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どうやら私の身体は完全無敵のようですね  作者: ちゃつふさ
第2章 学園編 三年目
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現場検証です

ここ2ヶ月、体調がすこぶる悪くなり病院通いが続いてしまって更新が滞り、誠に申し訳ございません。

 私が土壁に頭をつけ打ちひしがれていると、後ろから縄梯子が降りてくる。私はそれでようやく気持ちを切り替え、そちらを向くとスルスルと器用に王子が降りてくるところであった。

(王子ってばよくよく考えてみると何でもそつなくこなすタイプだよね。一つに特化したのではなく万能型って感じなのかな?)

 危なげない動きの王子を見守りながら、私はそんなことを思う。

「っと……メアリィ嬢、本当に大丈夫かい?」

 綺麗に地面へ降り立つと王子は再度私の心配をしてくれた。ここら辺の気配りもジェントルマンである。もしかして、将来的に王子は超モテまくりの完璧超人になるのではないのかしらと私はふと思ってしまうほど、その一つ一つの動きに無駄がない。

(これが王族というものなのかしら……いや、あのチャラ王を考えると一概にもそうとはいえないわよね~)

「どうしたんだい? メアリィ嬢」

 私が考え事をしながらジッと王子を見ているものだから、王子がその視線に気が付き、少々困った顔で問いかけてきた。

「な、なんでもありません。ささ、調査を開始しましょう」

 王子を観察してしていましたとは絶対言えない私は慌てて、その場を取り繕うと、話を進めるべく広がった場所へと歩いていった。

 中は上からの光が入っているとはいってもやはり暗く、それでいて人工的に作られた部屋を思わせる作りである。

「ライトッ」

 私は魔法を使って部屋内を明るくしてみた。

 やはりと言っていいのか何年も埋められていたのでつい最近まで誰かがいた形跡は皆無に見える。

 とはいってもあくまでそれは私の主観であり、確固たる証拠があるわけではない。

 私はもう一度部屋を見渡してみる。使っていただろう机と本棚があるがそれは古く崩れかけていた。さらに、そこに本や何かが置いてある形跡はない。綺麗さっぱりなものだった。

「今もなお誰かがここを使っているという形跡はないみたいですね」

 私は見た印象をそのまま王子に伝える。

「そうだね。何かを放置したままという感じはないみたいだ。完全に破棄された部屋……ということなのだろうかな? それにしては埋めてあるというのも変な気がするけど」

 王子の疑問ももっともだ。誰も使わない地下室というのなら、なぜわざわざ埋めてしまったのか。

(これではまるで封印したみたい……)

 私はふと恐ろしい考えが浮かび、それを否定するように首を振ってかき消す。

「メアリィ嬢?」

 私の行動に怪訝な表情で王子が見てくる。

「い、いえ、なんでもありません。机の中も調べてみましょう」

(考えすぎ、考えすぎ。最近私にとって都合の悪いことばかり続いているから思考がダメな方へ行きがちね。もっとポジティブに考えましょう。ここには何もなかった。それで良いじゃない)

 私は心の中で自分のダメな考え方を修正しつつ、これからはもうちょっとお気楽に考えようと改めながら古くなった机に近づき、そのまま引き出しを開けてみる。

 

 ゴトッ

 

 そして、引き出しの奥から出てきた不穏な箱が一つ。

(いやぁぁぁぁぁぁっ! 何か出てきたぁぁぁっ!)

 私は心の中で絶叫しながら、思わず引き出しを戻そうとしたが、古いため上手く戻らなかった。それでも強引に戻そうとしてベキッと引き出しにヒビを入れて、完全に戻せなくしてしまったアホな私がここにいる。

「箱のようだね」

 私の動揺に気が付いたのか、王子が後ろから引き出しの中を覗き込んできた。私は見なかったことにしたかったが諦めて引き出しから手を離す。

「そのようですね」

 その箱は思いの外大きく、私は両手でそれを持ち上げ机の上に置いた。 私が先ほどからこれを見なかったことにしたいと思っていた理由はその箱が綺麗すぎるからだった。周りがかなり風化・劣化しているなか、この箱だけがなぜか作りたてのように小綺麗なのである。これをただの箱と呼ぶほど私はお気楽な性格はしていない。何となく、今までの経験が「こいつはまずい」と警告してくるのだ。

