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どうやら私の身体は完全無敵のようですね  作者: ちゃつふさ
第2章 学園編 三年目
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王子企画でございます。

 学園祭プロジェクトが開始された。まずは、学園の全生徒を集められるホールへ皆を集合させると、王子の口からイベントの事が告げられる。さすがに前例のないことだった所為か、ざわつきが目立っていたが問題なく事が進んでいった。

 ソルオスの皆は武術大会を中心にしているため、それほど戸惑うこともなく意欲的だ。問題は、今まで不参加だったアレイオスとラライオスの生徒達だが、こちらはクラスマスターである王子とマギルカ、そして、グランドマスターの方々が地道に説明したおかげで何とか参加意欲が向上している。

 今、私はアレイオスの談話室にいた。もちろん、学園祭に参加するにあたっての相談である。


「それで、具体的にどういったことをすればよろしいのでしょうか?」


 皆の前に立つマギルカ……と、なぜかその横後ろに控える私。


(まぁ、言い出しっぺの私が具体的に案を出すのは当然か。でも、マギルカに呼ばれてこちらに立った私を、皆なぜ当たり前のように見ているのかしら? おかしいと思わないのかしら? う~ん、解せぬ)


「まずは、出し物をする人と、運営をする人で別れてもらいます。よく考え、自分ができそうな方を選んで下さいね」


 誰かの質問にマギルカが答えると、皆しばらく思い思いの人たちとしゃべり始めた。時折、運営とはどういったことをするのかとか、出し物にはどういったものがいいのかという質問に答えながら、雑談のようなものが続いていく。


「そんなに難しく考えなくてもいいのよ。出し物も自分達が今まで学んできた魔法を皆で披露するとか、魔法学、魔法薬学などの研究を皆で発表したりとか、そういった勉強してきたことの延長線だと思えばいいのよ」


 今までにないモノを発表しなくてはっとか、誰もがあっと驚く魔法を披露しなくてはっとか、あまりに小難しく考えていたので、私はもっと軽くていいんだよと具体的に案を出す。すると、事は一気に進んでいった。


(ふぅ、危ない危ない。危うく、只の目玉焼きを作れば良いだけなのに、自分たちにしかできないオリジナルレシピで作って盛大に自爆する系に突き進んでいくところだったわ。他のクラスは大丈夫かしら?)


 私が危惧していたことは後日、申請書という名の形となって目の当たりするのであった。




「魔獣との集団戦を披露。誰が見ても凶悪なモンスターで勝てる訳ないのだが、何か上手い事して勝てるように取り計らって欲しい。って、そんな夢物語を語るんじゃありませんわァァァッ!」


 授業を終え、いつもの旧校舎の談話室、今は学園祭の執務室と化した部屋の中。怒りに任せて持っていた申請書をテーブルに叩きつけるマギルカをヤレヤレといった顔で溜め息混じりに眺める私がいた。

釘を刺したつもりだったが、どうやら自分の虚栄心を満たしたいお貴族様の見栄が露骨に出ている申請書が複数あって、マギルカの怒りが沸点に達したようである。これはアレイオスだけではなく、他のクラスでもあって、却下もしくは再提出を求める作業に振り分けられている。

 そんな中、申し訳なさそうに王子が私たちが座る席へと近づいてきた。


「理不尽な申請書に怒りをぶつけている中申し訳ないが、僕から一つ、夢物語をお願いしても良いかな」


 そう言って王子は私たちのいる空いた席につくと、ザッハとサフィナを呼び寄せた。マギルカが言った夢物語というフレーズをあえて王子が使ったことに彼女はばつの悪そうな顔で俯いている。そんなに無茶なお願いをしてくるのだろうか。全員が揃った中で王子が話し始めた。


