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どうやら私の身体は完全無敵のようですね  作者: ちゃつふさ
第2章 学園編 四年目
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おや、マギルカの様子が……

 

 魔鏡が不発に終わった翌日は、受ける授業がなく私はお休みだった。なのでさらに次の日に、私は学園に来ている。

(四年生になるとこういったことがあるからな~。あ、そういえば今日はマギルカ、お休みだっけ?)

 などと考えながら私は思いの外早く授業を終えてしまい、手持ち無沙汰に旧校舎の談話室へと向かう。誰かいないかな~と淡い期待を抱きながら私は扉の前に立ち、ノックをした。

「どうぞ」

 すると、中から意外にもマギルカの声が聞こえてくる。

(あれ? マギルカお休みじゃなかったのかしら)

 私が首を傾げていると、テュッテが静かに扉を開けてくれたので私は考えるのをやめて中へと入った。

 中には予想通りマギルカが立っており、それ以外の人はいない。

「マギルカ、今日はおやっ」

「あぁぁぁん、メアリィ様ぁ~ぁ」

 私を確認するなりマギルカが駆け寄ってきて、事もあろうか私にハグしてきた。しかも、声質がとっても甘えん坊である。

「ど、どどど、どうしたの、マギルカ?」

「はい? なにがですか」

 私にスリスリしながらマギルカが聞いてきた。

(あっれ~? マギルカはこういうスキンシップは嫌がるというか恥ずかしがる方だと思ってたんだけど。自分からするのは良いのかしら?)

 マギルカが恥ずかしがるのを知っててくっつく私も私だが、とにかく、彼女が進んでくっついてくるのは珍しかった。

 クラスマスターの責務から解放されたので、ちょっぴり自分に正直になったのだろうか、それなら私も協力しないこともない。

「……あぁぁ、メアリィ様の高貴な香り……はぁはぁ」

(きょ、協力……しないことも……な、い)

 顔を赤らめ、くっついていたマギルカが鼻息を荒くしてス~ハ~ス~ハ~しながら呟いた言葉に私の考えが揺らぐ。

「マ、マギルカ、今日は学校お休みじゃなかったっけ?」

 私はスススッと後ずさりながらマギルカから離れて、話題を振る。

「お休み?」

 私の問いになぜか疑問形で返してくるマギルカ。口に手を添え、小首を傾げる様は可愛らしい。

「そうでしたか? メアリィ様のことで頭がいっぱいでしたから忘れてしまいましたわ」

 あっけらかんと言うマギルカに、私はなんかいつもと雰囲気が違うような気がしてきた。なんというか、賢そうないつものマギルカではなく、失礼ながらアホの子に見えなくもない。

 と、私はマギルカの頭上でミョンミョンするモノに気が付いた。

(アホ毛だっ! あれ? マギルカってアホ毛なんてあったっけ?)

 私は記憶を探るがそんなものがあった記憶がない。とはいえ、今後もないというわけではないので、偶然か、それとも意図的にマギルカがセットしたのだろうか。

(もしかして、お洒落か? いや、寝癖とか……う~ん、マギルカ的に後者はないよね)

「メアリィ様とお話ししたくて、まだかまだかと待っておりましたの。ささ、お座りになってくださいまし♪」

 私がアホ毛案件に思考を巡らせていると、そんなのお構いなしにマギルカが私の腕に自分の腕を絡ませて、歩きだす。

「え、あ、ちょっ、あれ?」

 もう決定事項のようなその態度に、私はマギルカにしてはらしくないと戸惑いを隠せないでいた。いつもなら同意を得てから行動するはずだ。随分我が儘というかなんというか、予想外の行動に焦りながらも、私はちょっと可愛いかなと思ってしまう。

(フフフッ、このパターンだとこのまま断ったら意外にもマギルカ拗ねちゃうかも。ハハハッ、あのマギルカに限ってそんなこと……)

「ちょっとまって、マギルカ」

 それはそれで見てみたいと思い行動に移す意地悪な私。私が足を止め、絡められた腕を解くと、マギルカがポカーンとした顔で私を見てきた。

 

 そして、涙ぐむ。

 

 それはもう、号泣寸前だった。私に拒絶されたと思ったのかこの世の終わりみたいな絶望顔をしている。

「メ、メアリィ様が……私を拒絶、しま、しま……」

「わぁぁぁ、ごめん。別に嫌じゃないのよ。ただ、えっと、ほら、ね? なんというか、そのぉ~、魔が差したというか」

 予想をぶっちぎって斜め上の結果に私は慌てふためき、言い訳しようとしたが良い言葉が思い浮かばない。

「……つまり、メアリィ様は私に意地悪をしたのですか?」

「えっとぉ~、うん……ごめん」

「…………」

「……マギルカ? 怒ってる?」

「えへへ、良かったですわ。私、メアリィ様に嫌われてしまったのかと思いましたの」

 普段はあまり見せたことのないような柔らかい笑顔を見せるマギルカに不覚にも私は見惚れてしまう。

(可愛い……とはいえ、私に対するマギルカの想いが重いような気がするのは気のせいだろうか)

「メアリィ様に嫌われてしまったら、私もう生きていけません。自害するところでしたわ」

(重い、重い、重い、重い)

