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どうやら私の身体は完全無敵のようですね  作者: ちゃつふさ
第2章 学園編 四年目
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ライブを終えて


 精霊ライブが終わり、精霊のせいで大惨事だった舞台の上は再び整備され、訪れた皆が思い思いに酒を飲み語らっている。


「お姉ちゃん達、凄かったよっ!」


 少し興奮気味のノアが私達のいるテントにリリィと一緒に入って来るなり声をかけてくる。


「フッフッフッ、憧れてしもうたか?」

「うんっ!」

「だったら、妾のようにもぉっとセクシーに成長しないとなぁ、ふむ、ノアなら何年後かくらいにはなれるのではないのか? とはいえ、今の見た感じメアリィ止まりになりそうな気もするが」

「う、うん……」


 続いてエミリアの言葉に喜ぶかと思えば、なにか思うところがあるのか、言葉の覇気が無くなるノア。いや、後半のせいでどう答えて良いのか言葉に困っているだけかもしれない。


「ちょっと、エミリア。どういうい――――」

「ま、まぁ、なんだぁ、こういうのもある意味、活気に繋がるな。我が王都でも是非とも取り入れたいぞ」


 私が抗議しようとしたら速攻で話を逸らされ、追及できなくなる。おのれ、エミリアのくせにやるではないか。


「エミリア一人でするってこと?」

「なにを言っておるのだ、その時はメアリィ達も呼ぶぞ?」

「なんで他国の町興しに私達が参加しなきゃいけないのよ。やるんなら自国でやるわよ」

「なるほど、それも良い案だね。差し当たって次の学園祭とかにも……」


 エミリアの意見に冗談半分で返してみれば、王子が考え込みながら恐ろしいことを言ってくる。


「まぁまぁ、そういう話は後にして、今は成功を祝いましょう」

「そ、そそそ、そうですよ、祝いましょう、祝いましょう」


 王子の思惑通りになると、自分にも降りかかってくるのでマギルカが速攻で話を逸らし、サフィナも賛同する。


『なるほど、その手があったか。ならばカイロメイアでもシータを』

「な、ななな、なにを言い出すの、オルトアギナ様っ! 無理だからね、無理無理無理無理無理ぃぃぃっ!」

『わ、わかかかか、分かった、分かったから本を高速で揺らすな。し、視界がブレまくってなんか気分がっ』


 シータとオルトアギナのやり取りを見ながら、皆が笑う。それに巻き込まれるように少し沈んでいたノアにも笑顔が戻っていた。


「どうしたの? お姉ちゃん?」


 私が見つめていたことに気が付いて、ノアが小首を傾げてくる。


「ん、いや、ノアは今、楽しい?」


 私は会話の流れとか考えず、率直に私が聞きたいこと聞くと、ノアも急な質問にキョトンとした。


「うんっ、楽しいよ」


 そして、ニパッと子供らしい笑顔で返され私も自然と笑顔になってその頭を撫でる。

 思えば、ノアを目覚めさせたのは私が発端だった。最初の頃は彼女を起こして良かったのだろうか。そして、私に着いて来ることで失った記憶を取り戻そうとしているのが果たしてノアの為になるのか、そう考えていたのだが、いつしか、ただただ純粋に、ノアが今を楽しいと思って生きて欲しいと願っていた。

(この気持ちってなんだろう。マギルカ達に向ける気持ちと同じような、ちょっと違うような……)

 兄弟姉妹を持ったことのない私にとって、言葉だけでも妹だと言っていたが、旅を続ける中でそれが私の中で変化していったのだろうか。


「良かった。これからもっともっと一緒に楽しいコトしようねっ」


 私の本心を吐露すると、ノアは嬉しいような悲しいような、そんな読み取りづらい表情を一瞬見せた。


「はぁ~い、皆ぁ、お疲れのところ申し訳ないけど、もう一仕事お願いできるかしら?」


 どうしたのか聞こうとした私を遮るようにフレデリカさんが現れ、なにやらもう一仕事を要求してくる。嫌な予感しかしないのはなぜだろう。


「なんですか? また歌えって言うんですか?」

「違う違うっ。ズバリ、儀式の後は訪れた観客と巫女達とのふれ合い会を開くのよっ!」

「ふれ合いってなんですか? 聞いてませんが?」

「うん、だから今言った」

「…………」

「仕方ないじゃぁぁぁん。初めてのメンバーだからそんな急に推してくる人なんていないと思ったのに、予想以上に好評で観客の皆が押しかけているのよ。伝統だと思ってここは一つっ」


