タッグ戦は得意です
大きな雪豹がノソノソとこちらへやってくる。
「あ、あれがメアリィ様が言っていた豹。本当にいたんですね」
サフィナの呟きが後ろから聞こえてきた。後ろを見るとギルツはどこから持ってきたのかロープでスフィアとフィフィによってグルグル巻きにされて今すぐにでも撤収可能状態になっている。
私は今一度前を向き、若者と豹を見た。おいそれと逃がしてくれそうにはない。
「フフフッ、驚いたかい? 僕があの方より貸し与えられた神の力の一つさ」
(神……エリザベス様の言う通り、あの豹は聖教国に属してて、あの人も聖教国の人なのかしらね。面倒なことになってきたわ)
『やっほぉ~、元気してたぁ~。短時間でここまで来るなんてすごいわね、あなた』
緊張感を漂わせ笑みを見せる若者と、厄介なことになってきたなと苦虫を噛み潰したような顔をする私。それに比べてすっごくゆる~い感じで話しかけてくる豹を私はあえて、無視した。
周りを見ても、皆あの豹の言葉に反応がなかったからだ。あんなゆる~い言葉を聞けば、ここに漂う緊張感など霧散しているはずだから。
(つまり、あの豹の言葉が聞こえているのは私だけみたいね。使役しているあの男ですら聞こえていないみたい。となると、アレに答えたらまた私、痛い子扱いってことになるわよね。今はそれを弁明する暇はないわ。後で皆にゆっくりと説明するということで、今は無視無視)
私はあえて豹を見ず、男の方を見て身構える。その物怖じしない態度に驚いたのか、若者はニヤリと笑みを見せた後、自らも身構えた。
「フフッ、臆せず戦う気かい、たいした度胸だね。まぁ、キミのような子供相手に神獣を使うのは大人気ないが、あの方のためだ。キミはここで確実に始末させてもらうよ」
『ねぇねぇ、聞いてる? ちょっとぉ~、無視しないでよぉ~、もしもぉ~し』
(ぐおぉぉぉ、毒電波が私の緊張感を阻害してくるぅ)
「さぁ、覚悟して貰うよ」
男の言葉に緊張感溢れる戦いが、今、はじま――
『聞こえてるんでしょ、この貧乳!』
「誰が貧乳よっ! 成長中よ、失礼ねっ!」
私が豹を指さし抗議の声を思わず上げたことで、一帯が静まりかえってしまった。とっても、微妙な空気となっていく。
「……あ、お気になさらず。ささっ、続けましょう。おほほほ」
何か若者にすら微妙な表情で見られてしまう私は、愛想笑いをするしか他に手がなかった。
「……ま、まぁいい! キミのペースには乗らないよ! さぁ、行け! 神獣! 彼女を始末しろ」
微妙だった空気を立て直してくれたありがたい若者が、あんまり嬉しくない指示を飛ばしてきた。
『というわけなの、ごめぇ~んねっ』
そう言って(?)豹は私に向かって走り出す。
『メアリィ様! 上からも黒ずくめが数人降りてきました』
『サフィナは他の皆を守って頂戴! いくらなんでもそろそろイクス先生達も到着する頃だから、それまでお願いよ!』
サフィナが伝達魔法を使い、後方の出来事を伝えてくる。私は前を見たまま彼女に伝達魔法で指示を返した。
『わ、わかりました!』
『はぁ~い、前足アタックいっくよぉ~』
サフィナの了承の声と混ざって、豹の声が頭に響く。
(なんかこれって伝達魔法に似ているわね。あ~もう、頭の中でチャンネルを切り替えたいわ)
私が頭の中で愚痴っていると、豹が上体を起こし、私を押しつぶすように両前足を地面に叩きつけてきた。何が来るのか分かっていた私はそれを難なく躱す。
「良いぞ、そのまま攻撃だっ! お前達も爺さん以外始末しろ」
若者の言葉で私は後ろを見る。明らかに数が多すぎた。いくらなんでもサフィナに止められるわけがない。そいつらがワラワラと階段を下りてきて、サフィナ達の場所を確認している。
(どうする? 援護にいく?)
