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どうやら私の身体は完全無敵のようですね  作者: ちゃつふさ
第2章 学園編 四年目
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白銀の鎧とのタイマンです

 動いたのは私が先だった。

 この場をさっさと終わらせて、マギルカ達と合流したいと気持ちからである。

 先程のサフィナの攻撃を避けない舐めプをもう一度かましてもらえば、私が核ごと真っ二つにしてあげる。

 相手のスピードが速いことは分かっていたので、私も本気を出して相手の懐まで一気に距離を詰める。

 そして、横に一閃。

 これでサフィナがしたように真っ二つ……と思っていたが、鎧は紙一重で後ろに下がりそれを躱してきた。

 やはり、そう簡単にはいかないみたいだ。

 まぁ、そうくるだろうと思い、私は手をクルッと返して、続けざまに斜め下から切り上げる。

 だが、それも予測されていたのか、白銀の鎧はギリギリで躱してきた。

(おかしい。こういっちゃなんだが、チートのおかげで、今までどんな相手でも私の攻撃はほとんど当たっていたのに。私が手を抜いているわけじゃないわ)

 私は対峙する白銀の鎧に違和感を覚える。もしかしたら、私より速く動ける……いや、そんなことはないはずだ。神様のおかげで身体だけは最強のはずなのだから。

 私は相手をしっかり見つつ、もう一度動こうとして、ふとテュッテ達の心配そうな顔が視界の端に見えて、無意識に足を止める。

 すると、白銀の鎧は私が斬りかかろうとした方向からスッと僅かに動くのが見えた。気のせいレベルかもしれないが、私にはそう見えたのだ。

(私の動きが読まれている?)

 確証はないが、私は本能的にそう思った。

 私が硬直していると、向こうもなにかに気が付いたのか、防御から一転、攻撃に切り替えてくる。

 一足飛びで私との距離を縮め、空中で回転しながら斬りかかってきた。

 その動きに私は付いて行けないわけではない。むしろ、妖精入りの巨像の方が速かったまである。

 私は横に移動してそれを躱し、反撃しようと思ったが、巨像のことを考えたおかげで、向こうの中身が人ではないことを思い出す。

 案の定、白銀の鎧は体勢など気にすることなく、そのまま全身を独楽のように回転させて、攻撃してきた。

 剣と剣がぶつかる音が鳴り響き、白銀の鎧の動きが止まる。

 かなりの勢いがついていて、本来、私くらいの人間なら剣ごと真っ二つだったろう。

 百歩譲って、剣の硬度が勝って止められたとしても、その力に吹っ飛ばされる、そこまで考えていたはずだ。

 なのに、私は難なくそれに耐えていた。

 これにはさすがの白銀の鎧も予想外だったか、驚いた素振りを見せ、慌てて距離を取る。

 そして、お互い出にくくなって、しばしにらみ合いになったのは言うまでもなかった。


『ねぇ、私とあなたが争う理由なんてある? あなたとその子は無関係でしょ?』


 さぁ、バトル再開かと思いきや、私の苦手な問答を始める白銀の鎧。もしかして、私と戦うことは得策ではないと判断したのだろうか。


「ええ、そうね、無関係だわ。でも、あなたが彼女をどうするかを聞いて、私はそれを看過できなかった。だから、私は私の信じる心のままに、この子を守ると決めた。それだけよ」

『なにそれ、ただの自己満? もしかしたらそっちがあなたを騙して利用しているだけかもしれないじゃない。あなた、その子のこと知らないんでしょ?』

「たとえそうだったとしても、私は自分の心を信じて進むのみよっ」


 案の定、向こうの言い分に理路整然と言い返せなくて感情論で勝負する私。これで間違っていたとしても後悔はしない。だって、守りたいと思ったのは本当のことだから。


「……自分の心を信じて……」

「どうしました?」

「……どこかで聞いたことある言葉……」


 私の近くでテュッテと少女の会話が聞こえてくる。彼女の記憶も、やはりなくなったわけではなく、忘れているだけのようだ。こうやってなにかを切っ掛けに思い出していくのだろうか。

 それはそうと、白銀の鎧は私との直接対決を避けようとしているように思える。それは野生の勘からか、それともなにかの要因で私の力を理解したのか。とにかく、未知数過ぎて気味が悪い。


