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お出かけですよ

ブックマークや評価、ありがとうございます。


「月見草祭り…ですか」


「そうだ」


 父と一緒に朝食を取った後のお茶をしていると、彼は私にそんな話を持ちかけてきた。


「月見草は森の中にあって5年に一度、満月の夜だけ開花する神秘的な花なのです。それを見にいろんな人たちが近くのエネルス村へとやってくるのですよ、それを村興しとしてお祭りにしているのです」


 紅茶を足しつつ、テュッテが補足してくる。


「その開花の時期が今年という事ですか、お父様」


「ああ、私の領土内で行われる行事というのもあるが、お前もそろそろ外の世界をいろいろ見てきてもいいのではないかと、アリエスがいうものでな…私は反対なのだが…」


 何となく歯切れが悪いのは、また反対して「お父様、大嫌い」と言われないかと心配しているからだろう。


(これは面白そうなイベントね。私、お祭りとか一度も行った事ないから興味あったのよ、他の子達とかも呼べるのかしら?)


「お父様、お友達を誘ってもよろしいでしょうか?」


「ん?ああ、かまわないぞ。大いに呼びなさい」


「ありがとうございます、お父様」


 私は満面の笑みを父に贈ると、彼はデレ~と鼻の下を伸ばしたが、すぐに元に戻った。


(それじゃあ、今度鍛錬の時にザッハとマギルカに聞いてみようかしら)


 鍛錬の時間にザッハが顔を出してくるのはもはや当たり前レベルになったのだが、驚くことにあの魔法使用事件以来、マギルカまで私の学習風景を見学したいとチョクチョクこちらに顔を出すようになったのだ。引き替えに、いろいろ本を持ってきてもらえるので文句はないが。


(私なんか見てても、何も得られないと思うんだけどね、私のほとんどが神様がくれたチート能力だし)


 そんな事を考えながら、私は二人が訪れるだろう時間まで待つことにした。


――――――――――



「月見草祭り…そういえば、そんなのあったなぁ」


「それで、私もそのお祭りに行くんだけど、二人もどうかしら?」


 昼下がり、いつもの中庭で二人が揃ったところで話を振ってみた。


「え~、拳闘大会とかあるなら考えるけど、花を見に行くだけだろ」


「も~、ザッハ様…月見草祭りはそんな物騒なお祭りではありませんよ、その神秘的な光景を前にカップルが告白する場所として利用するロマンチックな場所なんですから。開花したその前で告白すると永遠に結ばれるとまで言われているんですよ、だから、お祭りには結構な数のカップルが訪れてくるのです」


 ザッハの身も蓋もない物言いに、テュッテがはふ~っと甘いため息をつきつつ、訂正をいれてきた。


「…ちょっと興味ありますわね…」


 それまで黙っていたマギルカが思案顔で賛同してくる。


「あら、マギルカがそんなロマンチストだったなんて意外ね」


「5年に一度開花するという生態に興味ありますし、月見草は所謂、魔草の類だからもしかしたらほんとに何かしらの効力を発している可能性がありますわよ。是非とも持ち帰って研究してみたいですわ」


(ごめん、全然ロマンチストじゃなかったよ)


「それじゃあ、マギルカだけついていく?ザッハさんはお留守番ということで」


「え、俺だけ!それはそれでなんかイヤだな…何か面白いことがあるかもしれないしついていくぞ、俺も」


(ふふ~ん、このさみしんぼめ)


 私はクスッとザッハを見て微笑むと、それに気づいた彼は、なんだよ、と顔を赤くしてそっぽ向いた。


「それじゃあ、当日のお祭りよりも早めの日に私の別荘に行くから準備しておいてね」


 私はそう言って、来るお友達とのお出かけイベントにウキウキしていた。それがまさか、あんな事になるなんて、その時の私には気付く余地もなかったが…


――――――――――


「やぁ、メアリィ嬢」


 そして、出発当日、私の予期せぬあんな事が起こった。私の屋敷前にはお忍びの偽装なのかあまり豪奢でない馬車から下りてきた金髪の少年が目の前にいる。


「レ、レイ、フォース様ぁあ」


 久しぶりに見る彼と、王族へのプレッシャーが私の緊張をマックスにする。不意打ちによるモノが一番大きいが…

私はアワアワとしながらも最高の礼をし、この状況を誰か説明してと周りを見ると、お友達二人と一瞬目が合い、そして二人とも目を逸らした。


(くぉらぁぁぁっ!逃げるなぁぁぁ!どういうことか説明せんかい!)


「まぁまぁ、メアリィ嬢。そんなに二人を睨んであげないでよ。無理を言ったのは僕なんだし」


 私の二人にかける無言のプレッシャーに気がついたのか、王子が申し訳なさそうな顔で彼らを庇ってくる。


「お恥ずかしい所をお見せして申し訳ございません。レイフォース様が同行なさるなんて聞いておりませんでしたので、気が動転してしまいました」


「うん、僕も二人から月見草祭りの話を聞いてね、是非とも僕も行きたいなっと思って同行する旨を伝えようと言ったら、二人が当日キミを驚かせるために内緒にしておこうと言ってきたので、そのままにしておいたんだが…ほんとに伝わらなかったようだね」


(あいつらぁ…言ったら私が祭り行きを中止するって分かってて、あえて黙ってたわね、ていうか、二人揃って王子にバラしやがったんかい!)


 もう一度、私がキッと二人を見ると、サッと二人は綺麗に顔を背けた。将来は王子の元につく宮廷騎士と魔術師の二人が、私より王子との接点が多いということに失念していた自分にも落ち度はあるが、これは難儀な旅になりそうだった。


(しかも、私主催のイベントだなんて…あぁ、胃が痛い…)


「はあ~ぁ…まぁ、ここでしゃべっていてもしょうがないことですから、早々に出発いたしましょう」


 深いため息をつきつつ、私は出発の準備を双方に促すと、従者たちが一斉に動き出した。

いざ、月見草祭りが行われる、エネルス村へ!


(きっと村長さんなんかは、卒倒するんだろうな~ぁ)



今回、話が短くてすみません。ここまで読んでいただいてありがとうございます。

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