 フレデリカさんには珍しく、手を合わせてお願いしてくる。それだけ外では大変なことになっているのだろうか。

 そういえば、ザッハとレイチェルさんの姿が見えないが、きっとそれに関わっているのだろう。

(う~ん、所謂、握手会みたいなモノかしらね。益々持ってアイドルって感じだわ)

 まぁ、あんな過酷な状況の中、皆一丸になって盛り上げてくれたのだ。ちょっとくらいサービスしても良いのではなかろうか。


「う~ん、まぁ、ちょっとだけなら……どう、皆は?」

「私としては危険がなければ……」


 私の問いに答えるマギルカはいつの間にやらテントから外をチラ見しており、私も続いてチラ見すると、ザッハ達によって整列させられ、順番待ちをしている皆様の鼻息が荒いというか、気迫が怖かったりする。


「フレデリカさん、危険はないんでしょうね?」

「う~ん、まぁ~、た~ぶ~んっ♪」

「歌って誤魔化さないでくださいっ」

「だぁ~いじょうぶだってぇ~、だってあなた達は巫女なのだ~か~らぁぁぁっ♪」


 巫女だからなんだというのだろうか。今一信用ならないフレデリカさんだが、これ以上皆を待たせると、本当に興奮が爆発して精霊みたいに暴走しかねない。


「よぉし、パパッと済ませましょうか」


 私はなにかあった場合、無敵の私だったらなんとかなるだろうと思って先陣をきる。

 皆に見守られながら、案内されて私の前に一人の観客だった人が慌てて近づいてきた。


「今日は、ライブに来てくれてありが、と、う?」


 頼もしく先陣を切ってはいるが、実の所初めての経験で私だって緊張していたので考えがまとまらず、勝手に握手会だと思い込んでいた。だが、私が手を差し出しても相手はその手を取ろうとしなかった。

 小首を傾げる私の前でその人は行動を起こす。

 そう、バッと跪いたのだ。

 そして手を合わせて祈るようなポーズをとったのである。


「あぁぁ、巫女様っ、素晴らしい儀式をありがとうございます!」

「……えっとぉ、こ、これは?」


 手を差し出したまま硬直している私の前で拝み倒す観客様。なんともシュールな光景に私はどうして良いのか分からず、ギギギッと壊れたブリキのように軋みながら首を回して皆を見る。


「そりゃあ、今回の巫女なんだもの。神聖なる儀式、精霊を鎮める乙女達を敬ってなにか不都合でもあるの? はいはい、皆も並んで並んでぇ~♪」


 一人テンション高めにフレデリカさんが指示してきた。

 儀式の内容がアイドルライブみたいだったし、周りのテンションがファンみたいだったから忘れていたけど、そういえばこれは一応聖なる儀式であり、私達は巫女なのだ。言ってみればこれは神聖なる祭事である。なので、敬虔なる信者は祈るのだ。

(なるほど、ほなええか……ええのか?) 

 私か拝まれていると、皆引きつった顔で横に並ばされていく。


「はい、終了っ! 次の方ぁ~」

「あぁぁ、待って! もうちょっとだけぇぇえ~!」

「だめよ、だめよぉ~♪ さぁ~、連行してぇ~♪」

「あぁぁあ、まだ儀式の感想の詳細を語ってなぁぁぁあああっ!」


 フレデリカさんの誘導で拝み倒していた人が船員さん達に連れ出されていき、次の人が猛ダッシュで私達に近づき、許された時間内、思い思いの人に向かってひたすら拝み倒していく。

(な、なんか私の思っていたファンとのふれ合いと違う……)

 こうして、私達はしばらくの間、皆に拝め奉られまくるのであった。

 

 

 

