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どうやら私の身体は完全無敵のようですね  作者: ちゃつふさ
第2章 学園編 四年目
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話を整理してみよう


 村へ戻った私は、さっそく村長に会って事の顚末を説明した。

 もっとも、細かいことは伏せて、あそこへは行かないようにと伝えておく。

 シータの助力であの扉はしっかりと施錠してもらったし、そもそも、あれはカイロメイアの技術に精通する者しか操作できないほど複雑なモノらしいので、この村の人間では操作不可能だろう。

 今後のことだが、やはりと言って良いのか、村長は月見草祭りを開催するらしく、マギルカ達が倒したモンスターの死骸はできる限り回収し、その素材を祭りに生かしたいとのことだ。うん、前回もそうだったが、なんとも逞しい限りである。

 話し合いは一旦終わり、それぞれが部屋に戻る中、私はテュッテとノアが待つ部屋へと向かう。

 王子達と話し合ったのだが、レガリヤ領で起こったことなので、現状私に判断を任せるということになり、私がノアを預かることになったのだ。


「っで、どうしてシータがここにいるの?」


 予想はしていたが、まさか休憩無しに訪れているとは、なんというタフさ。恐るべき探究の申し子ではあるのだが、自重して欲しいところではある。


「いや、別に古書についての話をしに来ただけではなくってぇ、えっと、その」

「誰も古書のことを聞いてないわよ。あなたも無関係じゃなさそうだし、心配だから見に来てくれたんでしょ?」


 あまりの挙動不振っぷりに溜息交じりにフォローすると、シータは高速で首を縦に振って笑って誤魔化している。

 改めて見ると、シータとノアはどことなく似ている。

 ベースの種族が同じというところもあるが、家系的な部分も加味されるのだろう。

 なので、シータもノアについては他人事とは思えないので心配しているのだ。


「それでぇ、話は変わるんだけど、これからについてはどうなるのかしら? 具体的には古書とか?」


 前言撤回……。

 やはり、知的探求者の性は抑えられないようである。

 ノアの方を見てみると、彼女はリリィと仲良くご就寝のようだった。


「ノアはどうなのかしら? まさか……」


 私はノアの面倒を見てくれていたテュッテに聞いてみる。まさかとは思うがシータが無理させて、倒れたとかじゃないだろうとは思うが。


「お嬢様が心配しておられるようなことはありませんでしたよ」


 私の質問の意図を汲み取って、慌てたようにテュッテが答えてくれる。シータに至っては、なぜか再び高速で首を縦に振って身の潔白をアピールしてきた。

(あれ? もしかして私、圧が強かったのかしら? そんな気はなかったんだけど)


「緊張しておいででしたが、だいぶ落ち着いてきておりました。リリィ様がずっとお側でお相手なさったおかげかもしれません。先程もよくお食べになっておられましたしね」

「あ~、確かに。あれはワイルドというか何というか……」


 テュッテが思い出し笑いを零し、シータが苦笑している。

 彼女達の反応でノアがどういった食べ方をしたのかおおよそ見当できた私は、まぁ、沈んでいるよりは、わんぱくな方がマシかなと思うことにした。


「で、どこまで調べたの?」

「ぷへ?」

「惚けたってダメよ。無理はしなかったにしても、できる限りいろいろ聞いたんでしょ?」

「あ~、いや~、それはぁ~」


 私が半眼になってシータを見れば、彼女はバツが悪そうに視線を泳がせて頭を掻いていた。


『あの古書はアガードと名付けられた少年が書いたモノだと言うことが分かったな』


 見るに見かねて、オルトアギナが代わってゲロってくる。そこは私も読んだので特に目新しさはなかった。


「ふ~ん、そう」

『……ホウ、驚かんのだな。もしや分かっていたのか?』


(くっ、勘の良いしゃべる本は嫌いだよ)


