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盾1回復4の盾ですがなにか?  作者: なんちゃコフ
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91、うささん

「森か……」


 口に出しただけで正直どころかかなり気乗りしない。

 往々にして追跡は困難を極めると同時、追われる側からしてみれば待ち伏せに罠とこちらが地形にも詳しくないとなれば奇襲や不意打ちといった攪乱(かくらん)行為も生きてくる。

 主導権がない以上先手を取られるのはともかくとして、そう細かく有利を拡大されては目的の前に全滅しかねない。

 つまるところ万全を期すならばそもそもが追わない。

 森に入られた時点で相手が出てくるまで待つというのが対応としては理想的だろう。

 しかし、幸か不幸か。

 こと今回に限ってのみ有用な相手の戦力という情報をある程度こちらは手にしている。

 そしてその背中を押すように、確かなことが一つだけ――。


「放っておいたらマリアが行きかねない。単身で行くべきだと思うけど……得策じゃない」

「うんっ。だったらぼくを頼ってよっ」


 ジーナは自信ありげにとんと叩いて見せてはその胸を張る。


「サラスたちが心配だ」

「マリアもアイギスもいるよ?」

「相手の狙いが分からない今、下手に戦力を分けることには賛成できない」

「相手の狙いが分かるなら?」


 ジーナはこちらの考えなどすべてお見通しだと言わんばかりに笑顔を見せている。


「サラスたちの意見を聞こう」

「それは……急いだほうが良いかもっ」

「分かった」


 ジーナは先を急ぎたいようだが、それでもサラスたちに一言相談するというのは過程として必要、いや大切だ。


「ひゃっ――」


 問答無用でジーナを抱え上げては風を切る。


「リ、リンっ」


 腕の中でこちらへと体勢を立て直すように身を寄せるジーナ。

 それからほどなくしてサラスたちの下へと辿(たど)りつく。


「リンさん」


 小走りにて距離を詰めてくるマリア。

 辺りを警戒してくれていたのであろうことは言わずもがな、その声からは説明不要といつでも動ける旨が伝わって来る。


「サラス、アイギスは」


 名残惜しそうなジーナを大地へ。

 寝ているであろうことは見当がつくがそれでも念のためにと確認する。

 万が一アイギスに引き止められるようなことがあれば森への進入は考え直さなければならない。


「寝てるわよ。それもぐっすりね」

「そうか」

「何かあったの?」

「指示を」

「野盗の類だろう。森に入る。マリア、二人を頼めるかい?」

「……私ではないのですか?」


 マリアは一応の納得を示しつつも納得しきれなかった様子。

 ジーナへと一度だけ視線を送るもこちらへとその先を求めてくる。


「ジーナ」


 しかしここまで聞いてこなかったので答えようがない。

 それを唯一知るところのジーナへと顔を向けては間接的に問いかける。


「ぼくにその技術と手段があるからだよっ?」


 ジーナはあくまでもそれを聞くまでもないことだとして詳細を省いては手短に済ませてしまう。

 ただしそれは自身ならまだしもマリアに対しては逆効果だ。


「私にもあります。私の方が適任です。リンさん、私が同行するべきです」


 案の定の態度を示すマリア。


「サラス」

「何で私に振ってるのよ。まぁ、私もある程度はできるけど?」

「マリアっ、時間がないのはわかってるんでしょっ? ぼくが気に食わないのは分かるけど――」

「違います。能力に疑問があるわけでもありません。ただ私が適任だと申し上げているだけです」

「サラス」

「だから何で私に振ってるのよ」

「適任適任って、それをいうなら二人を守るのに適任なのはマリアでしょっ?」

「多少の不利を背負ってもリンさんの帰還と生存率を高めたほうが確実であると判断しました」

「もうっ! マリアのわからずやっ!」

「どっちが、ですか」

「むーっ!」

「サラス」

「アンタが言うべきよ」


 自身よりは上手く収めてくれるかと思ったが、そう言われては仕方がない。

 というよりサラスの言う通りだ。

 元より自身の言葉が原因で始まった行き違い、役目を負うのは当然だろう。


「分かった。じゃんけんにしよう」

「分かりました」

「また古典的な……でもいいんじゃない」

「ではいきます。最初は――」

「待ってっ。その……じゃんけんって、なにっ?」


 ジーナはそこで知らないものは知らないと明らかにする。

 それは何もおかしなことではない。

 自身を含め、こうしてこの場に集まっているのが普通のことであるかのように感じられているからこそ不思議にも思ってしまうが、あくまでも個々人の常識を培ってきたのはその前なのだ。

 当然のように持ち合わせている常識に偏りこそあれ、その細部までもが一致しているということは、それこそ常識的に考えてもあり得ない話だろう。

 ただ、こればかりは郷に入っては郷に従えと見知らぬ土地で何もかも受け入れてきたが故の弊害なのかもしれない。

 しかしそれにしてもとこれまでその差異というものが目立った形で表面化していなかったことの方が驚きだ。

 むしろまだまだお互いに知らないことがあるんだなと少し嬉しくも感じられてしまう。


「じゃんけんを知らないって……なにか、こう。今更だけどそう言えばって感じよね」

「これがグーでこれがチョキ、これがパーでグーはチョキに、チョキはパーに、パーはグーに勝ちます」

「それって……」

「知っていましたか」

「ううん、大丈夫」

「では――」


 そう言ってマリアは早速と拳を握りしめ、たった一度の試みでもってその勝敗は決する事となった。


「三回勝負とか言わないよねっ?」

「はい……」


 マリアは自身の出した拳をどんな思いからかはさておき、じっと見つめては小さくも(うなず)きを返す。


「リンっ、いこっ?」


 マリアに何かいうべきだろうかと考えてはジーナが()かすように腕を取る。


「あぁ、マリア。すぐ戻る」

「すぐ戻ってください」

「分かった」


 それで当たり障りのない言葉と共に念押しされては素直に同意を示し、アイギスが一緒であるため心配ないだろうと思いながらもサラスへと目線を送る。

 そうして紆余曲折こそあったものの、当初の予定通りにジーナと二人して未知の森へと足を踏み入れるに至った。



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