「武術大会の事だけど決勝トーナメントが始まった時、キミ達にやって欲しい事があるんだ」


 一度王子は集まった私たちを見渡すため言葉を切った。なんとな~く嫌な予感がして私は思わず固唾を飲んでしまう。


「剣士と魔術師がタッグを組んで、二対二の模擬戦を披露して欲しい」


 王子の提案に私は一瞬、何を言っているのか分からず、ポカーンとした顔を見せてしまい、はたと気がついて俯き隠す。


「殿下、それはつまり『剣士と魔術師』対『剣士と魔術師』のタッグ戦ということでしょうか?」


 理解の早いマギルカが皆を代表して王子に問いかける。すると、彼は静かに頷いた。


「そう、アレイオスの生徒は攻撃魔法を学んでいる。だが、それを対人戦に用いることはこの学園にいる中ではないよね」


「お言葉ですが、殿下。魔法には威力に差異が無く、階級に絶対差がありますので模擬戦には不向きかと思いますが」


「でも、剣士が加わるとそうも言っていられないんじゃないのか?」


 王子の提案に意見をいれたマギルカにザッハがフォローをする。


「つまり殿下はアレイオスとソルオスの共闘戦を会場の皆様に見せたいと」


「うん、魔術と剣術、これは我が国の武力でもある。だから、その二つを組み合わせる可能性を共に学生の段階で体験して欲しいという気持ちがあるんだ。後の武術大会へ示唆させるために、キミらに皆の前で模擬戦を披露して欲しい。前例の無いことだけどね」


 王子が真剣に語るとそれにつられて皆も口を閉ざし、無言で何かを考え始める。私としてはあまり目立ちたくないので断りたいが王子の提案とあっては断れない。それにデモンストレーションなら別に負けてもいいのでそれほど深刻には考えていなかった。とはいえ、断れるならそれにこしたことはないが……。


「私たちアレイオスとソルオスとの共闘戦ですか……確かに、それは面白そうですね」


「何か、ワクワクしてきたな」


 なんだかやる気をみせてくるクラスマスター二人を見、そして、顔を青くしてどうしようかとこちらをすがるような目で見るサフィナが見えた。


「よぉし、そうと決まればさっそくチーム分けだな」


「ちょっと、まだ決まったわけじゃ」


 話を進めようとするザッハに思わず異を唱えてしまう私は、次の瞬間、しまったという顔で王子を見てしまった。


「メアリィ嬢は反対なのかな」


「い、いいい、いえ、滅相もございません。ただ私にそんな大役を任されて大丈夫なのかなと思いまして。もっと優れた方がいらっしゃるかもしれないと」


「白の姫君にして白銀の騎士様と呼ばれる方以上に優れた方がいるのなら私も知りたいところですわね」


「はうッ」


 ムフッと小悪魔的な笑顔を見せて横からちゃちゃを入れてくるマギルカに言葉を詰まらせる私。


「あっ、サフィナ。サフィナはどっ」


 苦し紛れに私はサフィナを巻き込もうと彼女を呼ぶと、彼女は皆の視線を一身に受けた所為か、半泣きで今にも気絶しそうな状態だった。


(あっ、ごめん。こんなプレッシャーの塊の中に放り投げるような事して)


「わ、私は……メアリィ様に、ついていきます」


 それだけ絞り出すように言葉を紡ぐと、彼女は下を向き結果を待つ。

そして、全視線は私に注がれることとなった。


「わかりました。参加させてもらいます」


 私は白旗を上げるようにがっくりとうなだれ、そう語る。


「決まりだな。それじゃあ、チーム分けだけど、公平なところで『俺、マギルカ、サフィナ』対『メアリィ様』で良いよな」


「おいこら、タッグ戦でしょ。何で私がぼっちなの」


 さも当たり前のようにチームを振り分けるザッハの不公平極まりない発言に私は思わずツッコミを入れてしまう。


「え~、これでもパワーバランス悪そうなんだけど。メアリィ様、魔法も剣技もできるだろ、一人で二役なんて楽勝じゃん」


「私はそんなに優秀じゃないわよ。とにかく、私はサフィナと組むからねッ、サフィナは渡さないわッ! あなたのようなおバカと組む気は一切無いわよッ」


「プッ、メアリィ様、前に言ってたよな。バカっていう方がバカだって、プププッ」


「うぉのれぇぇぇ……絶対あなたとは組まないわよッ! 当日は泣いて謝っても許さないからね。ボッコボコのギッタギタにしてあげるわッ」


 ザッハの発言に触発され、私は強引に自分の陣営にサフィナを引き入れると、我を忘れてフルボッコ宣言をしながら固まる彼女を抱き寄せてしまう。

子供の喧嘩のような間抜けなやりとりの一部始終をヤレヤレといった感じで眺めていたマギルカを王子がまぁまぁと宥めているのが見えるが、私はぼっちにならないようにサフィナを抱きしめ離さないようにするので精一杯だった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ボッコボコされまくりだけあって、ザッハってメアリィの実力をかなり正確に把握してるでしょうね。
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