 一時間後。


「あぁ~、凄い経験したわ」

「そうですね……まさか、拝まれるなんて」


 テントに戻り、衣装から普段着に着替え終えた私はぐったりと椅子に腰掛けていた。


「フッ、妾としては悪い気分ではなかったぞ」

「さすが姫殿下、器が違うね~」

「シータとて、カイロメイアではオルトアギナに次ぐ権力者じゃろう。崇められ慣れしておいて損はないぞ」

「いや~、それはちょっと~」

「まぁ、一番落ちつきなかったのはサフィナだったけど、大丈夫?」

「ら、らいじょうぶれふ」


 エミリアとシータの会話を聞きながら、テーブルに突っ伏しぐったりしているサフィナに声をかけると、彼女は今日一疲れた顔をしていた。

 私達の儀式は今度こそ幕を下ろし、皆、成功を喜び祝う。

 そして、時間が経ち、日が傾き始めて周囲の興奮が落ち着きだした頃、ソレはやってきた。


「皆さん、今日は本当に見事な儀式でした」


 ダレ~としばらく休憩している私達の所にベルトーチカ様が訪れてきて、私は慌てて体勢を立て直す。


「ベ、ベルトーチカ様。そ、そんな、滅相もございません」

「それで、疲れているところ申し訳ありませんが、精霊が再び現れました。皆様に会いたいそうです」


 ベルトーチカ様の言葉に緊張が走り、私はゆっくり皆を見回すと各自答えるように頷いてきた。

 そして、私達はベルトーチカ様の案内の元、精霊に会うことになった。

 そして、少し歩いた先、そこにはあのいい加減な造形の巨人ではなく、もうちょっとまともな人の形をした水の巨人が海上に佇んでいた。


『よくぞ参った、来訪者達よ』

「えっ、あっ、うん」


 落ち着いた口調で大人ぶる精霊の言葉に違和感全開で私は敬語とか忘れて返す。


『私はこの精霊海の領域を支配する水の精霊である』

「うん、知ってる」

『来訪者なのに此度の儀式、ご苦労であった。この領域を代表して礼を言おう』

「いや、原因はあなたですけど。というか、どうしたの? さっきまでフオォォォ、○○たぁぁぁんって凄いテンションで盛り上がっていたじゃない」

『ゲフンゲフン、な、ななな、なんのことかな? 私は領域の支配者。そ、そそそ、そんなバカ丸出しな振る舞いなど、すすす、するわけないだろろろ』


 すまし顔でしゃべる精霊に向かって、私は万歳してドタバタするジェスチャーをとると、彼は動揺しまくっていた。


「フレデリカさん?」

「まぁまぁ、興奮状態がピークに達して爆発し、一気に正気に戻って恥ずかしいのよ。まぁ、格好つけたいお年頃ということで、軽く流してくれると助かるわ」

「お年頃って、私達の何百倍も生きているのに?」

「メアリィ様、これ以上苛めますとまた癇癪を起こしかねませんよ」

「確かに、マギルカの言う通りね」


 あれだけ苦労をかけさせられたので、ちょっとくらい恥ずかしい思いをさせても良いのではと悪ノリしてみたが、マギルカの言う通り臍を曲げられまた駄々っ子に逆戻りされては困る。


「じゃあ、私達がここへ来た理由は分かっているのかしら?」

『ああ、フレデリカたん、じゃなくて、フレデリカに聞いている。ゼオラルへ行きたいのだろう?』

「ええ、白銀の騎士達に破壊されてゼオラルへ行くことができないと聞いてるんだけど、可能なのかしら?」

『うむ、安全且つ確実にゼオラルへ向かう装置は破壊されたが……くそっ、ニケの野郎、技術だけ盗んで自分用に作るとか、なぁにが前時代的で非効率的だなっだ。こちとらこれで何百年も運営しとるんだよっ!』

「精霊様、話が逸れてるわよ」


 良い感じに話を進めていたが、なにやら不穏な空気を醸し出し始めたので、私は精霊に話しかけて正気に戻ってもらう。


『ん、あぁ、オホン、破壊されたからと言って、ゼオラルへ行けなくなったわけではない。フフフッ、凄かろう、なんてったって、私はこの海域を支配する精霊なのだからなっ!』

