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盾1回復4の盾ですがなにか?  作者: なんちゃコフ
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4、歩調あわせ

「ちょっと! いきなりそんな道を逸れて大丈夫なわけ?」


 サラスに肩を掴まれ押しとどめられる。


「いや……このままだと野営する事になりかねんと思ってな」


 天を指差して力説する。


「野営はダメよ! でもそれ以上に危険はダメよ!」

「しかしだな……」


 思い返して見れば、モンスターの出現すると言われる森林へとついたのが既に昼過ぎ。

 それから適度な休憩を挟みつつももう既に――太陽の位置からして――三時間は経過している。

 このままある程度整備された道をそのまま進んでいてもモンスターに遭遇出来るかは不明。

 更には自分達よりも先に出立したと思われる者達が既にあらかた片付けている可能性も否定できない。

 ただ、幸いなのは未だその先行した者達に一度も遭遇していないということだけだ。


「ならさっ! 一度入口まで戻ってそこで明日を待つのはどう?」


 ジーナが青い髪を日光にて煌びやかさせながら最後方から近づいて来ていう。


「……それは、アンタ次第ね」


 サラスがこちらを一瞥してはいう。


「アンタが寝ずに見張り番をするっていうんなら別に止めないわ」

「別にそこまでの問題はないが、万全を期すならそれから午前中の間ぐらいは睡眠を取りたいな」

「うー、僕はそんなつもりで言ったんじゃないんだけどなー。それに、ご飯や水もそこまでもたないと思うよー?」


 考えるまでもなく至極当然の意見。

 支給された食料と水、特に水が少ないのが気になる。


「水ならどうにかなるわ。そういうのなんとなく分かるから」

「えー、じゃあご飯はー?」

「どうにかするよ」

「えー、じゃあお風呂はー?」

「……初めからそう言いなさいよ。付き合って損したわ」

「お風呂は我慢、かな」

「えぇーーーー」


 目に見える落胆。

 しかし、これ以上の探索は得るものもあるかもしれないが反して危険が増大する。

 ここらが引き時だろう。

 そうと決まれば――


「あはっ、あはははははははははは!」


 突然の狂気的な笑い声。

 しかし、その方向に目をやるとまるで似つかわしくないとは言えず、両手を広げてくるくると回るマリアは妙に様になっている。


「ちょっと、急に何よ。びっくりするじゃない」

「マリアちゃん、どうかしたのー?」

「生者が死者に成り代わるとき、何が起こるか知っていますか?」


 ぎゅんっと(くう)を彷徨っていた視線がこちらへと向けられ、問われる。

 だが、こちらの答えを聞くまでも無くその続きが食い気味に投下される。


「――神を、見るんです!」


 成程と思い、横の二人を見るとその迫力というより意気込みに圧倒されたのか、ただただ困惑しているよう。


「それで?」


 自身はと言うと言葉を失っている二人に変わって、と言う部分もあるが、単純にその先が気になり続きを促す。


「それが、神の御意志と言うのなら」


 そう言い残すとこちらへと背を向け、森の中へと軽快な足取りをもとに駆けて行った。


「……って! 見送ってどうするのよ!」

「あははっ、すっごいねーかのじょー」

「笑ってる場合じゃないでしょ! さっさと追いかけるわよっ!」


 緊急を要する事態に慌てながらももっともなことを言うサラス。

 それに反対する意見もなく走り出そうとして――アイギスがついてきていないことに気が付く。


「ちょっ、アイギス! 何やってんのよ! そんなところに突っ立ってちゃ危ないから貴女も一緒に行くのよ!」


 森へと踏み込んだ足を戻してサラスが近寄ると、言い聞かせる様にアイギスの肩を持って声を張る。


「ほら! 荷物は私が持ってあげるから!」


 アイギスの背中に負われた荷物を手早く取り上げては急かす。


「ちょ、ちょっと、アイギス!? 聞いてるの!?」


 微動だにしないアイギス。


「このままじゃマリアを見失っちゃうわよ!?」

「ははー、それならご心配なくー。もう既に見失っちゃってるからー」

「余計不味いじゃないのよ!」


 ジーナの軽口、しかし真実にサラスの絶叫が木霊する。


「まぁ、アイギスはアイギスだからな」


 動こうとしないアイギスに近づいて行く。


「そんなこと言ったってこれからどうすんのよ!?」

「大丈夫、大丈夫」

「またそんな何の保証もない――」

「アイギス」


 落ち着きそうにないサラスは一度置いておいて、アイギスに目線を合わせる。

 と言っても、アイギスはどこを見ているのかすら怪しいので無理矢理、眼前に割って入っているわけだが。


「ごめん」


 言って――肩に乗せると高さ的にもバランス的にも危ないので――腕に乗せる。


「ちょ――アンタ!」

「いこう。今ならまだ間に合う」

「そ、それは、どうかしらないけど」

「えー、いいなー、ぼくもぼくもー」


 ジーナが両手を前に走り寄ってくる。


「ジーナには悪いけど荷物を頼めるかい?」


 それを空いた片手で荷物を差し出すことに因って制止する。


「ぶー、ま、でもたまには頼られるのも悪くない、かなっ」

「ありがとう」


 言葉のわりに渋々と言う感じは微塵も見せずひょいっと受け取ってくれる。


「それじゃあ行こうか」


 サラスとジーナ、両者に準備はいいかと目線も同時に送る。


「しょうがないわね……」

「ごーごー!」


 そうして再び森へと足を踏み入れた。




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