「神獣! 例の技で一気に片を付けろ!」
迷う私に容赦のない若者の言葉。
『それじゃあ、ちょい抑えて放つから、降りてきた連中達に向かって走って頂戴な』
豹の意味不明な言葉に私は咄嗟に従い、走り出す。
「メアリィ様!」
私の行動に驚き叫ぶサフィナ。私は豹と距離をとり、上から見ると豹と黒ずくめの連中に挟まれるような感じになった。傍から見ると自分から不利な状況へと飛び込んでいったようにしか見えない。
「逃げても無駄だよ! 放てぇぇぇ!」
『いっくよぉ~! でっかい衝撃波飛ばすから上にかわしてね。あいつもそれ狙ってるだろうから、後お願ぁ~い』
両足を踏ん張り、今にも吼えようとする体勢に私は相手が何をしようとしているのかピンときた。
『サフィナ! 豹が衝撃波で黒ずくめを黙らせるわ! 私は上に飛ぶしかないから、あの若者が狙ってくるのを邪魔して、お願い!』
自分でも何言ってるのか半分分かっていないが、そう言うしかなくて、後はサフィナに託す。
『ハウリング・ブラストォォォッ』
その声とともに豹が咆哮し、超音波のような衝撃波が私に向かって放たれた。私は上にジャンプしてそれを躱す。想像以上に効果範囲が広くて、スレスレだった。神獣特有の魔法か何かか?
とにかく、予測通りというか、その衝撃波はそのまま後ろの黒ずくめ達を襲った。思いもしなかっただろう黒ずくめ達全員がまともにそれを食らって、吹き飛ばされ壁にめり込み、あっという間に行動不能になる。
これで、上からくる増援は無くなったか。
「もらっ!」
「させません!」
私がよそ見をしていると、そんな声とともに飛んできた若者とサフィナが空中で交差しているところだった。
「チィ! 運の良いお嬢さん達だね。まさか、神獣の咆哮があいつらに当たってしまうとは……つくづく使えない奴らだ」
一旦、お互い距離をおく。
「メアリィ様、先程のは一体?」
先程の私の行動に疑問を感じたのかサフィナが聞いてきた。
『サフィナ……信じられないかもしれないけど、あの豹は私達の味方かもしれないわ』
相手に聞かれてはいけないと思って私はサフィナに魔法で話しかける。
『え? どういうことです?』
『それを確認するわ』
「何のつもり!」
私は対峙する豹を見ながら彼女にだけわかるような意味不明な叫びをあげた。
「何のつもり? キミは何を言っているんだい?」
もちろん、若者は意味が分からず、私を残念な人を見るような顔をしてきたが、今は無視する。
『あれ? 言ってなかったっけぇ~、戦う気はないって。それに、あなたに喧嘩売ろうとすると、こうなんて言うのか、野生の本能? みたいなのが、やめとけ、無理だからって言ってくるのよぉ~』
さすが腐っても神獣。私の力を本能的に感じ取っているようだ。
(そういえば、学園のグリフォンもそんな感じだったわね。野生の本能恐るべし)
「じゃあ、何で攻撃してくるのよ。正直、邪魔なんだけど!」
私は声を張り上げる。正直、今の私はかなりおかしな子に映っているだろうが、そんなの今は気にしていられない。
私の行動のおかしさに若者も何だか鼻で笑い始めた。
『えっと、あいつが持っている箱。あれがある以上、私達一族はあの箱の所持者の命令に逆らえないし~、危害を加えられないのよぉ~。ねぇ~、アレ、何とかしてよぉ~』
私は若者が取り出したあの頑丈そうな小さな箱を思い出した。
(あれで彼女を従属させているのね。神を崇める人が神の獣をアイテムで無理矢理従属させるなんて、聞いて呆れるわ)
「どうすればいいの?」
『至って簡単よぉ~。蓋を開けて中に閉じこめたご先祖の『言霊』を解放して頂戴な。私のご先祖が昔一度だけ聖教国に力を貸した際に交わした口約束を、曲解して都合のいい部分だけ箱に閉じこめ、私達一族を言葉の契約で縛っているのよぉ~。お願い、私、アレには触れられないのぉ~』
