鉄拳制裁!
「なに? 今の映像は……」
私は側にいたテュッテの方を見て反応を伺う。
どうやら私だけが見たというわけではなさそうだった。
私達は今、神殿の中にいた。
なにか抵抗があるかと警戒していたが、神殿内はもぬけの殻だった。
しかも、伝説の島にある神殿にしては朽ち果てた遺跡に近くなっているのが驚きである。
ただここを訪れただけなら、なにもないかと帰るところだが、ここには確かにノアとリリィがいるはずだった。
ついでに白銀の鎧とニケもいて、この島をこんなに衰退させたなにかがあるはずなのに見当たらない。
唯一見つけたのは、エネルスにあった施設と同じあのミスリルでできた人型像がポツンと神殿奥に立っていたことだった。
だが、それは全く動く気配はなく、近づくと代わりにこちらが持っていた物が反応した。
なんとシータが持ち込んでいたあのアガードの手記がぼんやりと光り出し、なにか危険があるやもと私が受け取ったとき、その手記から光が抜け、人型像へと吸い込まれていったのだ。
そして、像が光ると私達は先程の映像を見せられたと言うことだった。
『おそらくは、ここを管理していた妖精だろう。エネルスの時と感じが一緒だったからおそらく同一か、近しいモノか、とにかくそいつはずっとノアを守っていたのだろう。そして、ここまで辿り着いた我らに伝えたかったのだろうな。ここでなにがあったのかを』
ノアの、いや、白銀の騎士の人生を垣間見て、私は胸が苦しくなった。
選択を誤れば、私は彼女と同じ道を歩んだかもしれない。
考えさせられる事柄ではあるが、それよりも今はそのノアとリリィを探さなければいけなかった。
「とにかく、今はノアとリリィを探さなきゃ。スノー、本当にどこにいるのか分からないの?」
『ここにいるとは思うんだけど、なぜかあらゆる点で阻害されている気がするのよね~。しかも、私の中で探そうという気持ちすら阻害されてきたような』
「阻害されてる?」
神殿に入ってからスノーの様子が、いや、私以外の人達の様子が少しおかしいような気がしたのはそのせいだったのだろうか。
神殿に入るまでは皆心配したり、勢いがあったのだが、神殿に入り奥へ進むとなぜか皆、集中力が散漫になり、探す行為に手間取り始めていたのだ。かく言う私も、神殿に入るとなにかが纏わり付いてくる感覚に居心地の悪さを感じていた。
加えて、神殿内に彼女達の形跡が全くないときたものだ。神殿内を隈無く探したが、全くと言って良いほど人がいた形跡がない。
あるのは神殿奥に鎮座している、おそらくは白銀の鎧が安置されていた台座とその横に佇む例の像くらいだった。
『阻害か……なるほど、彼奴ならやりかねんな。おそらくこの部屋全体に何重にも仕掛けているだろう。メアリィよ、其方は他の者と違って、影響を受けていなさそうだが、時間をかければかけるほど周りの者に悪影響を及ぼすぞ』
「そ、そんなこと言われても」
薄暗く、だだっ広い空間を凝視する私。
焦れば焦るほど、ちょっとした細かな違いを見分ける集中力が散漫になっていく。
(どこかにあるはずよ。いつものように幻影とかなんとかで隠しているとか、こういったボス部屋にはお決まりとしてどこかに繋がる隠し通路があるはずよ)
目を凝らし、なにか変化がないか見ているが、そんな揺らぎは壁にも床にも見当たらない。
『――――――』
と、私の頭の中でなにか音が聞こえてきたような気がする。
「スノー、なにか言った?」
『いえ、なにも。どしたの?』
あの感じからしてスノーかと思ったがどうやら違うらしい。
「なんでもないわ、ちょっと……」
『――――――』
まただ。私は周囲を注視しながら意識を研ぎ澄ませる。
