87、オセロ
「…………で? 結局アンタもやることはやってたってわけね?」
組合に子供たちを連れて帰って来ては開口一番。
サラスはこちらを見据えながら、あーやだやだともっともらしく態度へと表す。
「サラスっ、子供の前でそんなっ」
「アンタも大して変わらないでしょ」
「ぼくはぴちぴちなだけっ」
「何言ってんのよ」
サラスが自分で始めておきながら面倒になったのか。
後はご自由にどうぞとこちらに視線でもって投げかけてくる。
「それで、どうされるのですか?」
そんな雑なやり取りをこちらが処理するまでもなく。
マリアが拾い上げては元の路線へと乗せ直してくれる。
「一応は然るべき場所に預けられるよう組合経由で手配はしてるんだけど」
「時間が掛かるのですね?」
「うん。三日か四日か。そのくらいはかかりそうだね」
「これからの予定をお聞きしても?」
「特に決めてはないけど、自由行動かな? 昨日の今日で出来れば安静にしていて貰いたいけど……その辺は個々の判断で良いんじゃないかな」
「外出の際はどうしますか?」
「うーん……どうだろう。街の治安は良い方だと思うけど。ちょっとやりすぎた感じはあるかな」
「私かリンさんが同行するということでよさそうですね」
「大丈夫?」
「万全とは言えませんがそれなりではあります」
「今日明日は自分が引き受けるよ」
「では明日に備えて今日は休養を取らせていただきます」
「分かった」
明日もそのつもりだったが、マリアがそういうのであればこちらとしてもそれ以上言うことはない。
「ぼくも今日はリンとゆっくりしよっかなっ」
ジーナはいいよねっと。
こちらに片目を瞑っては目配せしてくる。
「うん。いいよ」
特に断る理由もないので肯定する。
ただし、子供たちも一緒にという、いささか賑やかなものにはなりそうではあるのだが。
「私は外出するわよ?」
纏まりかけた意見に真っ向から風穴を開けるのはそう。
他でもないサラスだ。
「すぐか?」
「サラスーっ、今日ぐらいは安静にしてた方が良いと思うよっ?」
「別に体調なんていつもこんなもんでしょ」
「急ぎなのっ?」
「リンと買い物に行ったんだけど色々あって荷物を預けて来てるのよ」
「えぇーっ!」
その声に反応してか。
ベッド上に固まって座る、子供たちの肩が小さく跳ねる。
「別にアンタの分も買ってあるんだから問題ないでしょ?」
「そうじゃなくてーっ! もーっ、リンもリンだよーっ?」
「明日皆で行こうか」
「さんせーいっ!」
ジーナの頭上でその両手が嬉しそうに賛同を示す。
「別にいいけど、今日もいくのよ?」
「ん? うん」
「買い物もするのよ?」
「ん? まだ買うのか」
「まだまだ買うわよ?」
「言い忘れてたけど、冒険者の資格が近いうちにはく奪されると思う」
「それはご愁傷様、って。あいつらを逃がしたんだから当たり前でしょ」
「自分だけで済めばいいんだが、たぶんそれだけじゃ済まない」
「連帯責任? 今時流行らないってのによくやるわねー」
「組合が使えなくなる」
「ふーん」
「余裕そうだな」
「別に? 私はアンタがいるし問題ないでしょ」
「むーっ、その言い方ちょっと嫌かもっ」
「アンタもよ?」
「うんうんっ」
「移動されるのですか?」
「そう思ってるけど……どうだろう」
ジーナからマリア。
サラスにアイギスと一様に見回しては意見を求める。
「ぼくはリンについていくよっ?」
「私も変わりありません」
「別に? いいんじゃない?」
「……」
アイギスは興味ないのか。
受付の女性に頂いたという甘味を口いっぱいに頬張っている。
「決定だね」
「決定ですね」
「うんっ」
「それで? 買い物と何か関係があるっての?」
「南下すると思うからその辺も加味してくれ」
「あぁそんなこと?」
「明日は明日で行くってこともな」
「分かってるってばっ」
「なら良いんだが……」
サラスは豪快にも全部任せないさいと笑っている。
だがそれは、その場しのぎの方便に過ぎず――店について早々発せられた、ここからここまでという魔法の言葉によって何とも簡単に覆されることとなった。