『あ~も~、さっさとその子を私にちょうだいな。そうしたら、モンスター達も黙らせてあげるから。お友達も心配でしょ?』


 それは願ったり叶ったりではあるが、少女を渡さずにそれを実行してもらいたいというのが本音ではある。


『フッ、詭弁だな。地下森林にあったモンスターの死体に壊れた魔道具があったぞ。あれを装着させてモンスターを操っていたのだろう。あれをここに来る前に外して自由にさせておいて、今更どうやって黙らせるのだ?』


 さっそく活躍してくれるオルトアギナだが、その内容が不穏すぎる。彼の言う通りなら、私達に会う前からモンスターを解き放っているということになるではないか。

 つまり、鎧は私達と話し合う気などサラサラなかったということだ。


『チッ、本の分際で余計なことを……』

『我を本扱いするでないわっ! 我こそは智欲竜オルトアギナなるぞ』

『プッ、そんな見窄らしいしゃべる本があの智欲竜だなんてウケるわね。いつの間にそんなところまで落ちぶれたのかしら?』

『誰が落ちぶれたとぉっ! 我はこの本に封印とかされておらぬわっ! この姿はそこのメアリィの悪知恵を利用して、いろんなしがらみを回避してのことだ』

「いや、私を引き合いに出して悪知恵とか言わないで欲しいのだけど。こんな方法、誰だって気が付くでしょ、ねぇ?」


 オルトアギナに討論を任せようと思っていたが、私に流れ弾が当たってきたので思わず会話に参加する。しかも、勢い余って最後には敵に同意を求める始末。なにをやっているのだ、私ってば……。


『……なるほど「私の方」も見透かされていたようね。間抜けそうに見えてたけど、その実……』

『フッ、侮るなよ。此奴は我を欺き、我に勝利した人間ぞっ』


 白銀の鎧が失礼なことを言っているように思えて、文句の一つも言おうとしたが、なんか妙な解釈が入り始めたでござる。

 というか、なぜオルトアギナがドヤッているのか分からないんだけど。


「そんなことより、結局のところ、あなたは一体何者なの?」


 私の話から気を逸らすため、私は根本的な疑問を投げかける。

(いや、もっと前に聞くべきことなんだけど、色々ありすぎて抜け落ちていたわ)


『なにって、う~ん、そうね~、なんなのかしらね?』

「いや、聞き返されても困るんですけど?」

『あっ、周りの人からは「白銀の騎士」と呼ばれてた時もあったような』


(えっ?)

 サラッと言われて、聞き流しそうになったが、その聞き慣れたワードに私は驚きを隠せないでいた。


「ま、待って、今、なんて言ったの? 白銀の騎士って聞こえたような……」


 聞き間違いかもしれないので、私は震える声で確認する。


『ええ、そう呼ばれていたらしいわよ』


(そんな……いや、違う。私の知っている白銀の騎士は男性であって、こんな女性的な人では……待って、確かシータは女性がどうこう言ってたような……いや、それ以前に中身がアレなんだけど……)

 ただ話を逸らそうと振った話題から、とんでもない事実が告げられ、私の頭はその処理能力を大幅に超えて、ショート寸前である。


「そんな……白銀の騎士が……」

『待て、メアリィ。その判断は早計だぞ。そもそも白銀の騎士という名前は、白の鎧を着ていれば誰でも呼ばれやすい。お前が追う者と同一とは限らないぞ。さらに、彼奴は「らしい」と曖昧な表現をしている』


 驚き戦く私に向かって、早口で説得してくるオルトアギナの勢いに、私は半分くらい言葉を理解できないまま、勢いに呑まれて小さく頷く。


『それに、白銀の騎士はレリレックスの魔王や、聖教国の聖戦を単独で打破している。そのような実力ならば、あの巨像に遅れなど取らない。彼奴はその名を騙る偽者だ』


 いろいろ語ってくれるのはありがたいが、早口なので、もうちょっとゆっくりしゃべっていただけたらなと思うのは贅沢だろうか。

 まぁ、とにかく、まさか本当にオルトアギナがアドバイザーとして働いてくれるとは驚き半分、感謝半分である。

 彼のおかげで私も少しは冷静に物事を吸収する余裕が出てきた。


『そりゃまぁ、厳密に言えばあなた達の目の前にいるのは私じゃないから偽者かしらね』

「「えっ」」


 さらに妙な事実を告げてくる白銀の鎧にテュッテとシータが驚く。私はそれよりも前に言われたオルトアギナの言葉を消化していたので反応に遅れた。


『あら、やっぱり気が付いていたのはそこの銀髪少女だけだったようね。う~ん、これは厄介かも……』


(ま、また変な解釈入ったんですけど。私だっていまやっと驚こうと思っていたところなのに)

