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どうやら私の身体は完全無敵のようですね  作者: ちゃつふさ
第2章 学園編 二年目
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またも問題発生です


 幽霊遭遇から、数十分後、私達は校舎と旧校舎の間にあったオープンカフェに来ていた。

テーブルを囲むのは私、サフィナ、テュッテ、マギルカ、ザッハ、王子、そして、全員がある人物を見ている。


「どうも、挨拶が遅くなりました。私、アレイオスのクラスマスターを務めております、アリス・オルディルと申しますわ」


 目深に被っていたフードを取り、頭を下げるアリス先輩のそのストレートに伸びた綺麗な金髪がサラリと肩から流れるように垂れていく。柔和なその顔には丸い形をした銀縁の眼鏡がかけられており、そのレンズで光る青色の瞳が優しそうにこちらを見てきた。一見おっとりとした雰囲気の彼女だが、先の事件で単独で幽霊を退けて、クラスマスターまで務めているのだから、かなりの活動家なのだろう。そして、同性でありながらもついつい目がいってしまうのが、サイズが大きくダブダブのローブでも隠しきれない二つの大きな膨らみ。


(何なの…アレイオスの女は皆、たわわになるの?なれるのなら私だって)


 などと、釈然としないながらも自分の胸元を覗きつつ、私は話を戻した。


「えっと、初めまして、私は」


「あっ、自己紹介は大丈夫ですよ。皆様のことは把握しております。フフッ、皆様、何かと有名ですからね、そうでしょ?白の姫君」


 私が名乗ろうとした矢先に、アリス先輩は意味深な笑みを私に向けてきた。


「それにしても、幽霊が本当にいたのも驚きだが、まさか、それを退けることができるなんて、もっと驚きだったよ」


「その節は、殿下の前で差し出がましいことをいたしまして、誠に申し訳ありませんでした」


 感心したように王子が数十分前の出来事を思い起こし、アリス先輩は恐縮したように頭を下げてくる。


「いや、とても助かったよ。それにしてもあれは、神聖魔法なのかい?」


「いえ、殿下。あれは神聖魔法ではありません。魔法によってただ光をだしただけです。ですが、幽霊達は魔法で生み出した光を毛嫌う所があるので、退けるにはうってつけなのですよ」


 テーブルを挟んで、王子と向かい合っているアリス先輩は彼に簡単だが説明してくれ、私はそれを聞きながら、へ~と頷くばかりだった。


「つまり、あれだけでは退治していないと言うことですか」


「はい、残念ながら」


 話にマギルカも加わってくる。


「幽霊の一匹くらい、先生方で何とかならないのでしょうか?」


「残念なことに今の学園には神聖魔法を使える先生がお見えになってません」


 私も話に加わり、素朴な疑問を投げかけると、アリス先輩は驚くべき事実を言ってきた。


「え?そうなんですか、神聖魔法って使える人がこの世界では少数なんですか?」


「いえ、教会に属する者達がほとんどですが、その数は多くいますよ。ただ、昔、一度だけ教会から先生を派遣した所、何か学園内でトラブルがあって、その先生が巻き込まれた事件が起こってしまってからは教会も非協力的になってしまったとか。何分、20年以上も前の古い話なので真偽は定かではありませんが、それ以降教会から先生が派遣されなくなり、現在では神聖魔法を学ぶ機会がぐんと減ってしまいました。幸いなことに幽霊達はあの旧校舎から外には出てこないことが分かったので、今は私が定期的に見回り、誰かが興味本位で中に入ってこないか確かめておりますので、大きな事件には発展しておりません」


 皆の前で困ったような顔をするアリス先輩を私は直視できず、そっぽ向いてしまう。


(すみません、先輩。その興味本位で入った輩がここにいます)


 私は心の中で彼女に謝罪する。


「アリス先輩は幽霊に詳しいですよね?撃退方法もご存じですし、もしかして教会の…」


「いえ、私は教会と縁はありませんわ。幽霊というか、単にアンデッド系を専門にしていると言うだけで、皆より少し詳しいだけです」


(このおっとり先輩がアンデッド専門とは…それはそれで驚きだわ)


 私の質問に恐縮した顔で答えてくるアリス先輩にその容姿と雰囲気から勝手にモフモフ系の可愛い物好きと考えていた私はまたまた、心の中で彼女に謝罪する事になってしまった。