(全く……権力を持つ大人にはいつの時代もどこの世界もずる賢い人がいるものね)
「ちなみに、命令がなくても彼のために頑張っちゃうわ~、てのは?」
私が若者をちら見しながら言うと彼の後ろにいた豹はものすんごい嫌そうな顔でペッと器用に唾を吐き捨てた。非常に分かりやすい。
「いい加減、その訳の分からないことを叫ぶのはやめてもらえないかな! イライラするんだよ! なかなかの危険人物かと思ったけど、只の頭のおかしい小娘だったようだね!」
場の空気を台無しにされて若者が激高した。
『サフィナ! 攻撃E2であいつを叩く! あいつに神獣への指示をさせないように間髪入れずに行くわよ』
『で、でも、神獣が自発的に動いたら』
『それは絶対ないわ、私を信じて! 私達の相手はあの男だけよ』
「……わかりました! 行きます、メアリィ様!」
サフィナが一瞬何かを考え、それを吹っ切るように叫ぶ。
学園祭でいろいろ考えていた私達の連携技が今ここに花咲く時が来たのだ。真剣な顔つきでサフィナが相手に向かって納刀したまま接近していく。
「ハッ! 剣も抜かずに突進かい! これだから子供は」
一度見たはずの抜刀術を根本的に知らない若者は油断していた。いや、サフィナを子供だからと油断しているのか。私の剣は只の力業だ。剣術となれば、サフィナの方が私より遙かに上である。
「死ねぇぇぇ!」
若者の横薙ぎを身を屈めて躱すサフィナはそのまま足を止め力を込める。
「抜刀!」
「なっ、なんだその技は!」
改めて直面したサフィナの抜刀術に驚きを隠せない若者。光の煌めきのごとく綺麗な一閃が若者を襲った。想像以上に速かったのか若者がもう片方の剣でそれを止め、後ろに下がろうとした。
「ファイヤー・ボール」
「くっ、魔術師だと」
私が魔術師だと知り、さらに驚く若者。そして、サフィナの攻撃から間髪入れずに彼女の後ろから私が放った炎球が彼を襲う。前にいたサフィナはすでに身を屈めていたので炎球は綺麗に彼女を通過し、若者へと到達した。
「ばかなっ! どこで示し合わせた」
『右攻撃F』
いつそんな相談をしたのか、それとも単なる偶然か、とにかく計ったような攻撃に若者は驚き、対処が遅れる。咄嗟に双剣を交差させ、盾にして炎球を防いだ。だが、それで足は止まってしまった。
「抜刀!」
「ファイヤー・ボール」
再び納刀したサフィナがいつの間にやら後ろに下がった彼の右側に移動しつつ再び刀の一閃を食らわせてくる。と、同時に私は反対側に移動して彼を挟むように再び炎球を放った。
「チッ! 小賢しい!」
悪態をつきながら、若者は双剣の一本でサフィナの抜刀を受け、もう一本で私の炎球を切り裂く。
『攻撃Dクイック!』
「アース・ウォール四連!」
「なっ!」
私の力ある言葉で床がせり上がり、若者の四方を囲むように屹立する。
「バカな! こんな小娘にこれほどの魔力が! こんな芸当高位魔術師だって……くそぉっ!」
彼は忌々しそうにそれをジャンプしながら体を回転させ横薙ぎで一気に斬り崩していった。
迂闊にも飛んでしまった彼は完全無防備になる。そして、視界が晴れた時にはすでに彼よりも上に飛び上がっている者がいることに驚いただろう。
「チィッ! 狙ってたのか!」
「回転斬り」
サフィナも空中で体を地面と平行に横倒ししながら回転し、落下エネルギーと回転エネルギーを利用して相手へと斬りつけてきた。
それでもさすがというべきか、間一髪で若者はそれを空中で体を捻って回避した。だが、避けきれずに胸の辺りがばっさり切られて、例の箱が宙を舞う。というか、あの服、みた感じ魔法が込められている魔法衣というやつだ。そのおかげで致命傷を避けられたのかもしれない。
「くそっ! 邪魔だ」
『あら、ごめんね~』