確かになにか聞こえる、というか、頭の中に響いてくる。それはとても弱々しく、普段の私なら気のせいとして流していただろう。
でも、今は違う。神経を研ぎ澄ませてちょっとした変化でも掴み取ろうとしている私だから感じ取れたのだと思う。
加えて、スノーと長い間会話していたおかげで、こういったモノに慣れているというのが大きく作用していた。
言葉になっていないが、なにかの音が届いてくる。
(どこ、どこなの? こんなことできるのはリリィなの? お願い、リリィ。答えてっ)
私は心の中で必死に願い、少しの変化も見逃さない。こういうのはスノーの方が敏感に感じ取ったはずだが、阻害されているため気が付けていないのだろう。なんという技術力か、恐ろしくなってくる。
(でも、だからこそ、私がやらなくちゃ。私がしっかり拾い上げなくちゃ)
『――――――』
一際大きく音が私に届く。
その先、空間にほんの小さくだが一瞬だけ揺らぎが見えた。
「そこねっ、リリィッ!」
私はその小さな一点の空間の揺らぎに向かって拳を繰り出す。
拳の先の空間に触れたとき、小さく亀裂が生じ、そこからパリィィンッとガラスが割れるように空間が割れた。
力みすぎて勢い余ったのかその崩壊はどんどん大きくなり、なにもないはずの空間に新たなる神殿の一部が出現する。
入り口や小さな部分を隠すというのとは違って、神殿全体の四分の一位を隠すという大規模なことをやってのけたその技術力には感心するが、まさか次元をずらしてまで隠してくるとは思わなかった。
オルトアギナ曰く、幻惑、認知、次元、その他精神汚染等々、あらゆる隠蔽、妨害行為の集大成といえるシステムを作り上げていたのだろうが、その魔道具達を集約し管理する端末を私が破壊しさらにはその余波で周りの魔道具も破壊したらしい。
私って奴は、どんだけ破壊神なのだろうか。
『リリィッ!』
自分の力に感謝しつつ、スノーの言葉に私は出現した神殿の新たな一部を見ると、大きな通路のその中央、魔道具の残骸の近くにリリィがぐったりと倒れていた。
「スノー、リリィは大丈夫なの?」
『ええ、なんとか。怪我しているみたいだけど、安静にしてれば回復するわ』
「そう、大丈夫なのね。良かったわ」
心配そうに見ている皆を安心させるように、私はスノーの言葉を伝えると、皆ホッとした表情を浮かべた。
「こんな小さな身体で頑張ったね。偉いよ、リリィ」
ぐったりとしているリリィを優しく撫でる。
リリィではここから先を越えることはできなかったのだろう。さりとて見えていた魔道具類を破壊することもできず、ただただ壁を見つめ、私達が来ることを信じ、叫び続けたのだ。
その健気さにグッと来て、撫でる手に力が入りそうになって私は慌てて手を離す。
「メアリィよ。ゆっくりしている場合ではなさそうじゃ」
和んだ空気の中、エミリアだけが違う方向を見て、緊張している。
出現した神殿の一部とは逆、私達が来た方向からなにやらガシャガシャと物騒な音が迫ってきていた。
『おそらく、侵入者撃退用に作った道具共だろう。ここの隠蔽システムを破壊されて慌てて出てきたということか。しかし、音からして相当の数だぞ』
レリレックス王国で塔へ侵入する際に見た迎撃用の魔導兵器を思い出す。
王国一の魔工技師ギルツさんの作品ですら中々の強者だったのに、今度はあのニケが作った代物となると厄介な気がしてならない。
あのミスリルでできた妙な像は動く気配がないのは幸いだった。
「メアリィよ。ここは妾に任せて、先へ行けっ!」
「エミリア、それは死亡フラグだって何度言えば分かるのかしら?」
迫り来る音からしてかなりの量がいることが分かる。そんなモノを友達に押しつけて先に行くことなど私にはできない。だから、私は茶化しながらもエミリアの隣に並んだ。
