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盾1回復4の盾ですがなにか?  作者: なんちゃコフ
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89、いち早く

「……退屈ね」


 サラスは何をするでもなく。

 馬車の荷台にて体を横にしてはただその心情を言葉とする。


「現状の整理でもする?」


 ジーナが馬の手綱(たづな)を手にしたまま。

 こちらを振り返っては気分を少しでもと紛らわすように提案してくれる。


却下(きゃっか)。そんなの聞いたって気が滅入(めい)るだけだわ」

「えーっ、別にそんなことないと思うけどなーっ」


 ジーナはこちらを一瞥(いちべつ)しては微笑(びしょう)を浮かべた後、再び進路へと向き直る。

 それが意味するところは特にこれと言って考えるまでもなく。


「マリアは?」

「私はどうであれ()すべきことに変わりはありませんが……」

「ぶーっ、何でそこでマリアを挟むかなーっ」

「現状を正しく把握(はあく)することで見えてくることもあるかと」

「なるほど」

「整理ねっ」

「整理しよう」

「分かりました」

「むーっ」


 見ればジーナが足をばたつかせている。

 マリアに目を向けてはどうするべきかその視線で問いかけてみるも、そもそも言葉無くしてそれほど複雑なことは伝えられない。

 自然と次なる行き場を求めてはアイギスへと目を落とす。

 どこかと言えば決して柔らかくはないこちらの(ひざ)の上で、そのようなことなど全く意に(かい)することなく気持ちよさそうに寝息を立てている。


「ジーナ」

「ふーんだっ。リンはマリアとお話ししたいんでしょっ?」

「ジーナ」

「むーっ、ダメだよっ。そんな風に言ったってぼくは――」

「ジーナ」

「なにっ?」

「もうちょっと(ねば)りなさいよ」

「サラスは分かってないなーもうっ。リンにはこのくらいがちょうどいいのっ」

「甘々ね」

「とけちゃうぞーっ」

「言ってるわよ」

「ジーナにとかされるならそれはそれで」

「いいのっ!?」

「良くないでしょ」

「リンさん、歯はよく(みが)いたほうがよろしいかと」

「気をつけるよ」

「気をつけちゃうのっ!?」

「歯は一生ものよ?」

「それは、そうだけどさっ……」


 ジーナから再び視線が投げかけられる。


「大事にしないとね」


 向けられた視線をそのままに。

 言葉にしては、ぱぁっと、ジーナの顔が晴れやかなものへと変わっていく。


「うんっ!」


 ジーナはやはり笑顔が一番だ。

 姿勢の正された背中は見るからに上機嫌そうで。

 先程と同じように足をばたつかせながらも、その意味合いは全くの別物であることが(うかが)える。


「アンタもアンタね……」


 サラスのこちらを(とが)めるでもなく、ただ純粋な(あき)れからくる呟き。


「それほどでもない」

「褒めてないわよ」

「たまには褒めてくれ」

「もっと楽させなさい?」

「太るぞ」

「アンタは気にしないでしょ」

「なんだそれは」

「現状の話、するんじゃなかったの?」

「冒険者の身分がなくなったな」

「それだけじゃないでしょ?」

「ここの領地を出るまで組合が使えない」

「まだまだあるでしょ」

「つまり仕事の斡旋(あっせん)が受けられない」

「別に探せばあるだろうし、アンタなら困らないでしょ」

「当分は節約生活だけどな」

「馬車馬のように働きなさい?」

「ヒヒーン」

「その調子よ」

「ヒヒーン」

「その調子その調子」

「ヒヒ――……もうやめてもいいか」

「あら、残念ね」

「退屈は人を馬にする」

「エルフは何になるのかしらね?」

「知らんが……そろそろ触れても良いか」

「アンタは甘やかしすぎよ」

「そうか……」


 ジーナに目を向けては、サラスとの会話の途中から何故か不穏(ふおん)な空気を(かも)し出すに至ったその原因を考えてみる。


「そうよ」

「そうなのか……」

「甘やかすなら私にしときなさい?」

「老けるぞ」

「なにそれ」

「甘いものを取り過ぎると老けるらしい」

「ちょうどつり合いが取れていいんじゃない?」

「なんだそれは」

「リンさん」

「ん?」

「それです」

「…………サラス」


 マリアからの言葉に全てを理解する。


「何?」

「いや……どうなんだろうな」


 自分の思い過ごしかもしれない。


「ふふっ、アンタは考え過ぎなのよ」

「サラスさんはもう少し考えた方がよろしいかと」

「あら、マリアはジーナの味方かしら?」

「強いていうなら私はリンさんの味方です……あ」

「ふふっ」

「すみません、今のは失言でした」

「別に……いいんだよ? サラスもマリアもリンの仲間なんだし」

「ジーナさんもです」

「この際だからはっきりさせちゃわない?」

「何を、ですか」

「お互いどう思ってるか」

「少々悪趣味な気もしますが」

「じゃあまずは私から」


 サラスは体を起き上がらせては一拍(いっぱく)置く。

 それからジーナに目を向けては一切の躊躇(ちゅうちょ)なく語り出した。



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