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どうやら私の身体は完全無敵のようですね  作者: ちゃつふさ
第2章 学園編 三年目
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あ、あれ?


 私は今、訓練場という名の運動場もどきにいる。

 今日は学園祭での私の仕事、警備関係の集まりの日であった。

私の後ろにはテュッテ、そして、私の補佐としてサフィナが控えている。そして、私の前には少し距離をあけてソルオスの生徒達がまるで軍隊のように整列していた。っで、その後ろにかたまって怯えているのがアレイオスの方々であった。

 何で怯えているかって? ソルオスの人たちがそれはもういちいち声を揃えて大きな声で返事するからその迫力に圧されてしまっているからだ。


(ここは軍隊じゃないのよ、まったく)


 ちなみに私達から少し離れた場所にはカーリス先輩と、この警備関係の担任であるイクス先生が傍観していた。今まではイクス先生主導の元、進められていたのだが今年は傍観に徹してしまっている。まぁ、問題が起きそうならば介入すると本人は言っていたが……。

 私は一つため息をはくと、立ち並ぶ皆を眺めてから話し始める。


「まずは、自己紹介から。私が今年の警備の担当責任者である、メアリィです。皆さん、よろしくお願いいたします」


「「「よろしくお願いしますッ!」」」


(だから、声が大きいっての……やる気に満ちているのは嬉しいんだけどね)


 私の挨拶に合わせて、ソルオスの人たちが声を合わせて挨拶を返す。その声量に圧されて、後ろのアレイオスの人たちが一歩下がる始末であった。

 ソルオスの皆はこんなテンションだったかしらと私は呆れながらサフィナを見ると、彼女も心なし後ろに下がっている感じがするので、どうやらいつもというわけではなく、今回だけ特別のようだ。


「警備訓練に関しては、あちらに控えているカーリス先輩の指導を受けてください。ソルオスの皆さんは今後の為の良い経験になると思うのでしっかりと励むように」


「「「はッ!!」」」


 声を上げ、姿勢を一斉に正す、もうこれ軍隊だわと思えるソルオスの皆様をため息半分で眺めつつ、完全にドン引き状態のアレイオスの人たちの方を見て、目があった皆さんに私はちょいちょいと手招きする。


「アレイオスの皆さんも近くに来てください。これから班を作りますので」


 私の手招きに顔を青くして、それでも怖ず怖ずとかたまって近づいてくる魔術師の卵達を私は気の毒そうに見つめてしまっていた。


「あの……メアリィ様。私達はそちらの人たちのように警備訓練なんてできませんけど」


 近づいてきた生徒の一人が恐縮しながらも訴えてくる。


(気持ちは分かるわ。こんなテンションマックスのガチ脳筋どもと対人訓練なんてしたら、ひょろい皆なんて一発KOだもんね)


「ええ、分かっています。肉体労働は彼らに任せて、あなた達には他の事をしてもらいますよ」


「他の事ですか」


「はい、それでは二人一組になってください。サフィナは、ソルオスの人達を三人一組に分けてね」


「はい、メアリィ様」


 宥めるように私は終始笑顔でアレイオスの生徒に答えると、サフィナに組分けをするように言う。すると、彼女は事前に組分けしておいた紙を眺めながら私の代わりにスムーズに分け始めた。

班が分けられると、私はアレイオスとソルオスの班を一つずつまとめていく。今までになかったのか、終始皆不思議そうな顔をしながら従っていた。そして、出来たのがソルオス三人とアレイオス二人の混合班である。


「メアリィ嬢、これはどういう意図があるんだい? 今まで見た事ない編成だけど、アレイオスの皆もまとめて訓練に参加させてもいいのかな」


 一部始終を見守っていたカーリス先輩が不思議そうな顔で近づいてきた。


「いえ、魔術師の皆さんは連絡係ですので警備訓練には参加しません」


「「「「連絡係?」」」」


 私の回答にカーリス先輩はもちろんの事、班を形成させた皆がこちらを見てきた。


「はい、アレイオスの皆さんは定時連絡、さらには問題が生じた場合、その障害にすぐ様対応するのではなく本部に連絡し、判断をあおぐ係りを務めてもらいます。また、事前に連絡できない状態だったとしても必ずどこかで連絡するようにしてもらいます」


「伝令として走り回るということかい?」


「いえ、そんな面倒なことはしません。伝達魔法を使うのです」


 私はつい先日、思い出した素敵便利な魔法をここでも応用しようと画策していたのだ。


「班にいる二人の魔術師の一人は班に同行し、もう一人は本部に待機してもらいます。これで、何かあった際、迅速に連絡を取り合うことが出来るのです。いわゆるトランシーバー的なものですよ」


「「「とらんしーばー?」」」


 私のうっかり発言に一斉に首を傾げる皆々様。

私はコホンと咳払いをして、今のはなかった事にする。


「メアリィ様! つまり、自分たちは独自に判断をするのではなく、アレイオスの人達の連絡によって、本部の判断に身を任せればいいということでありますか」


「そ、そうです」


 私は何だか上官と兵士のような会話に違和感を覚えつつ、笑顔で受け答える。この作戦は偏に脳筋のソルオスの人達が勝手な判断で行動させない為のものであった。というのも、カーリス先輩やイクス先生の話を聞き、前年までの問題の中に勝手な判断で暴走した警備の者が更なるトラブルを巻き起こすという問題が結構あったらしいのだ。


(うん、我ながらナイスアイデア!)


「あの、伝達魔法を使うという私達の役割は分かりましたが、その魔法効果はとても短く、長く会話できません。しかも魔力の消費が激しく、何回も使用できませんし、一方が話すともう片方は聞く事しかできませんので連絡や相談などといった随時の連絡手段として適していないと教わりましたが」


「そうですね。だから、あなた達には短時間で会話が成立するように訓練してもらいます」


 怖ず怖ずと質問するアレイオスの人に、私は笑顔で答える。皆、私の言わんとしていることが分からないといった顔だった。


「つまり、あらかじめ伝える案件を短い言葉に短縮し、伝えあうのです。そこら辺は訓練しながら、皆で専用言語として作っていきましょう。幸いにも私達は警備という決まった枠内でのみ行動していますので製作しやすいと思いますよ」


 私が補足すると何だか皆、キラキラした瞳でこちらを見てくるではないか。

 その目はあれだ、『尊敬』という名の憧れの目だ。今までやらかした時に散々見てきたので、何となく分かってしまう自分が悲しい。


(あ、あれ、こういうのって普通じゃないの? 日本じゃ、昔ポケベルとか決められた字数で連絡しあっていたっぽいんだけど。ここじゃ、そういった連絡の際の簡略方法がなかったのかしら)


 私はさも当然のように話してしまった自分に後悔し始めてしまっていた。こうして、皆が感心した眼差しのまま、私の警備責任者としての初日が終わった。


 そして、後日。

私が考えた連絡手段はあっという間に他の運営関係にまで採用され、何か私が革命を起こしたみたいな扱いになりそうになっているではないか。


(ち、違うのよ。これは、そう、王子が考えたことなのよ。そういう事にしておいて、お願い、神様ぁぁぁッ!)


 こうして、学園祭の準備が始まったばかりなのに、私は神様に祈る事態に陥るのであった。


【宣伝】現在書籍化に向けて作業中でございます。ネット小説大賞の公式サイトでも本作のイラストが紹介されておりますので興味のある方はぜひ。そちらのサイトを見ると書店様やアマゾン様でも予約が開始されているみたいです。いっぱい予約されると私が喜び庭駆け回るのでよろしくお願いいたします。

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