「これは……何かの魔法がかかっているのかな?」

 王子もまた私が感じた疑問に気が付いたのか、少し警戒しながら箱を見ている。

「危険はないと思いますが、レイフォース様、ご注意を」

 危険な魔法がかかっているのなら私が持った時点で何かしら起こっているはずだが、そのようなことはなかったので呪いの類はないだろう。

「そうだね、これはこのまま開けずに上に持っていっ……」

 王子がふと言葉を切り、辺りを見渡した。それはまるで誰かに呼びかけられたみたいな反応である。ちなみに私には何も聞こえなかった。

「どうかなさいましたか?」

 王子のいきなりの行動に私は首を傾げて聞いてみる。

「いや、何か声が聞こえたような気がしてね……ハハッ、空耳だったかな」

 苦笑し、王子が何だか怖いことを言ってくると、幽霊でもいるのではないかと私は慌てて見渡してしまった。だが、そこは暗い密室であり、幽霊なるものは影も形もなかった。

「私達以外、誰もいないと思いますが」

「うん、気のせいだよね」

 緊張していた体を解すように私はフゥ~と息を吐き、机にもたれ掛かる。

 それがいけなかった。

 風化した机は先の私の強引な引き出し戻しの衝撃に結構ダメージを受けていたらしく私がもたれかかった重みで亀裂が走り、崩壊してしまったのだ。

(言っておくけど私が重いわけじゃないわよ。ええ、決して重いわけじゃないわよ!大切なので二度言っておくわ)

 そんなことをまず心の中で弁明しているものだから机の脚がボキッと折れ、私はめでたくそのまま床へと倒れていくのであった。

「うにゃぁぁぁっ!」

「メ、メアリィ嬢!」

 私の情けない叫びに反応して王子は咄嗟に私の手を握り、踏ん張ってくれた。ガシャンと大きな音が鳴り響き、机の上に置いてあった箱が地面に落ちる。

 だが、私はというとそれを見ている余裕など皆無であった。

 私は今、顔真っ赤で王子の胸の中にいるのだから……。

(うにゃぁぁぁ!なにこれ、なにこれぇぇぇ!おおおおおお、落ち着け、私!荒ぶる鼓動よ、静まりたまえぇぇぇ!)

 頭の中がパニックになり私は意味不明なことを考えながら心を落ち着かせようと努力する。救いだったのはここで取り乱して王子に何かしたら私の力で彼が怪我をしてしまうかもしれないと、頭の片隅にしっかり残っていたおかげで私は案山子のように硬直したままでいられたことだ。

「大丈夫かい、メアリィ嬢」

「ひゃい……お手数をおかけしましゅ……」

 王子が離れて、私はまだバクバクいっている鼓動を抑えるのに必死だった。

 だからか、王子の行動をそのまま見ているだけにとどまってしまった。彼は、落ちた箱の方を見るとなぜか誘われるようにそちらへ歩いていく。箱は落ちた衝撃で蓋が開き、中から何かキラキラするものが見えていた。

「……声がする……」

 そう呟いた王子は屈むと何の躊躇いもなく地面に落ちた箱の蓋を開けその中身を見る。一応耳を澄ませてみたが声など私には聞こえなかった。

 そうこうしているうちに王子が箱の中の物を手のひらに乗せ、立ち上がる。

 それは綺麗なサークレットだった。

 そして、私はそのサークレットを見る王子の瞳に光が宿っていないことに気が付き、鳥肌が立った。

「いけません、レイフォース様! それを捨ててっ」

 私の言葉と王子の行動が被り、彼はサークレットを捨てるどころか額に当ててしまったではないか。

 サークレットをつけた瞬間、暗い密室を照らすようにそれは輝き、一瞬視界が真っ白になる。反射的に私は薄目になり掌で顔をガードした。

 数瞬の光。

 それが収まった時、私の目の前に信じられない光景が広がっていた。

 暗い部屋に差し込まれる地上の光に照らされ金色に輝く綺麗な長い髪。クリクリとして愛らしさ溢れる大きな蒼色の瞳。プックリと膨らんだ可愛らしいピンクの唇。そして、女性を主張するような二つの胸の膨らみから、腰のくびれ、綺麗な曲線を描くお尻のライン。

 その可憐にして美しい金髪の女性の名は「レイフォース・ルクア・ダルフォード」。ここアルディア王国の第一王子、その人であった。

(え? どういうこと? 教えて、神様?)

 王子も正気を取り戻したのかその瞳に光が戻り、自分の体を見つめたまま思考停止していた。

 そうして密室の中、私と元王子はこの事態を理解できず、硬直したまましばらくの間、静かに時を過ごすことしかできなかった。

 ここで、先の冒頭に戻るのである。うん、長かった……。

(これって……私のせい、じゃないよ……ね?)


活動報告にも書きましたが書籍「第3巻」とコミックス「第1巻」が2018/8/9に発売いたします!皆様、買ってくださいね。活動報告に書影を掲載しておきました。魅力溢れるメアリィ様が二つもあって私は悶えまくりです。さらにコミックウォーカー様よりコミカライズ第7話が公開されております。いよいよ学園編がスタートしました。サフィナもついに登場ですよ~♪

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