「よっ、さすが精霊様っ、す~ばらし~いで~す~わぁぁぁっ♪」


 軌道修正が上手くいったが、自慢げに踏ん反りがえる精霊を歌いながら囃すフレデリカさんがいる。そうやって甘やかすからあんなキレやすくて駄々っ子に育ったのではなかろうか。


『というわけで、さっそくゼオラルへ送ってやろう』


 そして、空気も読まぬこのスピード展開。こっちだっていろいろ準備というか、正直あの儀式で皆ヘトヘトだろうから今日はこのまま休ませたいところである。


「いや、今日は皆疲れているからまた明日とかにならな――――」

「わぁ~わぁ~、メアリィちゃんっ!」


 私が皆を代表してお願いしようとしたら、フレデリカさんが慌てて、器用に私をヒップ(?)アタックして止めに掛かってくる。


「なにするんですか、フレデリカさんっ」

「精霊様は気分屋なのよ。明日になったら試練だとなんだのとなにを言い出すか分かったものじゃないわ。今のうちに目的を果たした方が良いのよ。それに、今の精霊様は自分の醜態を洗い流したい一心だから、ここで断ると駄々を捏ねかねないわっ」


 私に忠告するというより、お願いするかのように涙目で説得してくるフレデリカさん。

(あぁ、そういえば精霊ってクソ面倒臭い相手だったわね。忘れてたわ)


「舞台や帰りの船のことは私達がなんとかしておきます。心苦しいですが後のことはこちらに任せて、メアリィちゃん達は目的を果たしてください」


 ベルトーチカ様もフレデリカさんが言わんとしていることを汲んで、後のことを引き受けてくれる。

 ここに来て「いや、明日でお願いします」などと言える強メンタルを持ち合わせていない私は途方に暮れて皆の判断を仰ぐのであった。


「皆、行けるかな?」


 私は身体だけは頑丈なので多少の疲れはなんのそのだが、皆の方が心配だ。

 だが、そんな私の心配を余所に、皆は大丈夫だと元気に返してくる。


「よぉし、じゃあ、行こうっ、ゼオラルへっ!」


 私がオ~と拳を上げると、皆も続いて拳を上げた。


『よし、では、ゼオラルを呼ぼうっ』

「ゼオラルを、呼ぶ?」


 私達の決定を確認して精霊がアクションを起こすが、なんだか変な言い回しをしてきて、私は思わず聞き返す。

 そんな私を尻目に、精霊はゆっくりと空を見上げて口の辺りがパカ~と大きく開いていった。


「み、皆、耳を塞いでっ!」


 思い出したようにフレデリカさんが注意を促した瞬間、金切り声のような、鯨などの海洋生物が出すような超音波のような音が大音量で精霊から発せられた。

 私は耳を塞ぐのに間に合わなかったが、大したダメージにはならず、それでもその大音量に驚き一歩引く。他の皆を見てみれば、なんとか間に合ったのか耳を塞いでいるがフラフラしていた。


「なんつう大音量の音を発してるのよっ! そういうことは事前に報告してよねっ!」

『ふむ、来たぞっ』

「人の話を聞けぇぇぇいっ! って、来た? なにが?」


 皆のために文句の一つも言わないと思って、抗議するとガン無視して遠くの方を眺める精霊。

 その態度に激昂するが、言葉の内容に私は怒りを鎮め、精霊が見つめる空を見る。

 視線の先、空の彼方。

 小さくだがそこに変化があった。


『なにか空間から出てきたわね』


 私の横に来て、スノーが目を細めて見上げている。


「空間の海を泳ぎ回り……豊かな大地、膨大な魔力を内包し形成された巨大な魔法生物……それが、ゼオラル……」

 スノーに続いて一人、それが見えているのか、それとも思い出しているのか、ノアの声が震えて聞こえる。


『さぁ、行こうか』

「どうやって?」


 天空の彼方、ゼオラルが点にしか見えない私達に精霊は誇らしげに促してくる。


『舞台の中央へっ!』


 その言葉と供に、舞台が起動し、中央に水球が形成される。

 なにも知らない来訪者の皆さんが、何事かと大騒ぎし、さらには運悪く舞台近くにいた人達が水球に巻き込まれてそれはもう大変なことになってきた。


「ちょっとぉ、出すなら出すって言いなさいよっ! 皆さん迷惑しているでしょっ!」

『だから、中央へと言っただろ?』


(ぐおおぉぉぉ、これだから精霊という奴はぁあああ)

