表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうやら私の身体は完全無敵のようですね  作者: ちゃつふさ
第2章 学園編 三年目
132/288

落ち着いて話を戻しましょう

更新が止まってしまい申し訳ございませんでした。

 私の前でキラキラと光に反射する綺麗で長い金糸の髪。その長い髪がフワリと風に包まれ広がるように舞う。その下に隠れるクリッとした大きな瞳はとても愛らしく、空のように透き通った碧色がとても美しかった。

 ピンク色でふっくらした可愛い唇が引き結ばれ、その体は若干強ばっているのが私にも分かる。そして、その体のラインもまた、成長期を思わせるかのように女性特有の膨らみとくびれを強調していた。


 私の前に立つ彼女の名は『レイフォース・ルクア・ダルフォード』。


 我がアルディア王国の第一王子である。

もう一度言おう。第一お・う・じがそこに立っていたのだ。

(え~と、ど、どうしてこうなった? 落ち着け、私。冷静になって思い出そうか)

 あれはそう、私が前世、病室で息を引き取り、この異世界へ転生して……。

(って、戻りすぎよぉぉぉ! 落ち着け、マジ落ち着けメアリィ!)

 私はス~ハ~と大きく深呼吸すると、時を遡るように意識を集中する。事の発端はそう、数時間前のことだったはず。

 

 

「学園の探索ですか?」

 いつもの談話室でまったりとしていた私は王子に呼ばれて、隣の部屋を訪れると、彼は私にそう告げてきたので、思わず聞き返してしまった。

「探索……まぁ、そういうことになるのかな?」

 王子もまた少し困った顔をして答えると、詳細を説明してくれた。

 彼の話によると旧校舎の管理など、王子の手腕によって着々と学園に関わることに対して生徒が主導で行っていく形が広まっているらしかった。

 が、そこで昔から生徒の活動に対して色々となぁなぁで済ませていた事柄が明るみに出てきて、問題視され始めているとのことだった。

 そして、今回王子が動こうとしたのが、今までに生徒達が何をしてきたのかという調査である。

 詳しく言うと、昔は個人的な研究などを生徒達が無断、もしくはなぁなぁで進めてしまっている節があり、最悪なことにそれを卒業と共にそのまま放置するという暴挙をした生徒がいたことが判明したのだ。

 幸い、今回はラライオスにおいての学術研究だったのでさほど危険なものではなかったのだが、これがアレイオスのような魔法研究であった場合洒落にならない場合がある。

(まぁ、アリス先輩のアンデッド事件のようなものね。あんなものを誰も知らずに放置していたのだから)

「つまり、無断で何やら研究をして、それを後輩に受け継ぐことなく放置した可能性のあるものを探すと言うことでしょうか?」

 私の問いに王子が首肯する。

「そういうことかな。申し訳ないけど、メアリィ嬢。その捜査にキミの力を貸して欲しいんだ」

「……私ですか」

「うん。無断で活動していた者はどうもそれを秘匿したがるようで、隠し部屋とか場所とかをわざわざ作っている節があるんだ。失礼ながら、キミは今までそういった類のモノをよく見つけだしているからね。その観察眼と洞察力に頼りたいんだ」

 申し訳なさそうに苦笑する王子に若干冷や汗をかきながら私は曖昧な笑顔になってしまう。確かに、考えてみると、私はそういった人様が隠していた物をよく見つけだしている。まぁ、観察眼とか洞察力とかそんなものではなくて単純に自身のチート能力のせいなのだが……。

「レイフォース様のご指示であれば、このメアリィ・レガリヤ。喜んで尽力いたします」

 私は王子の前で恭しく淑女の礼をする。いつもの私なら目立つことは嫌なので何とか理由を付けて逃げ出すところだけれど、ここに来て私は方針を変えることにしていた。

(それは、王子をとぉぉぉにかく持ち上げること。王子の偉業をバンバン作って、私の存在を消し炭にするのよぉぉぉ! 過去はもう……変えられないのだから……)

 最後の方は思わず自分の今までの行いを振り返ってしんみりとしながら、天井を眺めてしまっていた。

「どうした、メアリィ様? 天井に何かあるのか? あ、お腹空いたのか?」

 しんみりしている私に部屋で控えていたザッハが訳の分からない理論に行き着いて言ってきたので、私は笑顔を向ける。

「は? 何か言いました?」

「いえ、何も」

 人のオーラで空気が読めるようになってきたこのおバカは放っておいて、私は再び王子の方を見る。

「それでは、これから調査を開始してもよろしいでしょうか?」

「そうだね。僕も同行するからよろしく頼むよ」

 こうして、私達は広い学園の隅々まで調査に出歩くことになったのであった。

 

 

 

「あ、リリィ様、そっちへ行ってはいけませんよ」

 私の後ろに控えていたはずのテュッテがさっきからあっちへ行ったりこっちへ行ったりと忙しい。それもそのはず、今、校舎外を歩いている私達の中に好奇心いっぱいの落ち着きのない子がいるからだ。

 言わずもがな、『リリィ』こと幼い神獣様である。

 ちなみに神獣が学園内を歩き回ることに対して、学園長は許可を出している。というか、ぶっちゃけ神獣様の行動をどうこうできるような立場ではないと、学園長は匙を投げたにすぎなかったのだ。