「馬鹿者っ、リリィを見よ。あの状態でここまで逃げて来たのだぞ。残ったノアがどんな目にあわされているか。早く行って、助けてやれ」
エミリアに言われて、私は口籠もる。
確かにノアも心配だが、残ろうとするエミリアも心配だ。
「へへっ、大丈夫だぜ、メアリィ様。姫殿下だけに面白そうなところを任せはしない」
「姫殿下は魔法主体ですので、物理的な攻撃面と防御面を私達が受け持ちましょう」
エミリアと私の前にザッハが立ち、それに続くようにレイチェルさんも立つ。
「そうなってくると、チームを動かすまとめ役が必要だね。マギルカ嬢かボクが残った方が良さそうだ」
そう言いつつも決まったかのように王子が前に出てきた。
「行けっ、メアリィ! さっさとノアを連れ戻して来いっ!」
私を送り出そうとする四人の顔ぶれを見回して、私は心がジワ~と温かくなる。
私には皆がいる。なんと恵まれた環境なのだろうか。私はノアの記憶を垣間見て、自分の環境に感謝した。
「……ありがとう、皆。行ってくるっ! スノー、テュッテとリリィをよろしくねっ!」
リリィの看病に残ったテュッテの守りをスノーに託し、私はエミリア達に見送られ、残ったサフィナとマギルカ、シータを連れて先に進んだ。
神殿の奥へと進む中、そこは先程のなにもない神殿と打って変わって、なにやら研究施設がわんさかあった。
なんの装置なのか分からない物や、生物の部位やそのものを保管するなど、見るのも憚れる光景もあり、その全てニケが一人で行っていたと思うと絶句レベルだが、そんなことを可能にしてしまうほどの実力の持ち主なのだと、私は今一度気を引き締める。
『シータよ、あれはもしかして図鑑にしか載っていない貴重な植物では?』
「えっ、どこっ!」
私が襟を正している中、オルトアギナの誘惑に反射的に心が揺らぐシータを、ガシッと両肩を掴んで無言で止めるマギルカであった。まるで自分も戒めているようにも見えるのは気のせいだろうか。
「そ、そうよね。オルトアギナ様、今はそんなこと言ってる場合じゃないものね」
『ゆ、許せ。ふと目に入ったのでつい、な』
まぁ、オルトアギナは実際、蚊帳の外の傍観者みたいなモノだから、当事者の私達とは温度差が多少はあるだろう。
とはいえ、シータがピンチに陥ったら果たして傍観者に徹していられるだろうか。まさか、カイロメイアから飛び立つとか、そんなことはないだろうね、あの親バカ竜は。
「お、おやおや、随分と懐かしい声が聞こえると思ったら」
私達がプチ漫才を繰り広げていたら、奥の方から男が声を掛けてきた。
『ニケ……』
「なるほど、あなたがいるとなれば、アレを突破されたのも頷けますね」
そういえば、オルトアギナとニケが会話をするのは今回が初めてだったような。
しかし、最初に声を掛けてきたとき、なにやら慌てていたように見えたが気のせいだったのか。オルトアギナの存在を知ってか、今はそんな素振りもなく、余裕を見せている。
「フッ、どうやって来たのかと思えば、なんとも見窄らしい姿になって。あの智欲竜も形無しですね」
『ああ、そうだな。今の我は傍観者だ。この子らになにも手助けできぬ』
「……その物言いだと、幾重にも重ねた阻害、防御を一気に突破して、一瞬の内に装置をピンポイントに破壊するという離れ業をした者があなた以外にいると言うのですか?」
(ええ、はい、私なんですけど。いつものノリでやりましたが、この流れは私にとって不味いような気がするわ)
二人の会話を聞きながら、当事者の私だけ滝汗かいてハラハラしている。
「そ、そんなことより、ノアはどこっ? あの迷惑な警備兵を引き帰らせてもらいたいんだけど」