若者が箱を取ろうと動いた瞬間近くでまったりしていた豹の尻尾が彼の行く手を遮り、箱を守るように尻尾がウネウネと動き回る。危害を加えられないけどちょっとした彼の邪魔はできるらしい。ナイスアシストだ。
彼は気づいているのだろうか、二対二で戦っているつもりがいつのまにか三対一になってしまっていることに……。
『特殊Cからの必殺技!』
若者は大事な箱を落としてしまった焦りと回収できない苛つきで判断が鈍った。私がすでに接近して突き攻撃の態勢に入っていることに遅れて気づき、狙い通りその突きをギリギリで避けようと切っ先を凝視してしまったのだ。
「ライトォォォッ!」
「ぐあぁっ! 目が」
「アクセル・ブースト」
切っ先から放たれる凄まじい光量を直視してしまい、彼の視界が一瞬奪われてしまう。それでも私達から離れて距離を取るのはさすがである。だが、サフィナはすでに加速魔法をかけて準備万全だ。今の私達にはその一瞬の隙、時間で十分だった。
「くそぉぉぉ! ふざけやがってぇぇぇ! 何なんだお前達は! たかが小娘の分際で見たこともない剣技を使うわ、魔法の連続使用が異常すぎるっ!」
「ナイン・ブレードォォォッ!」
「加速!」
私は叫びとともに剣を振り上げる。サフィナもそれに合わせて宝具級アイテムでさらに自身を加速させた。
「神獣! 何をしている、僕をっ」
力ある言葉に従って、五連撃の斬撃魔法が彼を襲う。視界が戻ってそれを目の当たりにした若者は顔を歪めて言葉を失ってしまった。そして、癖になってしまったのか私は例の台詞をうっかり口にしてしまう。
「終わりよっ」
「そ、の言葉……まさか、白銀のきっ」
「クロス!」
すでに加速魔法がかかったサフィナがタイミング良く相手の懐にとびこみ、私達の渾身の九連撃が炸裂した。
キィィィィィィン!
風圧と金切り音が部屋に響き渡り、サフィナが立つ遙か先に例の男がボロボロの状態で吹っ飛んでいった。先にも気づいていたが、あの若者が着ている司祭のような服は魔法衣でそこいらの防具より頑丈そうだった。なのに、それがボロッボロになった挙げ句、ものすごい距離を彼は吹っ飛び転げ回っていった。おそらく咄嗟に防御魔法をかけていた筈だろうが、そんなものすら木っ端微塵である。
(あかん、やっぱ、この合体技は危険だわ)
私は心配するように吹っ飛んだ男を見ると、一度うっと呻き声をあげて息はしているようだが、そのまま立ち上がってくる気配はなかった。とりあえず、死んではいないみたいだ。今のところは……だが。
『すごいすごぉ~い。あなた達強いのねぇ~』
器用にも上体を起こし、両の前足でポフポフと拍手する変な豹。その姿にサフィナはギョッとしながらも少し緊張感が薄れているのか、もう身構えたりはしない。
私は落ちていた箱を拾い上げ、興味本位でジロジロといろんな角度で眺めてみる。
『ねぇねぇ、早くそれ、開けてよぉ~』
ワクワクしながら豹が私を急かしてきた。が、私は残念なことに気がついてしまう。
「これさぁ、鍵が掛かってるわよ? 鍵はどこ?」
『へ?』
私の無情な言葉に豹が固まってしまった。
『……あいつ、鍵なんて持っているような感じなかったよ? もしかして、本国にあるとか? そ、そんなぁ~』
解放されると喜んでいたのが一転、ものすごくシュンとして項垂れてしまう豹。サフィナも事情がよく分からないが悲しんでいるように感じて慰めようかどうしようかオロオロし始めた。
(サフィナってば、得体の知れないものでも悲しんでいると思うと心配しちゃう優しい子なのね)
私はサフィナの優しい部分にホッコリしながら、気持ちを切り替えた。
「うんじゃあ、壊すか。これって壊しても良いんでしょ?」
めんどくさいので私は豹の陰に隠れ、皆から見えないようにすると、左手で箱を持ち、右手をチョップの形で振り上げる。
『ハハハッ、人の手で壊せるものなら苦労しっ……』
「とりゃっ!」
バキッ!
