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盾1回復4の盾ですがなにか?  作者: なんちゃコフ
39/157

39、優先順位

「まッ――待ってくれ! 俺たちは敵じゃない!」


 組み伏せた男がうつ伏せの状態で喋る。


「そんなことよりアンタら息ぴったりね。びっくりしたじゃない」


 サラスが呆れる様にそれと同時に何かするなら先に言いなさいよと咎めるように目線で訴えかける。


「リンは割とそういうところあるよねーっ」


 ジーナからもサラスに対する賛同の声が上がる。


「それよりも今はこの者達の処遇について話すべきだと思います」


 マリアが組み伏せた女をどこから出してきたのか縄で身動きできないように拘束している。


「だから待てって! 俺たちは冒険者だ! 組合から依頼されて調査に来ただけだ!」


 男は言う。

 しかしそれをそのまま鵜呑みにするほどこちらがこうするに至った理由は安くない。


「なら何故付け回すような真似をしていた?」


 考えそのままに率直に聞く。

 勿論身動きなど出来ないようにしっかりと押さえつけた上で。


「お、俺は止めようって言ったんだ! けど……その、仲間がそうしようって!」


 仲間、この場合に指し示されているのは女のほうのことであろうが、何も二人という数に限られた話ではない。

 他に居る可能性も考慮した上で更に追及する。


「理由は」

「だからっ! 俺たちは街の様子を見に来たんだって! けど、街に近づくのはかなり難しそうだから方法を探してたんだ! そこにお前達が来て! 丁度いいからって……分かるだろ!?」


 男の話す理由には一応は筋が通っている。

 考えるまでも無くそれが真実であればの話だが。

 では、と。

 アプローチを変えてみることにする。


「組合からは何と言われて来た?」

「魔族に侵攻された街があるから見てこいってそれだけだ! 戦えとも倒せとも救えとも何とも言われていない!」

「何を見てこいと?」

「状況だ! 街がどの程度原型をとどめているかとか、戦力はどの程度かとか、魔族と人とそれ以外の比率だとかだ!」

「比率?」

「あぁ! 大体同じぐらいの比率だって聞いて来てる! それがどう変動しているかを確かめに来たんだ!」

「数ではなくてか?」

「数は知らない! それにそんなの調べようと思ったら中に入るしかないだろ!」

「では何故中に入ろうとしているこちらについてきた?」

「えぇッ!? お前ら中に入ろうとしてるのか!?」

「あぁ」

「やめとけ! さっきも言っただろ! 魔族がいるんだぞ! 殺されちまう!」

「これだけうるさくしといて誰も来やしないんだ。平和主義なんじゃないのか?」

「冗談はよせ! それと……済まなかった。うるさくして……」


 それでようやく静かになる。

 ただ、こちらの手を緩めるようなことはしない。


「リンさん。こちらの方も拘束しましょう」


 マリアが手に縄を持って反対する気にもならないような魅力的なことを言う。


「そうしよう」


 それからグルグルと体、手、足とその自由を奪っていく。


「頼む……そっちの仲間にだけは手を出さないでくれ。後生だ」

「例えば?」

「リン、やめなさい」

「……そうか」


 言葉の真偽を確かめるには相手の急所を突くのは悪い手ではない。

 それが演技だとしても。


「ぼくに任せてよっ」


 ジーナがこちらに近づいて来ては腕を取って言う。

 そして、捕らえた二人を目の前に並べてはジーナによる尋問、というような堅いものではなく、ただの質問のような優しい時間が始まる。


「ぼくが聞いてた限り、組合に頼まれて街に来たのは本当だと思うかなっ。でもその前の尾行についてはちょっと思うところがあるかなーっ?」

「私たちは――」

「よせッ! おれたちは嘘はついていない!」

「嘘じゃないけど本当でもないでしょーっ?」

「……話せない」

「うーん、そっかーっ。なら仕方ないねっ」

「いっ、いいのか!?」

「良くないけど話せないんでしょっ?」

「こちらにも事情があるんだ。察してくれてありがとう。感謝するよ」

「感謝はしてくれていいんだけどーっ、こっちとしてはーっ、それを行動で示してほしいかなーって」

「……話せない。済まない」

「だよねーっ。じゃあさっ、逆に何か聞きたい事あるっ?」

「……何故街に向かっている?」

「それはそっちと理由はほとんど同じだよっ?」

「調査か……それなら答えられる範囲であれば答えよう」

「だってさっ?」


 ジーナが男から目線を外してはこちら側へと顔を向ける。


「なら知ってること全部話しなさいよ」


 サラスが当然の如く全てを要求する。


「……俺たちが知ってるのはこの街が魔族に支配されてるってこと、それだけだ。ただ、組合からの依頼だが、その上がいるのは確かだと思う。何が知りたいのかは……多分魔族の統治だとか運営だとかそういうのだろうと俺は推測してる」