 なので、お好きにどうぞ、というスタンスである。

 補足ではあるが、我が家の方でも同じような理由で、父フェルディッドにスノー達神獣をここに住まわせて良いかと相談した時、彼は「良い」と即答し、スノーのモフモフな毛皮に顔を埋めて恍惚な表情をしていた。

(お父様……本当に神獣様だからという理由で許したのか、些か疑問ではあるけどね)

「リリィ、テュッテを困らせちゃだめよ。こっちにいらっしゃい」

 私がチョイチョイと手招きすると、再び離れた場所で学園を見ていたリリィがクルッと首だけこちらに向けると、ハフハフと丸々とした小さな体で元気に駆け寄ってきた。その可愛らしさといったらもう、こんちくしょうのレベルである。

 思わず、私は両手を広げて、その可愛い物体を迎え入れようとし、そして、その可愛い物体は無情にも私を通過して、後ろに控えていたテュッテの元へとたどり着くのであった。

『ぶフッ! はずかしっ!』

 私が両手を広げたまま笑顔で固まっていると、頭の中に爆笑の声が響きわたった。

 私達のさらに後ろに控えている大きな雪豹の神獣こと『スノー』である。彼女も面白そうだからと授業が終わった自由時間を考慮して、ちょくちょく顔を出してくるようになっていた。さすがにこの巨体なので、未だに周りの生徒は恐怖に青ざめたり、硬直していたりとカオスと化しているようだが、神獣であるということは着実に広まっているらしく、許容はされ始めている。だが、なぜ、神獣が私達のそばにいるのかは徹底して情報規制をしている。主に私のために……。

 なかなか引き下がらない場合は、『王子関係』つまりは『王族』というワードをちらつかせて黙らせる暴挙も辞さないレベルでだ。

 ちなみに、王子はハハハと笑いながら、了承してくれている。寛容な方でほんと助かります。

 話が逸れたが、そんなこんなでスルーされてしまった私は絶望のごとく、そのままうなだれ、膝をついてしまった。

「お、お嬢様。リリィ様はお嬢様が私の所へ戻れと言われたと思って戻っただけですよ」

『基本的にリリィのお世話はテュッテがしてくれているからね~、どっちへ寄っていくかなんて……おのずとね~』

 テュッテのフォローも空しく、私の頭の中だけに聞こえてくるあんちくしょうに私は立ち上がって詰め寄っていく。

「私だって、リリィと戯れたいわよ! いろいろ忙しいのよ、いろいろと! 暇そうに一日ゴロゴロと玄関ホールで寝ているあんたとは違うんだからね」

『そんなこと言って~、たまに私に埋もれて寝ているのはどこの誰かしらね~』

「そ、それは、えっとぉ」

 私に負けずとスノーも言い返してきて、私は言葉を詰まらせてしまう。 確かに、スノーのモフモフに埋もれるのは気持ちよすぎて、ちょくちょく彼女を捜しては埋もれていたのは事実であった。

 言い返せずにモゴモゴしている私の足下に、私を元気づけるかのようにすり寄ってくるモフモフのリリィの感触が伝わってきて、私は思わず下を見る。

愛くるしさ全開の子豹を私は抱き上げると、愛おしそうに私の頬にすり寄ってくる。

「リリィ! なんてお茶目な子なの!」

 まるで、さっきのは冗談だよと言っているように思えて、私は思わずヒシッと抱きしめてしまった。かなり強めに……。

『ちょ、ちょっと! メアリィ! リリィが変な声出してるわよ! 締めすぎ、締めすぎよ、この馬鹿力!』

「馬鹿って何よ! 私の愛情ひょうげ、あ、あぁ、リリィがぐったりと」

 変なことを言うスノーに文句を言おうとリリィを離すと、彼女はカクンとうなだれてしまい、私は慌てて揺すってしまうのであった。一部始終を見ていたテュッテが何が起きたのか瞬時に理解し、慌てて私からリリィを受け取ると介抱する。その目はなぜか同情に近いように見えるのだが、気のせいだろう。うん、そうしておこう……。

(もしかして、リリィがちょくちょく私から距離を置くのはこれのせいかもしれないわね。自重せねば)

「メアリィ様、私達は先に行っていますね」

 私がスノー達とキャーキャー騒いでいると、呆れた顔でマギルカがそう言葉をかけて、歩き始めていた。

 気持ちは分かる。なぜなら、この会話、私とスノーしか成立していなくて、端から見ると私一人、キィ~キィ~叫んでいるとしか見えないのだ。 他の生徒達からは確実に変な人に見られるので、私はマギルカ達以外の人がいる時はスノーを完全無視している。それを良いことに、言いたい放題の彼女に不満を爆発させる私が度々いた。ので、今回もかとマギルカ達は察したように離れていってしまったのだ。

「あ、待って、待って。私も行くわ」

 私は慌てて彼女達を追うと、スノーも素知らぬ顔で私の後ろをついてくるのであった。

 脱線してしまったが私は本来の目的である調査を開始するのであった。


新章突入です。今回は王子にも活躍の場をと考えたらなぜかこうなったでございます。活動報告にも書きましたがコミカライズ第5話が更新されました。そして1ページ目に何やら嬉しい情報が!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