私が生まれ変わるなら
これはまだ……私が“生まれ変わる前”の話。
ある日の放課後、私……有川美佳と親友……山脇葉澄がたわいのない会話をしている時に遡る。
「ねぇ美佳は人生の二度目がおくれるとしたら何が良い?」
「うん……猫か人間だな。」
もし、生まれ変わるなら私は猫か人間になりたいと決めていた。猫なら長生き出来るし、人間なら一度目に出来なかったことをやることが出来るからだ。
何て、しょうもないことをかんがえていると葉澄は此方を見てにやにやと笑っていた。
「葉澄……ニヤツくな!コッチまでニヤケて来るじゃん!!」
「おやおや、これは失敬、失敬。」
葉澄曰く、
『私の考えていることが容易に思い浮かび、その上、考えているときの顔と考えていることを組み合わせると笑えてきて仕方がない。』だからニヤケるらしい。
私はただ「真面目に考えているだけなの!」と少し怒りながら言い返すと葉澄は何時も笑顔で
「美佳の考えている時の顔好きだから安心しな!」と私にとっては意味深な言葉を返してくれる。
「さて、早く帰らないと……私の愛しの亀ちゃんがおなかを空かせて待っている!!」
「葉澄…また、亀ちゃん?」
「うんっ!亀ちゃんは私が居ないと死んじゃうんだよ?!」
葉澄が言う亀ちゃんはミシシッピアカミミガメ。世に言われるミドリガメの事である。
当たり前だが亀の会話は帰宅中にも繰り広げられる。
「本当、亀好きだよね…葉澄は。」
「私だけみたいな言い方するなよ!………まぁ、でも、亀好きだよ。あの甲羅が何とも言えない…!」
と亀の話で盛り上がっていると
「あっ!危ない…!!!」
塗装工事の片付けをしていた業者がうっかり道具を滑らせ、10m上から私たちの所に落下してきた。落ちてくるスピードは速く、私達は知らないうちに道具の下敷きになった。