「気持ちの悪い話ねぇー」


 サラスがそれを聞いて不快感を滲ませる。


「んー、嘘はついてないかなーっ」

「組合は、ひいてはお前の言う上は、それを知ってどうするつもりだ?」

「そんなの分かる訳ないだろ……ただ利用するってなら……何だ。将来的にそうなることを見据えているのかもな」


 男は不吉な事を真顔で言う。

 そこには曇りと同時に焦りすら感じられる。


「ジーナ」

「嘘のほうが良かったかもねっ」

「サラス、男の話のどの辺りが不快なんだ?」

「何よ、そんなの知ってどうするわけ?」

「いや、単純に別視点からの意見が欲しい」

「そんなの自らの同朋を敵に差し出して実験してるみたいなもんでしょ? 人間はエルフと違って仲間意識というか、同族意識が薄いのかもしれないけど。まぁ、数も多いから当然と言えば当然かもね」

「成程な。マリアはどう思う?」

「あり得る話かと。やり方こそ非難されてもその実、真実であれば今出来る最善の策と成り得る可能性も否定できません」

「どうしたい?」

「介入は避けるべきかもしれません。しかし、それもこちらだけで判断してよいものとは到底思えません。やはり話は一度聞くべきかと考えます」

「うん。サラスやジーナはどう思う?」

「私はむしろ危険度が上がってると感じてるからね」

「同意できるな」

「でも反対って訳でもないわよ。組合が嫌いだってものあるけど、正直やり方が気に食わないわね」

「んーっ、それならぼくは逆に、この先を見据えるなら正しいとまでは言わないけれど、このままそっとしておくのも思いやりかなーって思うよっ?」

「うん。なら、最後にアイギスはどう思う?」


 反応が返ってくるかはさておいて、自分の中ではここでアイギスに聞かないという選択肢はない。


「……ごはん」


 アイギスが発したのはそれだけの短い言葉。

 しかし、そこには確かに自分の意思というものがしっかりと込められている。


「なるほどね。何となくだけど、介入するのは余りよろしくない。けど、寄るだけなら問題なさそうに感じる。総括して方針に変更は必要ないと自分は思う」

「まぁ、いいんじゃない?」

「ごはんごはんっ」

「アイギスさんのためにも私たちのためにもそれが正道であると信じます」

「よし、決まりだね」


 長らく話したが、何の事はない。

 多少の情報を得たが、たちまち自身()に影響を及ぼすということもなさそうなので、参考程度に頭へとしまい込む。


「それで、どうするのよ。こいつら」


 サラスがそれは良いとしてと二人のこれからを議題に上げる。


「サラスはどうしたい?」

「別に。邪魔するなら排除すれば?」

「待ってくれ。俺は良い。だが、彼女だけは解放してくれ。頼む」

「さっきからアンタ女にこだわり過ぎじゃない? 何? そういう関係?」

「違う。そうじゃない。……男として、仲間の女性を優先するのは当たり前だろう」

「怪しいわね。あ、もしかしてそういう関係になりたいけど、みたいな?」

「……これだけ素敵な女性も中々いないだろう。否定はしない。でもだからこそ本心だ。信じてくれ」

「信じるか信じないかなんてどうでもいいでしょ。そうしたいならそうなるように少しでも努力したら?」

「……何が目的だ」

「あら、偉そうね?」

「サラスっ」

「いいのよ。払ってくれるなら払ってもらいましょうよ」

「待てサラス。マリア的にはどうなんだ?」

「……」


 マリアは口を開こうとして言いよどむ。

 それだけで言いたい事は何となく分かった。


「解放しよう」


 こちらのその言葉に反対する者はいない。


「……ありがとうございます」


 静寂の最中(さなか)、マリアの声だけが、ただ、その後に続いた。



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