「それで、結局、幽霊の件はどうなるんですか?」


 今まで黙っていたザッハが不慣れな敬語を使ってアリス先輩に聞いてくると、彼女はそちらを見て、少し困った顔をする。


「グランドマスターからの指示は、現状維持となっております。おそらく学園側は教会との摩擦が生じない元教会の人間で神聖魔法を使える人間を捜していると思われますが、これが、中々見つかりそうもありませんので、まだまだ旧校舎は使用禁止が続くと思われます」


(神聖魔法か…ちょっと教えて貰えば私も使えるかもしれないわね。どこかに教えてくれる人いないかしら?まぁ、教えられる人がいるんなら、その人が出向けばいいだけよね)


 私は現在の問題をパパパと解決できる策を考えつくが、そう易々と行かないことにため息をついた。


(いや、ちょっと待って。私は4階級魔法を誰かに教えられて使ったわけじゃないじゃない。そうよ、白銀の騎士なら)


 そう思い至った私は、とりあえずこの場はそのまま話を聞き、アリス先輩と別れることとなった。最後に、あの旧校舎には近づかないようにと釘をさされてしまったが…


――――――――――


 アリス先輩と別れ、私達はトボトボと新校舎へと向かって歩いている。


「事件が解決しない限り、旧校舎の使用はできませんわね。私、学園長の所に行って、現状を把握してきますわ」


 マギルカは諦めないといった顔で、頭を起こし、これから時計塔へ行くと告げると皆に別れの挨拶をして、別行動をする。


「僕も行こう、事態を詳しく知りたい。それにアリス嬢の言っていた教会との事件もちょっと気になるかな」


 彼女の後に付いて、王子も別行動することとなった。残されたのは、私とテュッテ、ザッハとサフィナという、元やんちゃトリオ(?)だけになってしまった。


「どうします?メアリィ様?」


 二人を見送った所で、サフィナが困った顔で私をのぞき込んできた。


「そうね…ちょっと話が変わるけど、白銀の騎士様って神聖魔法を使えたのかしら」


 余りの話の飛びっぷりに皆の頭から?マークが飛び交っている。


「そうですね…白銀の騎士様は4階級魔法までのほとんどを行使できると言われていましたから、神聖魔法をいくつか使えたんじゃないですか?」


 唯一、私の意図が分かったテュッテが後ろから進言してくれた。


「そうなの。じゃあ、その話を読んでみたいわ。何か、ヒントみたいなのがあるかもしれないし」


 私はテュッテの方を見て、話をぼかしたまま強引に進めていくと、おいていかれた二人が益々困惑していく。


「そ、それじゃあ、図書室へ行きますか?あそこなら物語のいくつかは保管されていると思いますし」


 考えるのを諦めたのか、サフィナが釈然としない顔をしながらも、突飛した私の話に乗っかってくるので、ザッハも考えを放棄しうんうんと頷く。


「じゃあ、行きましょう、図書室へ」


(そして、こんな事件、パパパと解決して、あのナイスな空間でまったり生活をエンジョイするわよ)


 私は先頭に立ってテンション高めに歩き出す。


「お嬢様、図書室はそちらではありません」


「・・・」


 そして、申し訳なさそうに後ろから声をかけるテュッテの言葉に耳まで真っ赤になって踵を返すと、テュッテが差し出す手の方向に向かって早足に歩いていくのであった。


――――――――――


 後日。

私達は今、ヒソヒソと話をする皆の視線を一心に受けてアレイオスの談話室の一角の席に腰掛けていた。


(うわぁ…目立ってる、目立ってるわ。めっちゃ、目立ってる)


 私は内心落ち着かない状態で、皆と会話に臨もうとしていた。外野達が注目するのも無理はない。ソルオスの二人がここにいるのだって特殊だったのに、さらにラライオスのしかも王子までもがこの場にいるのだから、気にするなと言うのが無理な話だった。


(あぁ、早く他人の視線を気にせずまったりできる部屋が欲しい)


 一人、魂ここにあらず状態で、皆の報告会、というかマギルカ達の話が始まった。学園長から聞いた話によると、おおよそアリス先輩の話と同じで、現状、神聖魔法を使えるツテを探しているらしい。そして、王子が気になった、教会が非協力的になったいきさつの事件の詳細を聞いた所、学園長達先生は、その事件の詳細を把握していないとのことだった。どうやら、当時その先生と生徒の間で起こった事件らしい。


「それで、その教会から派遣された先生と事件を起こしたのが、当時、入学したての新入生、フェルディッド・レガリヤ…つまり、メアリィ嬢の父上ということだそうだ」


 王子の何とも言い辛そうなその言葉に、へ?といった顔をする私を、皆が様々な感情で見てきた。


(パパ…何をやらかしたのよ)


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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