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どうやら私の身体は完全無敵のようですね  作者: ちゃつふさ
第2章 学園編 四年目
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失礼しますよっ


 現れた地下への階段は思っていた以上に深く、私達はしばらくの間、慎重に下へと下りていった。

 どれほど進んでいったのだろうか、暗く風景が変わらない状態のせいで感覚が麻痺し始める。

 そうこうしているとようやく私達の目の前に新たな風景が広がり、その光景に足を止め、絶句する。


「これは……森?」


 そう、地下に小さな森が存在していたのだ。

 下りてきた分イコール天井の高さと言わんがごとく、その頭上は高く先が見えない。

 この異質な状態に戸惑う私達よりも驚いているのがエルフの二人だった。


「どういうこと……ここはいにしえの森に……似ている?」

「確かに、群生している植物が酷似しているわね。でも、なぜこんなことを……」

『なるほどな。この地に魔力の循環を人工的に作ったのか。こんな芸当ができるのは……「ニケ」……其方なのか……』


 どうやら、目の前に広がる森はいにしえの森に似ているようだった。オルトアギナの呟きは後半にかけて独り言のように小さくなり、上手く聞き取れなかったが、聞き覚えのあるワードだった。

 しかし、今は目の前の現象の方がインパクトが大きすぎて、不確定な事柄は一旦スルーする。

 植物についてはよく分からないが、確かに言われてみると地上の森とは違うように感じた。まぁ、素人では言われないと全然気が付かないレベルだろうけど……。

 とりあえず、エルフさんサイドだけで盛り上がっていないで、こちらにも分かるように説明してもらえると嬉しいのだが。


「月見草の件で、いにしえの森に生息する植物達はここで群生するのは難しいのではなかったのですか?」


 私がどう会話に参加しようかマゴマゴしていると、果敢にも会話に参加していくマギルカであった。


『ふむ、良い質問だ。ならばまず、この大地に育む全てのモノと魔力について世界の理から学ばなくてはならんな。ほれ、シータよ、教えてやれ』

「ふぇ、私ぃ? え、あ、えぇ~っとぉ~、うぅ~んとぉ~」


 急に先生をしだしたオルトアギナが説明するのかと思えば、自分に振られて変な声を出すシータ。続いて、なんと説明したら良いのか思案するように腕を組んで唸り出す。


「マギルカさんの言う通り、この森は本来なら生息不可能ですが、ある特殊な方法でそれを可能にしているように見受けられます」

「特殊な方法って?」

「妖精です」


 見かねたレイチェルさんがオルトアギナの指示を無視して、私達に結論から話してくれた。


『いやいやいや、そんな説明で納得できっ』

「なるほど、納得」

『そらみろ、説明不足で納得でき、るんかぁぁぁ~いぃっ』


 私とレイチェルさんの会話に、オルトアギナがなんかおもろい人になっていて笑えてくる。


『おいおい、そんなので納得いくのか? まずは世界の理から入り、妖精の概念をだなっ』

「いや、だって妖精がしたことだし」


 私的にはそんな小難しいことをレクチャーされても、理解できなくて途中で白旗上げていたと思う。

 私にとって妖精は常識の範囲外だし、どうやったのかなんて理解できなくとも妖精がやったというならそうなんだと納得できるだけの説得力も体験しているので、この結論に異を唱える気は全然なかった。


『うぬぬぬ、いや、まてよ。神獣を従える其方なら理解しうるか……なるほど、なるほど』


 なんか一人納得しているオルトアギナだが私の理解度と彼の私に対する理解度に差異がありそうでこれは修正案件かもしれない。


「ちょっ」

「メアリィ様、それよりも周囲に注意した方が良いぜ」


 私が彼の認識を修正しようとしたとき、周囲を見ていたザッハが警戒しながら会話に入ってきた。


「えっ、どういうこと?」

「草木に隠れていて、すぐには気が付きませんでしたが……モンスターの骨があります」


 サフィナもまた周りに意識を張り巡らせながらザッハに続く。

 言われて初めて気が付いたのだが、確かに二人の視線の先に骨らしきモノが埋まって見えた。

 しかも、この形状には覚えがある。


「メアリィ様、もしかしてこれは、ジャイアントスネークでは……」

「ボクらが出会ったジャイアントスネークとなにか関係があるのかな?」


 私が気が付いたことにマギルカや王子も気が付いたようだ。


「てことは、あいつら、ここから出てきたのか?」

「でも、骨の散らばりようから、倒された感じがします。縄張り争いでここから追い出されたにしては他に誰もいませんし、ここが巣という感じもしません」


 続くザッハの意見に私も同意見だったが、いにしえの森でいろいろモンスターを見てきたサフィナの考えに、なるほどと結論を保留する。

 改めて確認すると、確かにこの地下スペースにジャイアントスネークのような巨体が数匹暮らそうとしても、少々手狭に見えるし、巣っぽいなにかがあるようには見えなかった。

 となると、サフィナの意見が正しかった場合、彼らを倒した誰かがここにいるということになる……のだろうか。


「皆、ちょっと来てぇっ!」


 私が不穏なことを考えていると、そんなことお構いなしにいつのまにやら奥へと進んでいたシータがやや興奮気味に声をかけてきた。

(やれやれまたこの子は、好奇心に駆られて)

