99、過程と行程
「あーっ、もうっ、ほんとっ! 元居た世界も大概だったけど、この世界もこの世界で物騒過ぎでしょっ!」
サラスの声を背中に。
瓦礫を避けては隅へと追いやり。
使えそうなものと使えなさそうなものとを何となく分別していく。
「んーっ、サラスの言いたい事もわからないでもないかなーっ」
「ほんとっ、何でこうも行く先々で……リンっ、アンタもしかしてそういう星の下に生まれたわけじゃないでしょうね?」
「え? あぁ、どうだろう」
「アンタねぇ、自分の事よ? もっと関心持ちなさい?」
「そういわれてもな」
「うーんっ、リンなら問題なさそうなことって考えると、意外とぼくら側なんじゃないかなーっ?」
「私は違うわよ? まぁ、運は良い方じゃなかったけど」
「ぼくも同じかなーっ?」
「私は……リンさんと出会えましたから」
「幸運だって言いたいのかしらね?」
「むーっ」
「私はむしろアンタと出会ってなかったら当に死んでたと思うし、ある意味不運かもね?」
「ははっ」
「何嬉しがってるのよ、ほんと」
「竜のこと忘れてないか?」
「…………」
「あっ……」
「問題ありません」
「最悪ね……。ほんとっ、さっさと終わらせましょ?」
サラスは口を動かすのをそこまでに。
休めていた手を再び動かし始める。
「今まで聞いてこなかったけどさっ」
それでも会話が止むことは無く。
サラスに代わってジーナが誰とは言わずに言葉を紡いでいく。
「詳しいよねっ?」
ただそれは、明らかにこちらへと向けられているものであることは理解でき。
答えないという選択肢は聞かれた以上存在しないわけで。
されど内容が内容ゆえに、事細かに最初から最後まで上手く説明できる気もせず。
「アイギスのおかげ、かな」
結局嘘ではない真実でもってして。
その先を察してもらうことで何とか答えと言う体裁を相手ありきで保管する。
「ふーんっ」
しかし、それで納得するかどうかは相手次第であるからにして。
今回ばかりはどうにかこうにか時間をかけてでも自分の言葉で伝えるべきなのかもしれない。
「アイギス」
四本の内一本が無くなっている椅子に、絶妙な平衡感覚で座っているその者の名を呼ぶ。
「なに?」
足をぱたぱた、瞼をぱちくり。
顔を向けてはしっかりとこちらの視線をその視線で捉えてくれる。
「どうだろう」
「リンはどうしたいの?」
「うーん、話そうか」
「ジーナ?」
「んっ? なにかなっ」
「二回目」
「えっ?」
「二回目」
「え、ええと……うん……?」
ジーナはアイギスの適確な言葉に疑問符を浮かべながらも、自身の中で今正にかみ砕いていると言ったところであろうか。
「リン?」
「ん?」
「あんまり言っちゃダメ」
「あぁ、うん。分かった」
やっぱり、という感じはするものの。
つまりそれは今なら信じる可能性があると言っているようなもので。
当初とは違い、説明すれば十分に理解出来ることを同時に証明している。
「リン」
サラスの声。
アイギスから視線を逸らし、サラスへと向ける。
「何だ」
「アンタっ、その。話さなくて良いけど、分かってるなら別に話してくれたっていいのよ?」
「それは誤解だ」
「え?」
「つまりだな……今分かってること以上に分かっていることはない」
「……そういうことね」
「そういうことだ」
「それで?」
「それで?」
終わったと思った会話に続きを促されては思わず聞き返してしまう。
「続きよ。続き」
「何のだ」
「私たちのよ」
「これから?」
「そうよ?」
「別に何も変わらないが」
「……往生際が悪いわね」
「勘違いだ」
「じゃあ聞くわ。私が死んでもいいの?」
「いいわけないだろ」
「なら守りなさいよ?」
「あぁ」
「助けなさいよ?」
「あぁ」
「傍にいなさいよ?」
「あぁ」
「まぁいいわ」
「初めからそのつもりだ」
「マリアはいいの?」
今度はサラスからマリアに交代の声が飛ぶ。
「私は……聞きません」
「そっ」
マリアの決断に対して、自分で振って置きながらもサラスは実に素っ気ない。
「ジーナも今の内よ?」
「それは、分かってるけど……」
「アンタもいいっての?」
「だって、マリアがいいっていってるのに」
「のに?」
「聞けないよ……」
「ふーん……。ならこれでお終いね」
「うん……」
「はい」
サラスの後に二人の声が続く。
何の事やら分からないが、どうやら一段落付いたようで。