あら不思議、あんなに頑丈そうな箱がまっぷたつにあっさり壊れちゃいましたとさ。
『…………』
あまりの出来事に豹だけが目を見開き、壊れた箱を凝視していた。なんか顔がとってもおもしろいので、私は持っていた箱を掲げ上げてよぉく見えるようにしてあげる。
『…………』
「はい、壊れたわよ。これで『言霊』とやらも抜けて無くなったのかしら」
『わ、分かんない。ちょ、ちょっと待ってて』
そう言うと豹はトコトコとぶっ倒れている若者の所へ行き、おっかなびっくり軽く猫パンチしてみる。
ペチッ!
その猫パンチは綺麗に男にヒットした。
『ぉぉぉおおおっ! 殴れる! 殴れるわぁ~!』
とっても嬉しいのか、ペシペシと軽く猫パンチを入れ続ける豹。
「そのくらいにしといてくれない。でないと、その人死んじゃうわよ」
私は壊れた箱に興味が無くなってそこいらに捨ててしまう。そして、豹に向かってストップしろと注意するのであった。
『ありがとう! 白銀の人ぉぉぉ!』
感極まったのか、ものすごい勢いで私の所に戻ってきた大きな豹は私に抱きつくようにのしかかってきた。まぁ、そんなことで押し倒されるような柔な公爵令嬢様ではないので、そのままうっとうしそうにモフモフ毛を払いのける私。
「メアリィよ。ちょっと、図体でかいんだからくっつかないで」
『そうだ、メアリィ! 妹の方はどうなの? お願いしたよね』
「妹? あ、忘れてたわ」
『チッ、使えない子ね』
「おいこら、今、チッとか言ったわね。ここまでしてあげた私に向かって使えないってなによ!」
私が豹と漫才を繰り広げていると、恐る恐るといった感じでテュッテが近づいてきた。
「お、お嬢様」
「あ、テュッ……テ?」
私も気がついてテュッテの方を見て、涙目の彼女を見るとふとこれは最近体験したパターンだと気がついてしまうのであった。
(思えば、戦う前にあれだけ大声で独り言言っているみたいに見えてたものねぇ……)
「お嬢様! 帰ったらお医者様に看てもらいましょう! ノイローゼですよ、絶対に」
「だぁぁぁから、ノイローゼじゃなくて、ほんとにこの豹がしゃべってるんだってばぁぁぁ!」
テュッテに抱きしめられながら、私は前回と同じパターンになって誤解を解くように叫んだ。
『なぁに~? メアリィ、ノイローゼなの? 大変ねぇ~』
「誰のせいでこうなったと思ってるのよ!」
シレッと言ってきた後ろの豹に私は振り返って抗議する。
「……待って。ノイローゼと決めつけるのは早い。見たところその豹はメアリィ様の言葉に対して何となく行動が一致している。検証の余地あり」
思わぬ所で助け船となるようなことをフィフィが言ってくれた。
(やったぁぁぁ! これで私は痛い子から脱却できる!)
私は期待を込めてこの救世主たる狐の獣人様を見るのであった。
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