「ま、まぁ、ノアにね……」


 あまりしゃべるとボロが出そうだし、しらばっくれると面倒なので、思わせぶりに話を切っておく。フッ、私もできる女なのだ。


『やれやれ、抜け目がないな。ならば知っておろうが、そのアガードとやらはおそらく、白銀の騎士の中身だ』

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


 私の知らない情報をサラリとぶっこまれて、思わず大きな声が出ると、ノアが薄目を開けて起きてきた。

 それを見て、私は慌てて口を手で塞ぐ。

 当のノアはテュッテがあやしながら再び眠らせようとしたが、もう大丈夫だと上体を起こしてきた。

 起こしてしまったのは申し訳ないが、なっちゃったものは仕方ない。私は諦めて、口から手を離しこのまま話を進めることにする。

 と、ドアをノックする音がした。


「どうなさいましたの、メアリィ様? 大きな声が聞こえましたけど」


 テュッテが慌てて扉を開けるとそこにはマギルカとサフィナが心配そうに立っていた。

 私ってば、そんなに大きな声を出したのだろうかと疑問に思ったし、ちと二人の反応が早いような気がしたが、まぁ、細かいことは気にしないでおこう。


「いやね、このしゃべる本がとんでもないことを言ってきて」


 私が先程の話を二人にしてみれば、私と同じ反応をしたので、今度はそれに驚いた王子達まで集結する始末。

 結局、皆が部屋に集まり、休憩もそこそこに今回の話を纏める流れになったようで、各々椅子に腰掛け、分かったことを話し始める。


「それで、話が戻りますが、そもそもそのアガードという少年は何者なのですか?」

『ふむ、古書には自分はここで生まれたと書いてあったところを考えるに、小娘と同じなのではないかと考えておる』

「つまり、造られた存在ということでしょうか?」


 マギルカの質問に沈黙で返すオルトアギナ。もしかしたら、本の向こうで頷いているのではないだろうか。そう思うと、なんか可愛い。


「オルトアギナ殿の話からノアもそうだけど、そのアガードという少年は何のために生まれたのだろうか?」

「子供が欲しかった、とかじゃないっすか?」


 王子の疑問にザッハが当然といった風に答えるが、私的には今までのニケ像を考慮して、あまりピンとこない解答だった。


『そんなロマンチックな発想をあのニケがするわけなかろう。そのヒントはあの古書、アガードの手記としようか、そこにある』


 オルトアギナの話を待って、シータが例の古書、アガードの手記をテーブルに置くとゆっくりページを捲った。すると、自分の出番だろうと察したノアがベッドから下りて、トテトテとテーブルの前に来る。私は無理しているのではないのかと心配になって彼女の側に寄ると、その開かれたページが目に入った。

 

 おおきくてまっしろなよろい。

 ぼくはこのよろいをきどうさせるためにうまれたらしい。

 

 シータが指差すところをノアが辿々しく読み上げる。


『ここに書かれておる大きく真っ白な鎧。それが其方らが言う白銀の騎士の鎧であろう』

「おいおい、鎧を着るために生まれたってのかよ?」


 ザッハの言葉に私は文章との違和感を覚えた。


「待って。アガードは着るとは書いてないわ。起動させるって書いてるよね」

『良いところに気が付いたな。我もそこに引っかかりを持っていたのだ。小娘よ、続きを』


 オルトアギナに言われて、ノアがさらに読み進めていく。

 

 このせかいにかずすくない、かみがつくったたましいあるぶき。

 そうるまてりあ。

 あのかたはそうよんでいた。

 

「神が創りし魂宿る武器。あの伝説のソウルマテリアが、もしかして白銀の騎士の鎧だというのかい?」

「すげぇ、本当に存在していたんだな。オレはお伽話だと思ってたぜ」

「仮に白銀の騎士の鎧が神の鎧だとするのでしたら、かつて王国がそれ以上の武器を作ろうとして失敗したのも頷けますわね」

「そんなとんでもない武器と張り合わされた当時の鍛冶師さん達はたまったもんじゃないわね。デオドラさんに話したらどんな顔することやら」


 それを聞いて「そりゃあ、無理だ」と豪快に笑っているデオドラさんの顔を思い浮かべて私達は苦笑する。


「うっ」

「ノア?」


 とここで、ノアが苦悶の表情を浮かべた。頭痛がするのか手でこめかみを抑えている。


「……ソウルマテリア……」


 忘れている記憶に触れたのか苦しそうなので、私はこの話はまた明日ということで、切り上げることを提案した。ノアの様子を見た皆も賛成し、話はここで一旦区切られ、皆、部屋から出て行き始める。

(白銀の騎士の鎧が、神が創りし鎧、か。しかも、魂宿る武器、ソウルマテリアとは……)

 私は先に戦った白銀の鎧のことを思い出す。

 肉を詰めた鎧だけの存在。彼女の存在が元々そういった部類なんだというのなら、なぜ本体である自分があそこへ赴いて来ないのか。

(……大いなる力の封印……)

 なんだかちょっぴり核心へと近づいたように思いながら、私はベッドに横になるノアの頭を優しく撫で、眠るのを見届けると部屋を後にするのであった。

(そういえば、明日から月見草祭りか。結局、一波乱起こしているわね、私……)



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― 新着の感想 ―
[一言] 家系をイエケイと読んでしまい、人格がラーメンに支配されている・・・猛省
[一言] 探究心には勝てなかったか
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