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どうやら私の身体は完全無敵のようですね  作者: ちゃつふさ
第2章 学園編 三年目
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決戦! 最古にして最強の吸血鬼

「このダンジョンを通らないとブラッドレイン城へは入れません」

 アリス先輩の案内のもと、私達は今、作りの凝ったダンジョンの入り口に立っていた。

 ふと、入り口にレリーフが飾られ、文字が彫り込まれているのに気がついた私はおもむろにそちらを見る。

「何か書いてあるわね。このダンジョンに入りし者に呪いあれっとかいうベタな警告文かしら」

「えっとぉ、『ようこそブラッドレイン城へ! さぁ、楽しいアンデッドダンジョンがキミを待ってるぞっ』……だそうです」

 私に釣られてテュッテが文を読み上げると、その予想外な文章に私は半眼になり、テュッテはそんな私を見ながら困った顔をする。

「なにをしているのですか、メアリィ様。早く行きましょう」

 ここに来て俄然やる気を出しているアリス先輩に急かされ、私はモヤッとした気分のままダンジョンに向かって歩きだした。

「アリス先輩……随分と積極的ですね」

「そりゃあもう、ここにはアンデッド達が闊歩しているのですもの! 落ち着けと言う方が無理ですふわぁぁぁっ!」

 入り口から一歩、興奮気味に入ったアリス先輩がこちらを見てそう言うと、それに合わせるようにガタンッと音が鳴って、アリス先輩が進もうとした床が開いた。

 そして、何事が起きたのか理解する前にアリス先輩が私の視界から綺麗にフェードアウトしていく。

「ア、アリスせんぱぁぁぁい!」

 やっと私は落とし穴がダンジョンに入ってすぐに仕掛けられていたことに気がつき、慌てて抜けた床を覗きこむ。

「って、最初の一歩で落とし穴トラップってちょっと陰湿すぎないっ! ダンジョンを攻略する前の緊張と高揚に浸る人のことをもうちょっと考えてよ、運営さん! バグよ、バグ、修正して」

「あの、お嬢様。今はそんな訳の分からない文句を言っている場合ではないと思いますが……」

 私のあさっての方向への非難にテュッテが静かにツッコんでくる。

「あ、そうだったわ。アリス先輩を助けないと」

 私は再び抜けた穴を覗きこむと暗くて底が見えなかった。

「大丈夫ですわ、メアリィ様ぁぁぁっ! 落下を受け止めるためのクッション代わりにスライムがいて怪我はありませんわ。それと、底は部屋になっていますっ」

 底の方からアリス先輩の声が響いてきて、私は彼女の無事を知ってホッとする。というか、落下した先にクッションってなぜ安全性を気にするんだ、このダンジョン。

「なっ、そんなぁぁぁっ、こんなところにとんでもない罠がぁぁぁっ!」

「ア、アリス先輩っ!」

 その時、アリス先輩の叫びが響いてきて私は思わず叫び返す。

「あぁぁぁん、なんてことでしょう! スケルトンが、スケルトンがいっぱいで~すわぁぁぁっ! あ、どうしたのです、なぜ逃げるのです。あぁぁん、お待ちになってぇぇぇん」

 暗い底からハートが飛び交いそうな甘ったるいアリス先輩の声が響いてきて、私はん~と唇を引き結び、無言になってしまった。

「アリス先輩は大丈夫そうね。彼女なら自力で脱出できるでしょう」

「え? よろしいのですか、お嬢様、それで……」

「大丈夫よ! 私達はアリス先輩を信じて先に進みましょう!」

 私の決断に少々異を唱えてくるテュッテを強引に説得し、私はダンジョンの奥を見る。正直言って、ここを踏破するのは面倒くさそうだ。

 空から城へと入る手もあるのだが、それは少々無理だと私は来る途中に思い知らされている。

(深い霧と大量の飛行モンスターに襲われてちゃ、私はともかく他の皆が危険よね)