誰が破壊したかなんてそんなモノは些末なことだ。そんな話より、もっと重要なことがある。というわけで、私は話を逸ら、もとい、核心へと進めていく。
「警備兵? ああ、あれですか。帰りますよ、あなた達が死ねば、ね」
フッと人を小馬鹿にする笑みを見せて、ニケが答えてくれる。
つまりは止める気がないのか、止める手段がないのか。後者だと魔工技師としてはあまりにもお粗末過ぎるので、ないと思う。だとすると、私達を生きて帰す気はないと言うことだろう。
「後は……ノア? ああ、あの失敗作ですか? 今頃はあの鎧のストレス発散の玩具になっているんじゃないですかね」
「あの子は失敗作なんかじゃない。一個人としてちゃんとしっかり生きているのよっ」
ニケのイヤらしい物言いに、私の中で煮え切らないモノが沸き起こってくる。
「失敗作ですよ。あんな魂すら受け止められない貧弱な肉体など、ゴミ以下の代物ですね」
それは明らかにニケの挑発だった。
そうと分かってはいる。これが自分に対してだったら笑って聞き流せていただろう。
だけど、私はノアを侮辱する言葉を受け流せるほど人ができていない。いや、涼しい顔して聞き流せるような人間になるくらいなら、私は怒ることを選ぶ。
皆もそうなのか、後ろから怒気のようなモノを感じてきて、それが私の後押しとなった。
「ああ、白銀の鎧はグチャグチャにしてあなた方にお返しするのがお望みだったようですので、ゴミはゴミらしくしっかりと――――」
ニケがさらに言葉を紡ごうとしたのを見て、私はその口を閉じさせるため、前に飛び出していた。
愚か者だと笑い、蔑むような目でこちらを見てくるニケの指が動く。
その瞬間、私の前に半透明の壁が発生した。
私はそれを拳で粉砕する。
「なっ!」
さすがのニケもこれには驚いたのか、先程の余裕の笑みが一瞬消えた。
続けて、私の左右にニュッと杭が現れると、私はジャンプしてそれを躱す。
それを待っていたかのように私が飛んだ先の前に別の杭が発生していた。
ニケにとって必殺の一撃だったのだろう。現にあのイヤらしい笑みが戻っている。
だが、私は慌てることなくその杭に手を差し伸べ、放たれた杭をそのまま受け止めるとバキッと握り潰し粉砕するのであった。
「バ、バカなっ! なんだ、それはぁぁぁっ!」
さすがのニケも大きな声で驚愕する。冷静さを失ったのか敬語口調もなくなっていた。そんな声を私は近くで聞いている。降り立った私はニケの至近距離にいたのだ。
所謂、チェックメイトである。
私と驚愕に顔を歪ませるニケの目が合った。
「歯を食いしばりなさいっ。あの子が受けた痛みはこんなモノじゃ済まないからねっ!」
私はニケを見上げながら一歩踏み込み、そのお腹に向かって拳を突き上げる。
防御壁を何重にも張ったようだがそんなモノ関係ないかのように、私の拳は全て粉砕していき、ニケへと到達していった。
「なんなんだ、おまおごぉぉぉっ!」
ニケのくぐもった声とともに、彼は高い天井へと舞っていき、後方へと綺麗な弧を描いて飛んでいった。勢い余って私も拳を突き上げ、飛び上がっているのは、某ゲームの有名な技を彷彿とさせていて、心の中でその技を叫んでいたのは内緒である。
実にあっけない戦いだった。
カッとなってやってしまったが、それをマギルカ以外の人に見られて、マズいのではと思い、そっと様子を伺ってみれば、サフィナもシータも目を輝かせて凄い凄い、さすがメアリィ様、聖女様の連呼で終わっていた。私の力に疑問を持たないのだろうか、聖女とかそんな言葉で誤魔化せるのだろうか甚だ疑問ではあるが、本人達には疑問にならないらしい。
(ほな、ええか。ええのか?)