 勢いに乗り遅れた私は苦笑するしかなく、それが却って相手の言葉を正当化する素振りに見えたようで、やることなすこと後手に回っておいて、勘違いされるとはこれ如何に。

 とにかく、今までの情報をここらで一旦整理したいというのが本音だった。が、どうやら、向こうさんは違うらしい。


『面倒そうな相手に出くわしたわね。ここで処理しておいた方が良さそうだわ』


 などと独り言を呟くと、今まで緩い感じがしていた白銀の鎧が一変して、ピリついたオーラを醸し出す。

 それに触発されて、私も緩みそうだった緊張の糸を戻した。


『来るぞ、メアリィ。分かっていると思うが、奴の頭部に魔力が集中している。其方が本気を出させたおかげで奴の核が読めたぞ』

『チッ、それが狙いだったか。やはり面倒ね』


(いやいやいや、知らんがな、そんなこと。えっ、そうなの?)

 二人で盛り上がっているところ水を差すようだけど、私は内心驚きつつ、訂正したいところだが、これから戦おうとしている最中に、そんな余裕などなかった。

 でも、ありがたいオルトアギナの助言に感謝しつつ、私は標的の頭部を見ながら、剣を鞘に収めてその身を屈める。


「あれは、サフィナさんの」

「はい、サフィナ様の技はお嬢様が伝授したものです」

『ふ~ん、あの技、あなたが教えたの。でも、一度見ているから……』


 驚くシータにテュッテが誇らしげに語るのだが、それを聞いて白銀の鎧までなにか含みのある言葉を発している。

(教えたのは確かに私だけど、あそこまで昇華させたのはサフィナなので、もう彼女が編み出したってことにしない?)

 ツッコミを入れたいところではあるが、そんな心の余裕など私にはなく、私は抜刀の体勢を崩さなかった。

 相手の動きは確かに速い。だが、私にとっては追いつけないスピードではないし、この技なら後手でもオッケーだ。それに、あの中身が私の想像するリベラルマテリアだとするならば、一撃のもと葬らなければ再生を繰り返すだろう。

 だから、一閃で頭部を真っ二つにする必要がある。鎧ごと……。

 向こうの鎧の強度が私の伝説の剣(笑)に勝っていないことを願うばかりである。でないと、最悪、グーパンで粉砕という、ちょっと乙女としてどうなのよという選択になりかねない。

 いや、それ以前に私にサフィナ並の抜刀術なんてできるのかしら。

 ここに来て、変な緊張が豆腐メンタルの私に襲いかかってくる。


『あなたのそれは、そこから動かない後手の型。だから、こうするのよ。ファイヤー・ボール!』


 私的には斬りかかってくるのかと思っていたのに、まさかの飛び道具作戦できた白銀の鎧。

 しかも、飛んでくる火球に合わせて、自分も突っ込んでいく戦法とは。

(ど、どどど、どうする、どうする、メアリィ)

 相手に合わせて頭部を狙えるかということだけに緊張しまくっていた私に、課題が追加され、プチパニックになる。

 結果、私は愚行に出るのであった。

 

 パァァァン!

 

『はあ?』


 私はそのままの体勢で身動きせず、火球をまともに受けたのだ。

 そして、まるでなかったかのように霧散する火球。

(こんな結果を出した自分が不甲斐ない。ありがとう、神様ぁぁぁぁぁぁっ!)

 グーパンごり押しよりも醜悪な戦法で、私は突っ込んできた白銀の鎧に一閃するのであった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後の6行で全部持っていかれた。 さすがメアリィさま。
[一言] これはテュッテ以外の外野には魔法を切ったように見えるヤツ!
[一言] またやっちゃいましたねお嬢様w
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