 故に私達は地に降り立ち、このダンジョンの前にいるのだ。

「リリィ様、どうかしましたか?」

 さて、どうしたものかと思案しているとテュッテがダンジョンの奥とは違う方を見て言ってくる。

「ん? リリィ?」

 私も釣られてそちらを見ると、リリィがダンジョンの入り口前にいて、ダンジョンの前方ではなく左方向を見ていた。

「どうしたの、リリィ?」

 私は振り返りダンジョンの入り口から離れると、リリィが見ている方を見つめる。

「…………」

 そこには一匹のゾンビがいた。入り口横の壁に向かってゴソゴソとなにやらし終わると、私達に興味なくそのままどこかへ立ち去っていく。

「……なに、あのゾンビ? なにしに来たの?」

「……あっ、お嬢様。何か看板が掛かっております」

 私がゾンビが立ち去った方をずっと眺めながら呟いていると、テュッテは先ほどのゾンビが何かをしていたところに木の看板がぶら下がっているのを発見して、私に告げてきた。私は気持ちを切り替え、看板の前に立つ。

「何か書いてあるわね。えっと、『こちらにダンジョンの抜け道となる隠し扉があります。お急ぎの方はご利用ください』」

「「『…………』」」

 私達は数秒、無言になった後、黙ったまま隠し扉の開閉スイッチを探すのであった。

 

 

 

「なぜそちらから出てきますのぉぉぉっ!」

 薄暗い通路を歩いて階段を上がった先は大きな広間だった。

 そして、私達が上がってきた階段の先に背中を向け、違う方の出口を見つめているヴィクトリカとオルバスに声を掛けた後の彼女の開口一番の台詞が先ほどの絶叫になる。

「なぜってあなたが隠し通路のこと教えてくれたんじゃないの? ゾンビがご丁寧に看板つけてくれたわよ?」

 なぜそんなに驚いているのかよく分からず、私は首を傾げながら正直に起こったことをヴィクトリカに伝えた。

「……オルバァァァスゥッ! あれは客人用の誘導であって今回は違うでしょうがぁぁぁっ!」

 何かに思い至ったのかヴィクトリカは後ろに控えていたイケメン執事に詰め寄っていた。

「はい。ですが、お嬢様。ゾンビに客人かそうでないかの判断ができないから、とりあえず誰か来たら看板を出しておけとご命令なさったのはお嬢様ご自身です」

「ぐおぉぉぉ、そうでしたわ。あまりに昔のことでしたから忘れていましたわぁぁぁっ! 平和すぎて客人以外この城に一度たりとも来なかったから、もうそれでいいやといい加減な命令をしてしまったままでしたわぁぁぁっ!」

