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盾1回復4の盾ですがなにか?  作者: なんちゃコフ
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54、ふとした甘さ

「アイギス」

「なに?」

「ふと思ったんだけど」

「うん」

「ここにたどり着く以前にその辺のゴブリン相手に――っと」


 こちらの浮かんだ疑問をかき消すように地鳴(じな)り。

 ほぼ同時と言っていい、微弱ながらにも足元を揺らす衝撃(しょうげき)

 反響(はんきょう)しているがためにその方向は確定しきれないが、何となくでいいのなら右だ。

 そしてそれを引き起こしているものには心当たりがある。


「アイギス、一つだけ」

「うん」


 終着点へと向かっていた足を未知の領域(りょういき)に。


「サラスたちは元気だと思う?」

「知らない」


 それはむしろ至極当然の回答。

 答えられると思って質問しているこちら側がどうかしているのだ。

 しかし、アイギスならばとそうこちらに思わせてしまうのがアイギスがアイギスたる所以であるともいえ。

 

「そっか。なら少しばかり急ぐとしよう」

「うん。でも大丈夫だよ?」


 先程と言っていることが噛み合っていない気もするが、それはそれでこれはこれで。

 つまるところ、知りはしないが、その生命に今のところ問題はないということで良いのだろうか。

 聞き返したいところだが、足は(すで)に薄暗くも開かれた空間へと()み入れてしまっている。

 そしてその先に佇むのは見た事のある巨体であるからにして。


「少し揺れるよ」

「うん」


 戦闘を前に。

 それだけの短いやり取りを交わす。


「グベべべべべべべべべべ!」


 巨体が奇妙な鳴き声と共に、ゆっくりとした足取りでもってしかし確実にこちらとの距離を詰めてくる。

 前回と同じように棍棒(こんぼう)を無力化してからでも遅くはないが、今回、わざわざその過程を踏む必要もないわけで。

 相手に合わせるようにこちらも前進を開始する。

 一歩、二歩。

 踏み出すたびに確実な死という感覚が身近なものとして。

 しかし、何も思う事は無い。

 目の前の者と同様に足を上げては、これまた同様に地面へとその足を下ろす。

 それをお互いに淡々と繰り返していくことで言葉は通じずともお互いの意思をすり合わせていく。


「グベベべべ」


 面白いとでもいうかのように口元を引き上げる巨体。

 こちらとしては正直反応に困るものでしかないのだが、まぁ、歓迎(かんげい)する事にした。

 油断してくれるというのであればそれはとても良い事だ。

 しばらくして棍棒の射程へと入り込む。

 だが、案の定と言ってよいのか。

 それが振るわれることはない。

 ならばと更に歩を進める。

 そして、こちらが手を伸ばせば届くという地点に至って尚、目の前のオークはニヤニヤとまるで挑発でもするかのように最初の一撃を待っている。


「どうも」


 言葉にしたところで伝わるとも思えないが、そう口にした。

 スコップを後ろへと引き(しぼ)り。

 ――突き刺す。

 しかし相手の態度が指し示すように効果は薄い。

 精々がその先端からして少しばかり肉の下へと埋没して見えなくなった程度だ。


「ぐべべべべべべべ!」


 笑う。

 それは嘲笑(ちょうしょう)

 同時に標的を得た棍棒が振りかぶられる。

 させない。

 その場で一回転。

 スコップに蹴りをお見舞いする。

 貫通――。

 腹に穴があく。

 当然、力無く振るわれた棍棒は途中からその手を離れ、明後日の方向へと飛んで行った。


「さて、これで(いく)らか楽になったかな」


 崩れ落ちるオークの体を避けては、その奥に赤い液体を付着させた状態で転がるスコップを拾い上げる。

 あとは数こそ多いが残るのはゴブリンだけと言っていいだろう。

 オークに背を向ける。

 (とむら)いこそしてはやれないが、確かな手応えと共に決して忘れる事はないだろう。


「リン」

「ん?」

「かなしい?」

「むなしくはあるかもね」

「殺しはいけないこと?」

「良い事ではないと思うよ」

「やりたくない?」

「どうだろう。やりたくないならやってないかな」

「すき?」

「得意ではあるんだろうね」

「だれかのため?」

「それは理由にならないよ」

「じぶんのため?」

「うーん……」

「わたしがいったから?」

「それは違う」

「なんで?」

「したいからしてるだけだよ」

「でも、そうするようにいったよ?」

「アイギス」

「……?」

「殺しは正当化できるものじゃない」

「でも――」

「いいんだ」

「……よしよし」


 アイギスは手を伸ばしては()でる。

 こちらの頭を。


「ありがとう」

「ううん」


 アイギスは手を止めることなく応える。

 それから、目的地へと辿(たど)り着くまでその手が頭から離れることはなかった。



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