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どうやら私の身体は完全無敵のようですね  作者: ちゃつふさ
第2章 学園編 二年目
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2年目です

ブックマークなどなどありがとうございます。

 学園に入学し、あれやこれやといろいろあったが、私は心機一転2年目に突入することとなった。

どうも、メアリィ・レガリヤ 11歳です。


 テュッテが差し出した新しい自前制服に袖を通す私。今日からはソルオスではなくアレイオスに所属するので、制服のデザインも変更することにし、私はブレザータイプから、セーラータイプにデザインを変えてみた。白いシャツの襟元をセーラー特有の三角襟にし、黒地に白いラインを縁取らせる。三角襟の先、胸元には大きくヒラヒラとチョウチョの形をしたリボンをつけ、真ん中にブローチを着けてアクセントを入れる。そんなシャツの上から黒色のコルセットタイプのフリルスカートを穿き、三角襟の裏にコルセットスカートに付いた肩紐を通して隠す。スカートもフリルを三層に折り重ね、一番下は白のレースで透けるような感じに膝まで伸びている。こちらもアクセントとして、コルセット部分の腰の後ろに大きく誇張したチョウチョ型の白リボンを垂らしている。さらに、スカートから見える両足を黒のストッキング、黒のブーツで統一し、今回は全体的に黒を多く使ったデザインにしてみた。最後に、襟がなく、裾の長さが胸下の所までという短めになった白地の上着を着ると、三角襟を外に出し、袖の部分と胸元に学園と所属しているクラスの記章が縫いつけられているか確認する。着替え終わると、私は姿見の前でクルックルッと体を捻って着心地と見た感じを確かめた。


「うん…サイズピッタリね」


「前の制服は小さくてもう着れなくなってしまいましたからね」


 私の満足そうな言葉に、次の作業に取りかかりながらテュッテが相づちを打ってくる。先にも述べたことがあるが、どうもこの世界の人間は私が思っているよりも成長が早く、服のサイズも日に日にアップしていって大変だった。皆にしてみれば何の違和感もないだろうが、私は日本人としての記憶が邪魔をして、私を含めて皆がランドセルを背負った中学生にしか見えず、何ともモヤッとした気分になった時もある。

 余談ではあるが、前に作ったブレザータイプの制服は母の薦めでレガリヤ公爵領の服飾店でのみ購入可能にしたところ、今年の新入生を抱える貴族の方々が「これを着ていた令嬢が成績優秀者となった」みたいな噂を聞きつけ、験をかつぐとか何とかで多く購入されているらしかった。クラスの記章は変更可能だとか、それぞれ店で微妙にアレンジ出来るようにしているとかなんとか、とにかく商売熱心なことである。

 私はそのまま鏡の前の椅子に座り、テュッテが髪をすいて、整えていく。耳周りの両サイドを綺麗に三つ編みで揃えると、後頭部へ持って行き、接点で銀細工の髪留めでとめ、後ろ髪を綺麗に整え背中へと流れるように広げていく。


「心機一転、新しい学園生活ですね、お嬢様」


「ええ、去年の反省を生かし、今度こそ私はやり遂げてみせるわ。モブキャラ人生をっ!」


「も、もぶきゃら…ですか?よく分かりませんが、私もご助力いたしますね」


 私達は今年の野望を確認しつつ、身支度を終えると部屋を後にし、通い慣れてきた学園へと向かって馬車を走らせるのであった。




 話が戻るが、学園長からの提案を承諾し、それからの私はソルオスで勉強をする傍ら、魔法に関する基礎知識の勉強をする事になった。が、フリード先生の前で現状使える2階級魔法のマジックアローを使ってみせると、その授業の数も激減していき、難なく併用した授業を終わらせることができた。

 ただ、魔法に関する話を聞いて私の期待は大きく膨らんでいる。

なぜなら、この世界の魔法には使用者による差が無いというのだ。つまり、魔力が高い私が放つマジックアローも他の人達が放つマジックアローも皆、等しく同じ効力・威力で、そこに差など生まれないと言うのだから力加減の制御がいらないという事になる。力の制御に悪戦苦闘した私にとっては素晴らしいの一言であった。

 そして、アレイオスにはソルオスのような武術大会がないのも期待の要因だ。魔術師達は互いに戦い競い合う概念がないのである。そのもっともな理由が魔法の威力に個人差がないことと、その逆に階級魔法の威力差が絶対的だからだ。2階級魔法を使う魔術師はどれだけ束になっても3階級魔法を操る魔術師に絶対勝てない、それだけ階級差には開きがあるというのだから、競う前からどれだけ魔法が使えるかで勝敗は決まってしまう。後は、アレイオスで魔術師を目指す人の数が他のクラスで他の役職を目指す人より圧倒的に少ないという点がある。変に争って貴重な人材を失うのを避けているのだろう。

 とにかく、アレイオスでは競い合って下手に目立つイベントもなければ、使用する魔法に差が生じるような事もない。まさに、私が望む学園生活ができる可能性を非常に含んだクラスなのだ。


(まぁ、そう思えるのも全てソルオスの失敗を反面教師にしているからなんだけどね)


 私は物思いに耽りながら、馬車の木窓から見える学園への風景をぼんやりと眺めていた。程なくして、一年間見続けたレンガ作りの校門が見えてきて、私の新たなる学園生活への緊張が膨らんでいく。

