
目が合うと嬉しくなるんだろう。
会話が楽しいんだろう。
彼と一緒にいるところころ変わる自分の気持ちが新鮮だった。
一緒に過ごす毎日は幸せすぎて、
私の周りは“好き”で溢れてた。
よく見せる彼の優しい笑顔が愛しい。
子供だからできていた無邪気な関係。