盲信というのは時折恐ろしく感じる。
ちなみに、オルトアギナに至っては、知ってた知ってたと謎のマウントで終わらせる始末。
とにかく、あのニケとの戦いは苦戦もなく終わった。まぁ、それもこれも私が神様から貰った力がニケの力を上回っていただけに過ぎない。
それに、彼は見た感じ、道具に頼りきって自分を鍛えることを怠った節がある。
天才的な魔道具開発者で、色々な知識と研究をしていて、そのうえとんでもない戦闘力を持っていたらそりゃもう、私なんかじゃ太刀打ちできなかっただろう。
ほんと、一つでも秀でていたことがあって、神様には感謝してもし足りないくらいだ。
ニケはというと、私の一撃を受けて気絶程度にすんでいた。いやまぁ、骨の一本や二本は折れているだろうが命に別状はない。それも偏に、彼が作った魔道具のおかげだろう。
その証拠に彼が身に付けていた指輪の数々が身代わりのように壊れていたのだから。ついでに念には念をということで、残った指輪も壊しておく。
と、奥の方で爆発音が響いた。
誰かの攻撃。
それはノアか白銀の鎧の二択だが、ノアが魔法を使ったところを見たことがないので、私はそれが鎧の仕業だと判断する。
そうすると、誰が誰に攻撃したか、自ずと答えが見えてきて、私は慌てて奥へと駆け出していた。
「ノアッ!」
着ていた服がボロボロになり、焦げた匂いが鼻につく。服だけじゃなく、体中傷まみれのノアが床に倒れ伏していた。
「……お、姉、ちゃん……」
意識もあり、ノアがこちらに反応したことに私は一先ず安堵する。
『ファイヤー・ボール』
と、そこに火球が飛んできて、ノアに直撃する。
「ノアァァァッ!」
燃える彼女を慌てて払いに行ったが、彼女がなにも抵抗せず甘んじて攻撃を受けているように見えて私は疑問に思った。
「ノア、どうして?」
「……これは、私の罰だから……私は……紛い物、だから……」
か細い声で辿々しくノアは懺悔する。
その言葉で私はノアが記憶を取り戻したことを悟った。
「紛い物なんかじゃないわ。切っ掛けはどうであれ、今の貴方はノア。私の可愛い妹よっ」
どう言ったら正解なのか私には分からない。
でも、ノアの記憶を垣間見て感じたことを私はそのまま言葉に伝えた。
『キャハハハハハハハッ! なにそれ、テンプレ過ぎて笑いしか出てこないわっ!』
私の言葉にいち早く反応したのはノアではなく、ノアが飛ばされて来たさらにその奥、大広間となったその場所の台座の上から聞こえてきた。
魔法を放ったりしてた爆風で、ベールが棚引き、その奥に存在するモノを私に見せる。
私がこの神殿を暴いたおかげか、暗かったそこは光が差し込んで見やすくなっていた。
それを見た私は絶句する。
そこにあったのは広大な神殿を埋め尽くすほどの大きな装置。
私には用途が分からない様々な装置がくっついて聳え立つその巨大な装置に培養槽が二つ見える。なにかの液体が管を流れていったり、プシューと蒸気を吐き出したりと、今なおその装置が稼働状態なのを私に教えてきた。
おそらくあれがノアを生み出した魂移送の装置なのだろうか。
にしては巨大すぎてドン引きである。
だが、私が絶句したのはそこじゃない。
その装置の前にあったのは、細かな装飾に彩られた立派で大きな椅子だった。王座と言っても過言ではないそこに座るは全身鎧。
だが、その姿は異様で、関節部分からブヨブヨの肉塊が大量にはみ出しており、よく見ると、胸の部分に大きな穴があり、そこからも肉塊がはみ出している。私が会ってきた白銀の鎧のような全身綺麗な白銀色は、見る影もなくくすんで光を反射していなかった。
なによりも印象的だったのは……。
外れた兜から覗く頭部。
そこには、人の頭蓋骨が見えていた。




