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どうやら私の身体は完全無敵のようですね  作者: ちゃつふさ
第2章 学園編 一年目
23/288

ついにきました

ブックマーク、評価などありがとうございます。

 学園への入学手続きなどや、あれやこれやは私の知らない所で着々と進んでいき、夢膨らませていた今日。ついに、ついに、私、メアリィ・レガリヤは10歳となりました。

 私は今、入学式用のドレスを相変わらずメイド達に全投げして、着せかえ人形状態になっています。


「お嬢さま…いろいろレクチャーいたしましたが、ほんとにお一人で大丈夫ですか?」


「正直言うと、不安しかないけど、私も公爵令嬢として恥じないよう行動するわ…できる限り」


 私の日常生活においての不安要素を前もってレクチャーされ、この一年、私は少しでもテュッテから自立できるように努力してきたつもりだ。だが、それでも不安が残るのは偏に私の豆腐メンタルに原因があるからだ。ちょっとでも動揺すると私は即座に破壊神へとジョブチェンジしてしまう。こればっかりは、予想、経験、慣れ、そう言った物に頼る他ない。


(あぁ…私も心臓に毛が生えるような体になりたい)


 今だって、まだ現地に到着してもいないのに初めての入学式に緊張し始めている始末だ。

私は会場でいらん波風がたたないようにあまり目立たないようにするため、まず衣装の色合いをあまり目立たないようにするよう指示したのだが、真っ白なドレスはいつもの事ながら、その材質がシルクのようにこれでもかと高価すぎた。さらには手の込んだ刺繍やレース、フリルなどを施したスカートを3重にも折笠ねて、そこから覗く手袋とストッキングにも同様の手の込んだレースとフリル、刺繍が施されていて、華やかさを醸し出しすぎている。


(これを作った私の専属仕立屋のコンセプトはパッと見では分からないが醸し出される豪華さ…だそうな。これってもう、ウエディングドレスに匹敵するんじゃないかしら…はぁ~、学園に規定の制服とかあったらよかったのに…これだけ作れるなら、ほんとにジャージを作らせようかしら)


 私は髪を結われ、プラチナ製の髪留めで止められながらため息をつく。相も変わらず、全身真っ白の私の完成であった。


(うん、目立つな…これは…)


 完成した自分の姿を姿見に映して、私は心の中でぼやく。


(なぜ心の中かって、メイド達がやり遂げたっと満足そうな感じで各々を称え合ってるから水を差したくないのよ)


 私はテュッテに先導されて、玄関に止めてあった馬車へと乗り込む。アルトリア学園は王都から少し離れた丘の上に建設されているからだ。乗り込んだ馬車がゆっくりと出発した。入学式初日から遅刻なんて公爵令嬢としてあるまじき失態をしないように、時間に余裕を持たせている。


 そして、私は何事もなくアルトリア学園の前へと到着した。

そこは城壁とは違っておしゃれな煉瓦作りの壁に囲まれた広大な敷地に建設された大きな校舎がいくつかあり、その中央には結構高い時計塔が鎮座していた。


「ここが、アルトリア学園…」


 私は興奮するあまり、声に出しながら馬車の窓から外をのぞき続ける。馬車は門をくぐりぬけ、桜のような花を付けた並木道を通って規定の場所で止まった。そこにはすでにいくつかの馬車が停まっており、私以外の新入生がすでにいることを教えてくれる。


「お嬢様、会場はこちらのようですよ」


「う、うん…」


 私は平常心を心がけつつ、テュッテのエスコートに従って入学式の会場へと足を運んだ。

 会場は体育館というより大きな講堂だった。私の知識では大きな映画館っといった方がしっくりくる。会場に入ると係りの者がテュッテと何か話をしていて、どうやら座る席が決まっているらしかった。ここでも貴族界のなんちゃらが発動しているみたいだ。

 テュッテとはしばしのお別れをし、私が会場内へ入ると、なぜか一斉にどよめきが起こる。見ると、会場に来ていた者が皆こちらを見ているではないか。


(え?なに?なに?私、何か変かしら?)


