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どうやら私の身体は完全無敵のようですね  作者: ちゃつふさ
第2章 学園編 三年目
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唸れ、我が妄想力!

 王子が元の姿に戻ったのをある意味しっかりと確認した私はバクバクと高鳴る鼓動を落ち着かせるのに数分必要としていた。

「なぜ、どうして、麗しのお姉様が……」

「あぁ、天は無慈悲だ……運命だと思ったのに……」

 そして、未だ現実を受けとめられないヴィクトリカとシュバイツが両手両膝を地面につけて項垂れていた。

 まぁ、予てから散々言っていたのに信用しなかった二人が悪いので放っておくことにする。

「レインさ~……殿下、そのサークレット、どうなさるおつもりで?」

 いち早く復活を成し遂げたマギルカが王子に声をかけていた。彼は持ってきていた簡素な服とマントを羽織って体を隠している。さすがに今まで着ていたドレスを着るのは本人的にも無理があるそうだ。髪は長いままなので、まだレイン様の面影が残っている。

「うん、なんかね、持って帰るよ。そうしたいんだけど、シェリーさん、良いかな?」

「は、はひぃぃぃっ! お、おおお、王子殿下のお心のままにぃぃぃっ」

 王子が笑顔でシェリーの方を見ると彼女は地面に額をこすりつけて跪いていた。いや、あれはもう土下座に近い体勢だ。

 ちなみにシェリーがあんな感じになったのは王子が元に戻り、彼が第一王子だと知ってからである。

 エルフと王国とは密な関係を築いているわけではないが、一国の王子が今回の件をシェリーに非があると抗議すれば、さすがに村のお上が動き、シェリーに対して旅などさせるのではなかったと旅を禁じてくる恐れからの低姿勢である。

「うぅぅぅ、そもそもなぜお姉様が……ハッ、もしかして駆けつけた時にお姉様のそばにいたあのヒュドラと関係しているのではっ」

 項垂れていたヴィクトリカがまたあさっての方向に変な解釈をして、ガバッと起きあがった。

『ちょ、ちょっとちょっと、それは誤解っすよ。私はむしろメアリィのせいで儀式の贄になるところだったんすからっ』

「はぁ~い、ちょっと黙ろうか、ヒュドラちゃん」

 幸か不幸か、ヒュドラもまた高位な存在らしく、スノーのように魔法でしゃべるその言葉は聞こえる者を限定し、ある程度の魔力を有した存在だけになっているらしい。

 まぁ、そのある程度というのが私には大問題レベルの水準だったが……。なにせ、ヴィクトリカですら聞こえないレベルなのだから。

(この世界はかくも不思議なものね。あんな高位な存在の魔法の言葉は聞こえるのに、さっきからチュゥチュゥとなにかを言っているんだろう、このモフモフ鼠の言葉は分からないときたものだから)

 私はそう思いながら、さっきからこの大きなハムスターのヌイグルミみたいな大鼠を抱きしめ、そのモフ味を堪能している。スノーやリリィとは違ってちょっと堅い感じの毛がまた良い感じであった。

 合流してきたマギルカ達がその王鼠は危険だと言っていたが、随分と大人しいもので私の言うことなら何でも聞いてくれるっぽい。

 それを見た皆が、最初は惑ったがすぐに「まぁ、メアリィ様だから」と言って受け入れている。解せぬ……。

 遅れて駆けつけて来たロイの話では、現在は王鼠の命令が無くなり大鼠達は統制を失ってオロオロしている中、地上に取り残され放置されてしまった骨竜がやけになって大暴れしたせいでかな~り大鼠の数が減ったそうだ。ほぼ全滅といっても良いレベルらしい。だが、森にも損害が出たというので、明日飼い主の管理責任として私はヴィクトリカを日光浴の刑に処す所存である。

「ええい、さっきからうるさいですわよ、王鼠。聞いてれば王の威厳をかなぐり捨ててその女に媚を売るようなことばかり言って気持ち悪いですわ。黙ってモフられてなさい。殺されなかっただけでも光栄に思いなさいよね」

 そのヴィクトリカがなんか怪しい笑いを見せると王鼠とやらがガタガタ震えながら大人しくなる。

 地上でいったいどんなことが繰り広げられていたんだろうと私はそこら辺も含めて後でマギルカに聞くことにした。

「それよりもこのヒュドラですわ、どういうことか説明してもらいましょうか。お姉様が男になったこととヒュドラの関係を」

「だからぁ~、それはシェリーさんが」

「うわぁぁぁ、あははは、メアリィちゃん、何言おうとしているのかなぁ~。もっと冷静になろうね」

 冷静でないのはそっちだろと言いたいが、後ろから口を押さえられてしまいモゴモゴするだけに終わる私。

 自分が原因であることは兄のシュバイツにも聞かれたくないのかもしれない。

「そもそも、なぜあのヒュドラがこんなに大人しいのですか?」

「……それはメアリィさっ」

「うわぁぁぁ、あははは、フィフィさん、何言おうとしているのかしらね~、もう」

 ヴィクトリカがヒュドラを見上げながら素朴な疑問を投げかけると、フィフィが答えようとして、私は先ほどのシェリーみたいに彼女の後ろから口を押さえてモゴモゴさせる。

 人には伝えてほしくないことがあるのだと私はシェリーの気持ちを痛いほど理解し、ここはなんとしても誤魔化すことにした。たとえでっち上げであろうとも……。

(うおぉぉぉっ、唸れ、私の妄想力。今回の件をできるだけ綺麗な話にまとめ上げるのよぉぉぉっ! それが嘘八百だろうともっ)

 私は前世の記憶をフル活動させ、ベタでもお約束でも何でも良いから今回の件をマルッと綺麗に終わらせるお話を作り上げようと試みた。

「……皆には黙っていたけど、いまこそ語りましょう。今回の『黄金の姫』と『ヒュドラ』の悲しくも美しい物語をっ!」

 私の宣言にオオオッと期待に胸膨らませるヴィクトリカとシュバイツ。そして、それ以外の皆は「はい?」と首を傾げているが私は見なかったことにして語るのであった。

「どうやら私の身体は完全無敵のようですね」書籍第4巻が2019/4/27に発売いたします。イラストを担当していただいたふーみ先生のレイン様の見目麗しいお姿を堪能してくださいませ。ご購入よろしくお願いいたします。

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