 さわやか笑顔に優雅な素振りで答えるオルバスの言葉にヴィクトリカが頭を抱えて絶叫している。なんだか面白いのでしばらく眺めていることにする私。

「……何だか私、オルバス様が他人のようには思えなくなってきました」

 なにか通ずるものがあったのか後ろに控えていたテュッテがポロッと呟いた。

「ん? それはどういう意味かしら、テュッテさん」

「え、あ、いえ、別にヴィクトリカ様とお嬢様のやらかしっぷりが似ているなぁ……なんて、思っていませんよ。ええ、ちっとも」

 私はその呟きに対して笑顔でテュッテを見ると、テュッテは慌てたように弁明する。

「ホホォ、このメイドはまたあのくすぐり地獄をご所望なのかしら?」

 私は両手をワキワキしながらテュッテににじり寄っていき、テュッテはあの地獄を思いだしたのか顔を青ざめ後ずさった。

『ちょっとぉ~、あなた達行動パターンが似てるわよ』

 呆れたように私達を見ていたスノーがそう言って、顎を使ってヴィクトリカを見ろと私に言ってくる。

 私は何よっとヴィクトリカを見れば、彼女もまた何か口を滑らしたのか言い訳するオルバスに向かって両手をワキワキしながら詰め寄っていた。

「…………オホンッ!」

 私はワキワキしていた手を下ろすと、大きく咳払いをする。

 私の咳払いが聞こえたのか、ヴィクトリカも動きを止めるとコホンと咳払いをし、姿勢を正した。

「まぁ、過ぎたことをどうこう言っても仕方ありませんわ。とりあえず……」

 そう言ってヴィクトリカは私達の方を見ると自身の眼帯に指を添え、ビシッとポーズをとった。

「よぉ~こそ、ブラッドレイン城へ。くっくっくっ、さすがは白銀の聖女、私の想像の斜め上をいきますわね」

「いや、いってない、いってない。あなたが自爆しただけだから」

「~~~~ッ!」

 格好良く仕切り直すヴィクトリカに水を差す私。そんな私の仕打ちに顔を真っ赤にして涙目になるヴィクトリカであった。

「わぁ~、ごめんね! そ、それよりもレイン様はどこなの? 彼女は無事なのでしょうね」

 今にも泣きそうなヴィクトリカを見て私は慌てて謝罪すると話を進めることにする。

「え、ええ、丁重におもてなししておりますわ。そして、あなたのお仕事はここまでです。もう帰ってもよろしいですわよ。後はこの私、ヴィクトリカ・ブラッドレインが引き継ぎますわっ」

 私が話を進めたのが嬉しかったのか、一瞬ヴィクトリカはパァッと笑顔になるとすぐにキリッとした表情になった。なんて分かりやすい子なんだろう。

「引き継ぐって……あなた、何をすべきか分かって言ってるの?」

「ええ、もちろんですわ。全てはあのサークレットです」

「えっ……ど、どうしてそれを……レイン様から聞いたの?」

 何も知らないだろうと思っていたヴィクトリカがいきなり核心をついてきて、私は驚いた。

「いいえ。しかし、私の叡智にかかればそんなものすぐに理解できますわ。私はあなたより優れておりますのよ」

 勝ち誇ったようにえっへんと胸を張るヴィクトリカ。その胸は……。

(うん、私と同じくらいかしら)

 ちょっぴりホッとする私。最近、胸関係であまりの理不尽さにうちのめされてばかりだったので心が落ち着く。

「お風呂に入っても肌身外さずのところを見ると、あれは亡国の形見にして秘宝ですわね。魔力を感じるのでおそらくはあれを使ってこの地で何かを成そうとしておられるのでしょう、残された最後の姫君として。あぁ、なんて健気で気高きお人でしょう」

 私が胸について心落ち着かせている間に、ブツブツとヴィクトリカが何かを言って身悶えしていた。お風呂とか亡国とか最後とか聞こえてきたが独り言のようなので流すことにする。

「と~にかく、そんなわけであなたはもう用済みですの。さっさと領地にお帰りなさいな、お嬢ちゃん」

 ヴィクトリカは柔和な笑顔のまま私に向かってシッシッと追い払うようなジェスチャーをする。これには私もピキッと精神にヒビが入り、冷静さが失われていった。

 いわゆる「良い度胸だ。よぉ~し、その喧嘩買った」である。

「フフフッ、そんなこと言われて、はい、そうですかと帰ってはレガリヤ公爵家の名に泥を塗るようなものだわ。あなたこそ、さっさとレイン様を渡してこの城で大人しく眠ってなさいよ、お嬢ちゃん」

 私が不敵な笑みを見せるとヴィクトリカの動きが止まり、彼女も不敵な笑顔になった。

「やはり、あなたとは争わなくてはならない宿命ですのね。だがしかし、あなたに勝てる見込みなど皆無ですわ。なぜなら、私は最古にして最強の吸血鬼、ヴィクトリカ・ブラッ」

