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盾1回復4の盾ですがなにか?  作者: なんちゃコフ
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77、しぐれ虹

「リン、なんかちょっと強引っ」


 ジーナがこちらを(のぞ)き込みながらこちらのやり方について指摘する。


「私は別に何もありませんが」


 マリアはそこで一度区切りをつける。

 ただし視線はこちらへと意味ありげに向けられていて、つまるところがその先を促せと仰られている。


「が?」

「何か言いたい事はありますか?」


 それはまるでこちらが詰問(きつもん)されているかのような。

 表情こそ穏やかだが、その奥底から感じられる迫力と言ったら凄まじい。


「リンっ? 今はぼくとお話してるんだよっ?」


 腕を取られて振り向けば、頬を膨らませもっともなことを主張するジーナ。


「リンさん。何もないわけありませんよね?」


 袖を引いては胸元の十字架に触れて見せるマリア。


「リンっ?」

「リンさん?」

「リンっ?」

「リンさん?」

「リンっ?」

「リンさん?」

「はいはい。そこまでにしときなさい?」


 頭上からサラスの声。

 両手をこちらの肩へと乗せては仲裁(ちゅうさい)を買って出てくれる。


「むーっ、サラスは関係ないでしょーっ?」

「リンが困ってるじゃない」

「……やっぱり。何かあったんだ」

「あんまりしつこいからね。サラスってのは子供の頃の名前だってことを教えてあげたのよ」

「ふーん?」

「それだけよ?」

「うそだよね?」

「今の名前を知りたいか聞いたら断られたけど。それも入れた方がよかった?」

「……この際だから聞くけどさっ。リンってサラスのことどう思ってるの?」

「サラス」

「そういうと思ったっ」

「リンさん。私の事はどうお思いですか?」

「マリア」

「いっそのこと清々(すがすが)しいですね。むしろ好印象です」

「ま、まま、マリアっ!?」

「アイギスがアンタから影響を受けてるのかアンタがアイギスから影響を受けてるのか、まっ、似たり寄ったりね」


 サラスはこちらの肩を揉む。

 何故だかは分からない。


「おっ、結構こってるわねーっ」

「い、いまの流すんだ……」

「そんなにこってるか?」

「今はそういうことにしときなさい?」

「よく分からんな」

「ふふっ、正直なのは嫌いじゃないわよ?」

「ちょ、ちょっと! サラスもマリアもリンと親しくし過ぎじゃないかなっ!?」

「何言ってんのよっ」

「ふふっ、確かにそうですね」

「えっ? えっ?」

「またそんな分からない振りなんてしてーっ。欲しがりねーっ?」

「もーっ! サラスーっ!?」


 ジーナは頬を膨らませる。

 そこからはこれまで分かりやすく漂わせていた不機嫌さというものが一切感じられない。


「リンーっ」


 その声はアイギス。

 もはや聞きなれたそれは、こちらに対して何かを要求しているものだと何となく推測できる。


「起こしちゃったか?」

「ううん」


 言いながらもこちらの正面へと回り込んでは、膝の上にぽすっとその体を収める。

 そして何を言うでもなく、当然のようにその瞼を閉じては再び眠りへとつく。


「サラス」

「はいはい」


 名前を呼んだだけだというのにも関わらずサラスは早々にこちらから離れて行く。

 どうやら説明するまでも無くその意図を理解したようだ。


「……なんかさっ。こういうの見せられちゃうと、一生勝てないんじゃないかって、思っちゃうよね」

「はいっ、毛布」


 サラスがバサッと広げては優しくアイギスを覆う。


「助かる」

「いいわよ一々礼なんて」

「そうか」

「リンさん」

「ん?」

「リンさんとアイギスさんは、その、どういったご関係で?」

「……難しいな」


 マリアに問われて初めて考えたがまるでそれに近しい言葉というものが出てこない。

 そもそもアイギスと出会ったのはつい最近と言えばそうであるし、何か知っているのかと言われればほとんど知らないと答えるだろう。

 それにアイギスはもともと自ら率先して話をするような感じでもない。

 もっといえば意思の疎通すら怪しかったぐらいだ。

 最初の頃を思えば今は随分と……随分と。

 随分と何だろう。

 元気?

 活発?

 まぁ何にせよ関係性を表すならば一つだけ言えることがある。


「命の恩人……かな?」

「なるほど。命の恩人ですか」

「うん」


 それは幾度と無く救ってきてくれたアイギスからすれば他愛のないことかもしれないが、同時に揺るぎない事実でもある。

 自身がこの場にこうして生きていることがその何よりの証拠だ。


「命の恩人かぁ……」


 ジーナが誰に言うでもなく呟く。


「命の恩人って言うと私達からしたらアンタのことなのにね」

「命の恩人の命の恩人ですか。中々興味深いですね」

「そう?」

「はい」

「って、話してはくれないのね」

「世界は意外と綱渡りだということです。それとどうやら時間のようですね」


 マリアは身構えるように立ち上がってはこちらの後ろ、サラスの横へとその位置を変える。


「リンっ、最後に一つだけ聞いてもいい?」


 話がまとまったのか、向かいから指揮官とその集団が近づいてきている。

 しかし、当初とは違いそれほど差し迫った状況というわけでもなく、首を縦に振っては正面に視線を残したままの体勢でジーナの問いかけに耳を傾ける。


「この先、きっとリンは人を殺すと思う。それはたぶんぼくらのため。でも、今じゃないよね?」


 不意に――そう不意にジーナの表情を窺ってしまった。

 そうして交差するジーナの視線はこちらをただ真っすぐに見つめている。

 それに……一度口から出かけた言葉をそうじゃないと飲み込んでは、いつも通りの即答をさけるようにして一呼吸。


「うん」


 閉じた口を再びそっと開いてはそれから心配ないとジーナの頭に優しく触れる。


「そっかっ」

 

 ジーナは安心したように笑う。

 笑ってくれる。


 ――きっと、か。


 目の前の笑顔を裏切らないためにも自身はもっと強くならなければならない。

 そして願わくばその笑顔が満開の花を咲かせてくれるように――差し詰め今回の相手はそうすることの出来なかった者たちで決定したようだ。



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