 思わず心の拳が出そうになったが、グッと堪えて私達は水球の元へ移動する。そんな中、ベルトーチカ様達が事情を説明し、周囲を落ち着かせに行くのが見えた。


『狙い通り、ゼオラルが近くに現れたのはにっくきニケめがここへ来た影響だろう。でなくてはここより遠くに移動して、さすがの私でもお前達をあそこへ送ることができなかった。さぁ、時間が無いっ! 水球の中へ』


 考えてないように見えて、実はちゃんと考えている精霊に急かされて、私達は水球まで駆けていくが、中へと言われて逡巡する。


「ま、待ってよ。水球の中に入ったら私達息ができないわっ!」

『安心しろぉっ! 私の力で数分は呼吸できるよう調整しているっ!』


 私の懸念が聞こえたのか、海上からここまで響かせる精霊の声が無駄にデカい。

 そんな便利なことができるのなら、儀式の時もそうしてくれたらと思ったが、そもそも荒れに荒れていた当時の精霊がそんな事してくれるわけもなく、さらに数分呼吸ができるという曖昧な時間が非常に不安を掻き立てた。

 と、私の手をギュッと握る感触が伝わる。

 側にいたノアが握ってきたのだ。

(そうだ、ここまで来たのよ。今更引き返すなんてないわ。しっかりしろ、メアリィ。あなたはお姉ちゃんなんだから)

 私は一度深呼吸をして、皆を見る。


「行こう、ゼオラルへっ!」


 そう言って、私は一番に水球へと飛び込んでいく。

 途中で別れたベルトーチカ様とフレデリカさんを除いて皆が続き、水球へと入っていった。

 水の中を漂う風景。でも、呼吸ができる不思議な体験に戸惑いながらも、私は精霊の方を見て頷く。


『よぉし、準備ができたな。ではっ!』


 私の合図を受け、精霊の大きな手が伸びてくる。そして、水球をムンズと握りしめ、自分の方へと引き寄せていった。

 急なことで水球の中にいる私達も少しパニックを起こし体勢を保てなくなり、あっちこっちと水球内を漂う者が出始める。私がノアとテュッテを守るように抱き寄せると、皆もそれに習ってか私の周りに集まり、各々手を握ってバラバラにならないようにし、事態を見守った。


『行くぞぉぉぉっ! 歯を喰いしばれぇぇぇっ!』


 なにが起こるか全く分からない中、精霊はザバァァァンとわざわざ脚まで作りだし、海の上で握っていた水球を大きく振りかぶる。


「えっ、ちょ、ちょちょちょ、待って、待ってっ! まさか、投げるんじゃないよねっ!」


 その見事な投球フォームを見て、私は顔を青ざめ嫌な予感を口にする。だが、水の中なので皆には聞こえないし、大きく振りかぶったせいで、水球の中は更なる水流が訪れ、振り回されないよう皆で作った塊を強固にしていった。


『そおぉぉぉれっ、ゼオラルッ! 受け取れぇぇぇっ!』

「うそでしょぉぉぉっ!」


 私の予想は的中し、この精霊は事もあろうに私達が入った水球を空の彼方へ投擲するのであった。


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― 新着の感想 ―
[一言] > 精霊は事もあろうに私達が入った水球を空の彼方へ投擲するのであった。 予測可能回避不可能
[一言] ふれあい会まであるとはうーんこれはアイドルですわ このめんどくさい&大雑把な感じはうーむ精霊ですわw
[一言] ライブのあとに握手会。働き者だなあ… これで各地にアイドル文化が広まっていくのかな アイドルは偶像だから、巫女でも間違ってない。のか? 満を持して精霊による移動方法。投げる。脳筋過ぎーーー …
感想一覧
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