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盾1回復4の盾ですがなにか?  作者: なんちゃコフ
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3、先送り、誰に送るかどこに送るか

「それで? もう一度自己紹介から始めた方が良いかしら?」


 狭いながらも5人という人数には幾分か余裕のあるを空間を挟んでエルフが話を戻す。


「あぁ、自分の名前はリンという」

「まっ、当然よね、私はサラスよ」

「僕はジーナスっていうんだけどー、可愛くないからジーナって気軽に呼んでねー!」

「……マリアンヌ……親しみを込めて……マリアで……構いません……」

「…………」


 話の流れ上最後の一人である女性に自然と視線が集まるが微動だにするどころか反応が無い。


「彼女の名前はアイギスよ。カードで確認したから間違いないわ」


 沈黙の中、横からエルフがしびれを切らしたというよりも代弁するように言う。


「良い名前だな。さて、サラス、ジーナ、マリア、アイギス、これで間違いないだろうか」


 気になる単語が出たが全員の名前が出そろったので確認の意味も込めて一人一人に呼びかけて行く。

 こちらの声に反応するものしないもの様々だが、どうやら問題ないようだ。


「間違いなければ皆、これからどれほど迷惑をかけるかも分からないが、どうかよろしく」


 そうして最後に頭を下げる。


「こちらこそー!」


 ジーナがふわりと軽やかに飛ぶとこちらの腕へと絡み付いてくる。


「……人の趣味にどうこう言う気はないけど、私はエルフで貴方は人間だということだけは忘れないでね」

「あぁ、エルフが何なのかは知らないが、違うということだけは肝に銘じておくよ」

「そう」

「エ、エェー! エルフ知らないのー!?」

「知らなくていいわよ」


 至近距離での驚きを隠せないジーナに厳しい目線と共にサラスが横槍を入れる。

 対してジーナはきゃーこわいー! と絡み付いた腕を更に絡み付かせてくる。


「神は見つかりましたか?」

「いや」

「そうですか」


 突然だったが答えるとマリアは至極残念そうな顔をしてどこか遠くを見据える。

 アイギスはというと、ままだ。


「なぁ、ちょっといいか?」

「いいよいいよー!」

「カードってなんだ?」

「……」


 不自然な沈黙が一瞬にして場を支配する。

 聞いてはまずいことであったのかもしれない。


「は、ははー、そっかー、うーん。やっぱり気になっちゃうよねー、うん」

「……別に、隠す事でも無いでしょ。いずれ分かる事だし」

「まっ、それはそうなんだけどねー」

「任せるわ」

「えー、こういう時だけ僕にやらせるのー?」

「言いながら荷物を漁ってるじゃない」

「てへっ」


 そうして暫くごそごそと荷物の入った袋、それもジーナのものではなくこちらの袋を満足いくまで探った後、ほいっと何かを目の前に差し出してくる。


「これが、カードですっ!」


 どこか、何故か、誇らしげだが、ぱっと見何かの証明書のようだ。

 その表面には何やらツラツラと自身の名前やらが書きこまれている。


「へー、フルネームはリン・ディー・ローリングっていうんだー」

「ん? うん」

「ちなみは僕はヴァネッ――」

「職業は何て?」

「むーちょっとー! 僕の邪魔しないでよー!」

「盾、とだけ書いてあるな」

「僕の名前はヴァネッ――」

「よかった……! いえ、正確には全く現状良くはないのだけれど……」

「もー! もーもー!」

「ヴァネッサ、かな?」

「え――? やっぱり君僕の事――」

「不幸中の幸い、とでもいうべきかしら」

「もーー! だーかーらー! 君以外全員回復なんだよーー!」


 ……ん?


 隣でジーナが叫ぶ。


「僕ら四人後衛職で! 君一人が前衛職なのー! それに加えて僕らは後方からの支援が専門だったりする!」

「……つまり?」

「君はすごく大変! えっへん!」


 誇らしげに胸を張るジーナ。

 サラスに目を向けると両手を横に上げてその通りというポーズ。


「歯に衣着せなかったらね」


 ついでに真実であることを言葉で念押ししてくる。


「まぁ、そうだな。……寝る」


 どうにもならない問題は先送りするに限る。


「おー、どーぞ」


 こちらの言に、ジーナが少し距離を取り、膝上をパンパンとわざとらしく払う。

 視界の端に映るサラスはそれでいいの? という非難の籠った目を向けて来ているがそのどちらにも苦笑というに相応しい表情を作りここは納得してもらうことにする。


「ジーナ、ありがとう。でも、痺れると大変だからまた今度にするよ」

「大丈夫大丈夫! 痺れたら君が抱えて――」

「手が塞がるでしょ」

「うー、じゃー僕もねよーっと」


 的確な物言いのサラスから逃げる様にしてジーナが再びこちらへともたれこんでくる。


「ついたら君が起こしてねっ」


 そんなことを言いながら片目を閉じる。


「おやすみー」


 そうして残った片方の目も閉じられる。

 先程までの喧噪が嘘のようだ。

 サラスに目をやると顎に手をやり肘をついてこちらをじっと見据えている。

 そこからはこっちはまだ納得してないぞという明確な意思が見て取れる。


「まぁ、そう心配するな。いざとなったら盾として時間ぐらいは稼いでみせる」

「……それは――」

「ダメだよ」


 小さく、しかし確実に聞き取れたそれは先程までと同じ人物が発したとは思えないぐらいはっきりとしたものだった。

 ジーナに配慮しながらゆっくりと腕を組み、目を瞑る。

 そして、一呼吸。


「善処はするよ」

「うん」


 こちらを信じて疑わない。

 そんな優しさ。

 

「……寝る。ついたら起こしてくれ」


 目を閉じたまま、誰に言うでもなく言葉にする。


 それから少しして、大きなため息と分かったわよという言葉が続いた――




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