 慌てて私は自分の姿をチラッと確認して、そして、私も驚いた。私の衣装がキラキラと淡く光っているからだ。

講堂は閉めきられて窓の光しか入ってこず、少し薄暗かった所為で、私の衣装が光を反射して淡い光沢を帯びるのが悪目立ちしていたのだ。光を反射する高価な材質もさることながら、よく見ると、ところどころにキラキラした極小の宝石が縫いつけられているではないか。

これは何事っとばかりに、私は出入り口にいたテュッテを横目で見ると、彼女は拳を握り小さくガッツポーズをしているところだった。皆の注目を浴びることに成功しての喜びなのだろう。私は嬉しくないが…


「あれが王子のいう『白の姫君』か」

「噂以上に美しい…レガリヤ卿が自慢したがるわけだ」

「なんと純白なお方なのだろう」


 などと、学校関係者などの声が耳に入ってくるが私はあえてそれらを無視して、姿勢を正し、優雅さを保ちつつ、なるべくスカートで見えない足運びを速くして席に着くことにする。それはもう、湖に優雅に浮かぶ白鳥がその実、足を物凄く動かしているように…

窓の光が届かなくなって私の衣装も普段通りになっても、時すでに遅し、悪目立ちしてしまった私を興味津々といった視線が集中する。さらに、私が案内された席が状況を悪化させた。講堂の中央、講壇がよく見える場所に私の席があり、さらに、私の隣には誰も座れない仕様なのだ。


(はははっ、完全ぼっちの放置プレイですよ…)


 私が光のない瞳で空笑いをこぼしつつ、虚空を見つめて座っていると、


「フフッ…目立ってますわね、メアリィ様」


 私の斜め後ろの席から声がかけられた。


「まぎりゅかぁ」


 振り返りながら、嬉しさのあまり、噛みまくる私。

私同様、その金髪縦ロールが目立ちまくるお友達は、蒼と黒を織り交ぜた豪奢なドレスに身を包み、クスクス笑う口元を扇子で隠して座っていた。どうやらここはVIP用の席なのだろうか、とにかくぼっちを回避できた私はホッと一息つく。会場内は続々と入ってくる新入生で埋まっていき、開始予定時間と共に式が開始された。

 ちなみにザッハもマギルカの近くにいるが、あの男は遅刻ギリギリに来やがったので他人の振りをする事にしていた。

そして、式が滞りなく進められ、皆がよく言う学園長の長い話がつまらなくて眠くなるという事例を私は身を持って体感しながら、それでも公爵令嬢としての意地で睡魔と戦い続けるあまり、何を話していたのか全く頭にはいっていなかった。最後の方はもう、学園長が私の魔法効果無効のスキルを相殺するような睡眠魔法でも使っているんじゃないかと本気で疑うほどに眠かった。

 そんな眠気を吹き飛ばしたのが会場内のどよめきだった。新入生代表に王子が壇上に上がったからだ。

サラサラの金糸の前髪から覗くその優しそうな碧い瞳に反して、姿勢を正し凛とした態度と言葉で話す彼を、会場の令嬢達がうっとりした顔で眺めているのが見える。


(王子は相変わらずの人気者ね…)


 私は眠気を吹き飛ばしてくれた彼に感謝しつつ、残りの式をそつなくこなし、無事、何事もなく入学式を終えることとなった。

 式が終わると、皆がゾロゾロと退席し始める中、私はその波に呑み込まれないように少し席で待つことにした。


(馬群に埋もれて、周りの人に何かしてしまったら大変だものね)


 まだ緊張を解くには早いのだが、式が終わったという事実が私を油断させ、一息つくように肩の力を抜き、瞳を閉じさせる。


「お~い、いつまで寝てるんだよ、メアリィ様。式は終わってるぞぉ」


「ちょ、バッ!寝てないわよ」


 失礼極まりない言葉をかけてきたバカを私はキッと睨みつけて、弁明すると、近くを通った同級生にクスクスと笑われてしまった。


(おにょれ~…このバカは今度、ぶっ飛ばそう)


 式の間、爆睡をかましていたザッハが、やれやれといった顔でこちらを見ているので、私の暗黒面が逆襲を誓う。


「あれ?マギルカは?」


 いつもならこの男の失言を訂正してくれるはずのマギルカが見あたらず、私はキョロキョロと辺りを見渡したが、彼女の姿は見あたらなかった。


「マギルカなら王子のところへ行ったぞ」


「そう、忙しい事ね。あなたは行かなくてもいいの?」


「ああ、寝てたら置いてかれた」


「あっそ…」


プイッとそっぽ向いて、私は空いた出口へと向かうと、ザッハも後をついてくる。


「何でついてくるのよ」


「マギルカに言われてね、一応、護衛と男除けだよ…」


 頭の後ろで手を組んで視線をはずす彼の頬が少し赤く、照れた感じが何となく可愛かったので私は先ほどの誓いを取り消すことにしてあげた。


「そう…ありがとう」


 ザッハに言われて、私は周囲の男の子たちがチラチラと私に視線を送っている事に気がついた。ザッハが邪魔なのだろうか、ただ見ているだけに留まっている。


(まぁ、私、これでもレガリヤ公爵家の娘だものね、親とかに知り合いになっとけっとか言われたんだろうな~…ご苦労様です)


 貴族社会の世知辛さにため息をつきつつ、私は会場を後にした。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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