「ターン・アンデッドォォォッ!」

 昨晩のリプレイか、私はヴィクトリカの口上が終わらないうちに神聖魔法を発動させた。

「んきゃぁぁぁっ!」

 可愛らしい叫び声が噴き上がった光の柱の中から聞こえてくる。

「お、お嬢様……それはあんまりでは……」

 あまりの非道さに後ろのテュッテがどん引きしている。

「勝利のためには臆するなっ! お父様がよく言っていた言葉よ。だから私は臆することなく実行する」

 私は拳を握りしめ、勝ち誇ったように宣言した。

「いえ、旦那様はそういった意味でおっしゃったのではないと思いますが」

 テュッテのツッコミを私は聞かなかったことにし、前方の敵を確認する。光の柱が無くなると、ぜ~は~ぜ~は~と肩で息をするヴィクトリカがいた。

「やはりしぶとい。ならば、連続ターン・アンデッドォォォッ!」

「オルバスッ!」

「へ?」

 私が更なる神聖魔法を唱えると、もう完全復活したのかヴィクトリカは動きだす。そして、ヴィクトリカの後ろであの神聖魔法地獄を思いだし青い顔をしていたオルバスは腕を掴まれ、間の抜けた声をあげると、彼女がいた場所に引き寄せられ、入れ替わるのであった。

「うぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」

 光に包まれイケメン執事の悲鳴が木霊する。

「うわぁ~……」

 自分もそうだったが、向こうも手段を選ばないところに私はどん引きの声を上げる。チラッと横目で見てみれば、心なしかテュッテが息を呑み覚悟を決めたような顔をしていた。

「いや、私はしないわよ、絶対にっ!」

 戦闘中なのに思わず後ろを振り返ってテュッテに訴える私がそこにいる。

「くっ、なんて卑劣な。よくも私の執事を……」

 悔しそうにヴィクトリカは目の前で床に突っ伏すオルバスを見ながら、根も葉もない嘘をシレッと言ってきたので慌ててそちらに振り返る私。

「いやいやいや、あなたがやったんでしょうがっ!」

「……くっくっくっ、どうやらあなたは私を本気にさせてしまったようですわね」

 私のツッコミを無視して話を進めるヴィクトリカ。

「ならば、見せてあげましょう。私が封じた吸血鬼の血を今、解放しますわっ!」

 そう言ってヴィクトリカは付けていた眼帯を掴むと勢いよく引きはが……すことなく、丁寧に紐を解き大事そうに取ると、その眼帯をこれまた丁寧に畳み、ポケットに入れた。

「…………」

 あまりの落差に私は唖然となって、眺めてしまう。

「封印は解かれたっ! 目覚めよ、我が力っ!」

 再びポーズを決めるとヴィクトリカは眼帯で隠していた瞳をゆっくりと開けていく。

 その瞳はオルバス同様、黒い眼球に真っ赤に光る瞳をしていた。

(オッドアイ! うおぉぉぉ、なんか格好良いぃぃぃっ!)

 向こうのことを散々中二病だのなんだのと言っていたが、私も案外同類であった。

「我が声を聞けっ! 我が名はヴィクトリカ・ブラッドレイン! その邪悪にして深淵なる闇の力を我が前に差しだす時が来たっ! 来いっ、我が忠実なる僕よ」

「おおおっ!」

 ヴィクトリカの口上とポーズ、そして彼女を取り巻く魔法陣などの演出が私の観た中二病アニメに似ていて思わず感嘆の声を上げてしまう。

「眷属召喚っ!」

 ヴィクトリカの力ある言葉によって彼女の前に大きな魔法陣が浮かび上がる。そして、そこからヌ~ッと巨大な何かが顔を出してきた。

「ふぇっ!」

 間の抜けた声をあげる私の前にその巨体が全貌を露わにする。

『うっそでしょ、ボーン・ドラゴンですってぇぇぇっ!』

 スノーの声が私の頭に響いてきて、目の前の巨大な物体が何なのか私は理解できた。

 目の前に現れたのは全身骨だけの巨大なドラゴン。

 それがこの大きな広間でも窮屈そうにその頭を起こし、何もない真っ黒な眼孔に真っ赤な光を灯すのであった。

 いくら骨だけとはいえ、この世界では生物の頂点に立つと噂されるドラゴンである。その強さは計り知れないだろう。

 現に神獣であるスノーですらかなりビビってる始末である。

 それを眷属として使役するヴィクトリカはかなりの実力者であろうことは疑う余地もなかった。

「くっくっくっ、これが私が最古にして最強の吸血鬼と呼ばれる所以ですの。あ~、ちなみに最古というのはブラッドレイン家で、最強というのはその中でも特別に強い私のことですわ」