 いつも通り停留所に馬車を停め、テュッテが開けてくれた出入り口から馬車を降り、私は深呼吸をして校舎を見上げた。


「ところで、アレイオスの談話室ってどこ?」


 何度か行き来したはずの新たな談話室も、テュッテがいるからといって完全に道順を忘却している自分のダメさ加減に震えながらも、私はテュッテがいるから大丈夫だと、さらにダメさ加減を上乗せしていく。

 私の問いに応えるように、後ろに控えていたテュッテが静かに私の前に進み出ると、案内するように歩き出したので、私はそれについて行く。広大な校舎に入り、廊下を歩いていると、向こうから小さな物体がこちらに向かって駆けてきた。


「メアリィ様ぁっ!」


「あら、サフィナ。ごきげんっ、おふぅっ」


 私は自分のスカートの裾を摘み広げ、彼女に淑女らしい挨拶をすると、そんなことお構いなしに、私の懐に飛び込んでくるサフィナのタックルに思わずダメージを受けたわけでもないのに言葉を詰まらせてしまう。新しくした私とお揃いの制服に身を包んだ可愛らしいサフィナはスリスリと私のお腹に頬ずりして、その光景は寂しがり屋の子犬そのものだった。


「もう、サフィナさん。レディとしてどうなのです、それは」


 私がほっこりした気分でサフィナのフワッとした栗色の髪を撫でていると、サフィナが突撃してきた方向から、これまた私と同じデザインの制服を着こんだマギルカが呆れた顔で私に近づいてきた。


「…でかっ…」


「は?」


 近づいてきたマギルカのとある部分を見つめた後、私はそう言葉を漏らして、自分の胸元をのぞき込み、最近膨らんでいると自信を持っていた自尊心にチクッと何かが突き刺さる気分になる。迂闊であった、思えば、この制服、とある部分がたわわな人にはかなり強調されるデザインかもしれなかったのだ。


「はぁ~…あっ、メアリィ様、ごきげんよう」


 ひとしきり私を補充し終わったサフィナが、何かに打ちひしがれる私から離れると、今更ながらに挨拶をしてくる、とびきりの笑顔で。


(ほんとにもう、可愛いわね、こんちくしょう)


 その仕草が私が思う年相応の可愛らしさにマッチして、思わず抱きしめたくなってしまう衝動を堪える私。ちなみにサフィナのとある部分は慎ましかった。


「今日からメアリィ様はアレイオスなんですよね、やっぱり寂しいです」


 シュンとしょげるサフィナの頭を撫でてあげ、私はソルオスの皆に自分の編入の話をした時の事を思い出す。

 話し終わった時の皆の顔は、なぜかとても納得した顔だった。


「それが最善かもしれないだろうね」

「やっぱり、限界だったのですね」

「それで長生きできるのなら」


 などと、各々口にしながら勝手に納得していた。一番ショックを受け、悲しんでくれたのはサフィナくらいだ。でも、彼女も皆に連れられ、ちょっと離れたところで何かを話し合った後、私の編入を渋々認めてくれたのであった。いったい何を話し合っていたのやら…


「確かに残念だよな、結局、メアリィ様の勝ち逃げなんだし」


 しんみりした雰囲気をぶち壊すようなそんな物騒な言葉を放ちながら、ザッハが両手を頭の後ろに組んだまま、こちらに寄ってくるので、私は笑顔のまま彼のスネを軽く蹴って黙らせてやる。


「別にもう会えない訳じゃないわ、こうして今だって会ってるし、時間が空けば皆で集まれば何も問題ないわよ」


 私は近くでうずくまるザッハをあえて見ず、サフィナに提案してあげると彼女は元気よく返事を返してくれた。


「それに、ソルオスも二年目からは魔法を勉強することになりますし、授業が同じになる事もあると思いますわよ」


 これまたうずくまるザッハをヤレヤレといった顔で一度見てから、マギルカがサフィナを励ますように言葉を続けてきた。


「そうですよね、あっ、私、授業に行ってきますね」


 そう言うと、サフィナは笑顔で一礼し、そのまま踵を返してソルオスの談話室へと向かって駆けだしていった。それをほっこりした表情で見送る私とマギルカ。


「っで、あなたは行かないの?」


「行くよ!ていうか最近おまえらの俺の扱いひどくないかッ!」


 やっと足の痛みが引いたのか、涼しい顔で声をかける私達に向かってザッハが涙目で抗議してきた。


「そんな事より、サフィナを変な虫からしっかり守りなさいね」


 私は詰め寄るザッハをシッシッと手で追い払いながら、何かと寂しがり屋で気の弱いサフィナを気にかけて、ザッハに護衛を任命する。


「おっ!なんか騎士っぽいな、それ!よし、任せておけ」


 さっきの抗議はどこへやら、なんか気分をよくしてザッハはサフィナが駆けていった方へと走っていった。


「メアリィ様、私達もアレイオスの談話室へ向かいましょう」


「えぇ…」


 私が仲の良い友達二人を見送り、ちょっとセンチメンタルな気分に浸っていると、マギルカが気を使ってそう言葉をかけてきたので、私は頷き、気持ちを新たに歩き出すのであった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。メアリィ様、魔術師として再スタートです。

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