「はははっ、またまたぁ~、ご冗談を~」

 空気が重くなってきたので私は空笑いしながら場の空気を和らげる努力をし、この話はもう終わりと暗に示すようにマギルカから離れて席に着いた。そんな私の態度にマギルカがどういった表情をしているのか、怖くて確認したくない自分がいたりする。

(う~ん、なぁ~んか今日のマギルカは変というかなんというか、おかしいような気がする。とはいえ「あなたおかしくない?」なんて失礼すぎて聞けないわよね)

 席に着いて私は部屋を見つめながら考え込んでいると、いつもなら向かいに座るはずのマギルカが隣に座ってきた。

「え?」

「?」

 思いがけない行動に私は驚きの声を小さく上げてマギルカを見ると、彼女はその行動がさも当然のような顔でこちらを見てくる。

(気にしないでいこう。気にしたら負けなような気がする)

「えっとぉ、あ、けっ、研究レポートどうしよっかなぁ~。別のを検討してみようかしら」

 あれだけ盛り上げといて鏡が不発に終わったので、私はテーマを変えようかなと考えていたことを思いだし吐露してみる。

「なにかないかしら、マギルカ」

 変えようと思いながらも、シレッとマギルカに別案を求める他力本願な私。

「さあ?」

「…………」

 こちらをニコニコ顔で眺め、というかガン見でマギルカがあっけらかんと返してくるので、私は口ごもる。

(そ、そうだよね。自分のことなんだから他人に頼っちゃダメだよね)

 他力本願な自分を反省しつつ、私はなにをしようか思案してみることにした。

「う~ん、どうしよっかな~。新しいものを発見するとかそういった大それた事は遠慮するんで、なんかこう無難な奴を……」

 私は思案しつつも考えが纏まらなかった。というのも、お隣のマギルカがさっきからなにも言わずひたすら私をガン見だからである。

「……そ、そうだわ。他の人になにをするのか聞いて参考にしてみるってのはどうかしら。ねぇ、マギルカ?」

「良いんじゃないですか?」

 即答してくれるマギルカであるが、なんか考えてからの発言には聞こえなかった。普段の彼女ならもうちょっと思案してから答えてくれるような気がする。

「お嬢様、他の方が赤の他人に研究中のことを話すとは思えませんが。最悪、盗作される可能性もありますし」

 私がマギルカの態度に疑問を感じていると、後ろからテュッテが囁いてくる。

(なるほど、一理あるわね。だからマギルカもあまり話さなっ……あれ? じゃあこの前マギルカはなんで私に話していたんだろう。赤の他人じゃなかったから? 私のため? じゃあ、なんで今は?)

 考えれば考えるほど私の頭の上にはてなマークが浮かび上がる。

「そんなことよりも、メアリィ様はこの後授業はないですよね。でしたら、私とお買い物に行きませんか?」

「買い物? いきなりね。う~ん、でもな~、レポートとかあるし」

 いきなり学業よりも遊びを提案してくるマギルカに驚きつつも、私が渋っているとあからさまにマギルカが不貞腐れていくのが分かった。

「マ、マギルカ?」

「ブウゥ~、メアリィ様は先ほどからレポートレポートと、勉強のことばかり。私とお話する気はないのですか?」

「いや、学生というのは勉強が仕事でしょ? 学園にいるうちはそれを重視しないと」

 自分でも頭かったいこと言ってるなぁと思いつつも、普段はマギルカが言うような台詞を私が言っていることに違和感を覚えてしまう。

「もぉ~、メアリィ様は私と仕事、どちらが大事なのですか?」

(うぉっとぉ、あの「どっちが大事なの」を問われる時がくるとは思いもしなかったわ。しかもマギルカに)

 恨めしそうにこちらを見てくるマギルカに冷や汗垂らしながら、私は返答に困る。

(これはマギルカ的なジョークかしら? 彼女がそんな選択肢を迫るわけないものね。ここで仕事とか答えたら、まさかまた泣かれるとか?)

 それはそれで見てみた……くはない。先の発言通りほんとに自害されたり、もしくはヒステリックになられたら大変そうだから。

「お嬢様、もしかしたらマギルカ様は学園内だけではなく、王都という違った視点から模索してみてはどうかとおっしゃっているのではないでしょうか?」

「なるほど、一理あるわね」

 テュッテの指摘に思わずポンッと手を打つ私。なら、こんなまどろっこしいことをせずに直接言えば良いと思うのだが、マギルカにはマギルカの事情があるのだろうと勝手に解釈してみる。

 というわけで、答えは決まった。

「仕事っ!」

「メ……メアリィ様……」

「え、あ、あれ? で、でもでも、王都には行くわよ。さぁ、行きましょう、すぐ行きましょう。ねっ、マギルカ」

 自信を持ってご提供した返答に、マギルカが絶望顔を披露してくるので、私は慌てて自分の考えを教えると、彼女の手を握って席を立たせる。

 こうして、私達は王都へと向かうのであった。

 まさか、あんなことが王都で待ち受けていようとはこのときの私には思いも寄らなかったが……。


コミックウォーカー様より「どうやら私の身体は完全無敵のようですね」のコミカライズ第19話更新されました。メアリィ様も三年生です。さらに、コミックス第三巻が10月9日に発売予定ですので皆様よろしくお願いいたします。

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