 余裕なのかいらん補足説明までしてくるこの最古にして最強の吸血鬼さん。

「さぁ、ボーン・ドラゴンよ。その女を相手に軽く遊んであげなさい」

「ゴアァァァッ!」

 ヴィクトリカの指示に応えるように骨竜は咆哮をあげた。

「スノー、テュッテとリリィをつれてこの場から離れ……て?」

 私が振り返って指示を出すと、そこにいるはずの神獣の姿は忽然と消えていた。そして、視線を遥か先に向けたとき、リリィを抱き抱えるテュッテの襟を喰わえて全力ダッシュするスノーの姿が確認できた。

「こらぁぁぁ、ここはテュッテ達だけを逃がして一緒に戦うところでしょうがっ!」

 私は骨竜に背中を見せ、遠く離れたスノーに向かって抗議していると、骨竜の尻尾が私を薙ぐように襲ってくる。

 

 バァァァン!

 

 大きな破砕音が大広間に響きわたり、骨竜の尻尾が見事木っ端微塵に吹き飛ぶのであった。

「「え?」」

 勝ち誇っていたヴィクトリカと一部始終を見ていたオルバスの顔がひきつったのは言うまでもない。

 なぜなら私はなんにもしていないからだ。ただ突っ立って骨竜の尻尾をまともに後ろから受け、その尻尾は私に当たった瞬間、ものすごい破砕音とともに粉々になったのだ。

 私は破砕し散らばっていく骨を振り返って静かに眺める。そして、ひきつり固まっているヴィクトリカとオルバス、そして無くなった自分の尻尾を呆然と眺める骨竜を見た。

「てへ♪」

 私はウインクしながら舌を出し、片手で頭をコツッとしてやっちゃったっみたいな顔をする。

「てへっじゃありませんわぁぁぁっ! なんですの今のはぁぁぁっ! あなた人間なのっ」

「ひど~い、私はれっきとした普通の人間よ。それよりもその竜、カルシウム不足じゃないの。それか骨粗鬆症かもよ。眷属は大事にした方が良いわよ、ヴィクトリカッ♪」

 この期に及んでかわいこぶってしらを切る往生際の悪い私。

「カル、えっ、こつそ、えっ……なんか言っている意味は分かりませんが、私が悪いみたいなこと言わないでくれますぅぅぅっ! おかしいのはあなたですからねっ!」

 誤魔化されないヴィクトリカは私に猛烈抗議してきた。私は笑顔のままヴィクトリカの元に歩きだす。途中、立ちはだかっていたはずの骨竜がササッと道を開けたのはスルーしておこう。

 私が近づいてくるものだから、反射的に後退りしていくヴィクトリカ。オルバスも固まったまま私達を見ているだけに留まっている。

「ななな、なんですの、あなたは。お、おおお、おかしいで、ぴょっ」

 なぜか怯えるヴィクトリカを壁際まで追い詰めると、私は彼女の頭を挟むように両手を壁に勢いよくドンッとついた。

 これぞ、ジャパニーズ壁ドン。

「あなたの眷属は骨粗鬆症だったのよ。骨粗鬆症っていうのはね、骨質全体が減少して、脆く折れやすくなった状態のことをいうのよ。だから、壊れちゃったの。眷属は大事にしてね、ヴィクトリカ」

 私は笑顔のまま懇切丁寧に説明し、ヴィクトリカに顔を近づける。

「ひ、ひゃい……」

 そしてヴィクトリカは私の笑顔の圧に耐えかねて涙目に頷くのであった。

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骨粗鬆症のボーン・ドラゴンじゃあ話にならないね? もっとカルシウムを食べさせて、日光浴させないと・・・・・・ 
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