 一度嘆息してから、私はシータの元へ歩いて行く。すると、森の中、おそらく間取りからして中央だろう、そこに半径三メートル程の円形に広がる水たまりがあった。

 それは、周りの自然物とは異なり、明らかに人工物のようで違和感を感じる。

 そして、私達はシータが指差す水面に本日二度目の驚きを露わにした。


「全身鎧が……沈んでいる」

「メアリィ様、一つだけじゃありませんわ」


 私と一緒に驚いていたマギルカの指摘通り、鎧は一つではなく、数個存在していた。

 はっきりと分からないのは、この泉の水深が思いの他深くて暗く、なぜか光を通さないからである。


「これも憶測だけど、森で白銀の騎士のような鎧姿の人を見たという昔からの噂話となにか関係があるのかな?」

「レイフォース様の言う通りかも。一つ水の中から上げてみようかしら」


 異様な光景が続く余り、どういうことだってばよと私の中の知的好奇心が暴れ出して、不用意にも水の中へと足を突っ込む私なのであった。


「気をつけて、これは普通の水じゃないわっ」

「へ?」


 シータの言う通り、水の中へ突っ込もうとした足が沈むことなく水面に浮く。明らかに普通の水じゃない。さらに、その波紋が中央へと広がり、中心部で二本の水柱が噴き上がった。

(あぁぁぁ、気をつけていたはずなのに、やってしまったぁぁぁっ!)

 詰めの甘さがここにきて出てしまい、私は心の中で絶叫する。

 噴き上がった二本の水柱は物理法則を無視して曲がりくねり、先端同士がぶつかり合って一つのアーチを作り出す。そして、渦を巻きながら凝固していった。


「な、ななな、なにが起こったの?」

「おそらく、セキュリティーが作動したんだと思うわ」

「セ、セキュリティー? なんで?」

「いや、だって私達不法侵入だから」

「え? シータがちゃんと開けて、入り口から入って来たじゃん」

「うん、強引にねっ♪」


 焦る私の疑問に「テヘ♪」と可愛く舌を出しておどけるシータ。遅かれ早かれこうなる運命だったのだろうが、やらかした手前、私からは非難できない。


「メアリィ様、気をつけてくださいっ! あのアーチの中、変ですわっ」


 マギルカが言う通り、凝固した水柱のアーチの中は向こう側がボヤ~として、なにか透明な膜ができているような感じであった。

 SF風に言うなら空間が歪んで見えるといった感じだろう。


「これも、妖精の成せる技なのね。全く、妖精はここでなにをしていたのやら」

「ううん、妖精はあくまでシステムの一環であって、この施設は妖精を利用して誰かが作ったモノなのよ。古代カイロメイアの技術と妖精との魔道具化、こんなことオルトアギナ様だってしてないはず」

『そりゃまぁ、妖精というのは胡散臭くて信用ならんからな。なにせあのクソガの配下だぞ、利用したくもないし、関わりたくもない』

「待って、二人とも。ということは、ここを作ったのはエルフってコトォ?」


 シータとオルトアギナの会話を聞いて、私はかつての「妖精の悪戯」という事象を思い出し、この結論に至った。なぜなら、妖精を利用し魔道具を作るのは私の知る限りでは一種族しかいないのだから。

 白銀の騎士を追っていたのに、エルフの話になってきて、私は見当違いな所に来ちゃったのではないかと心配になってくる。

 今までの推測が正しいのなら、白銀の騎士っぽい目撃情報も、月見草関連も、ついでにモンスターの件も全てこの施設に関わりがあるように見える。だが、この施設が白銀の騎士となにか関係があるのかというと、今の所そのような物的証拠は見受けられない。

 私があ~だこ~だと思案していると、事態に変化が訪れる。

 もしかしたらと予想はしていたけど、只の空間のはずだったアーチの中からヌゥッと何かが現れ始めたのだ。

 カイロメイアで無くなった大書庫塔の天辺が異空間から現れていたのを見ていたので、これもその理論と同じなのだろうと思う。とにかく、目の前の施設はオルトアギナに匹敵する技術力であることは確かなようだ。


「皆、気をつけて。何か出てきたわっ!」


 私は後ろの皆に声を掛ける。

 幸いなのは最初の一歩が私だったおかげで先陣を切ることができたことだろうか。

 そしてゆっくりと現れた物体。そいつは全長三メートルは超える巨人だった。

 いや、生物とは違う。

 その体は鉱石のような材質でできており、私にはよく分からない文字が全身に刻み込まれていた。

 しかも、その文字は光り輝き、その光が表面を照らして虹色に反射している。

 造形的には人が痩せ細ったようなヒョロッとした感じだが、その首は頭二個分ほど長く、胴も人より長く、異様な感じだった。顔の造形が作られておらず、のっぺらぼうなのも不気味でしょうがない。

 さらに、自身と同じくらいの大きさの一振りの大剣が私の警戒心を掻き立ててきた。


「あの輝きは、もしかしてミスリル鉱! ミスリルの巨像にいくつかの魔法を付与した感じなのね。すごぉぉぉい、ミスリル鉱をあんな風に加工できるなんて、たいした技術だわっ」


 一目見ただけでアレがなんなのか看破するシータの知識と観察眼には感服するが、そんなに嬉しそうにはしゃがないでくれますかとツッコミを入れたくなってくる。


「これはもしかしなくても、ココの惨状を築いたのはアレってわけ?」


 おはしゃぎになっているシータに私はとりあえず確認してみる。


「でしょうねっ! おそらく、ここの番人よ」


 力強い返事に、私は溜息しか出てこなかった。

(うぅ~ん、おかしいぃぃぃっ! 調べれば調べるほど、違う、そうじゃない感が大きくなってくるんだけど。はぁ~、心折れそう……)



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[一言] まあ妖精だからで説明がつく存在が妖精だからなあ
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