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どうやら私の身体は完全無敵のようですね  作者: ちゃつふさ
第2章 学園編 三年目
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踊らされそうです


「さて、皆の者、朗報じゃ。メイド達を攫おうとしていた輩の情報を掴んだのじゃ」


 一同を席に着かせ、エミリアが自信満々に言ってくる。それよりも気になるのが後ろにいるフィフィだった。


(あれ? 工房から出てきてこんな所にまでついて来ちゃってどうしたのかしら?)


 私がフィフィを見つめるものだから、エミリアも気がつき彼女を見る。


「ん? ああ、フィフィか。こやつは今回の件、全く無関係とは言えなくなったので、ついてきてもらったのじゃ」


「どういうことです?」


 皆を代表して王子が問う。


「妾にはマジックアイテムのことはよく分からないが、フィフィが言うには襲撃してきた輩が持っていたマジックアイテムに気になるところがあったそうじゃ」


「彼らは全てダブザル町長が回収してしまった為、調べることはできなかったのでは?」


 王子が言うように、捕まえた連中は全て亡くなり、その遺体、遺品も全てあの町長が回収してしまっていた。


「うむ、妾の権限で強引に調べたのじゃが、同行させたフィフィが一つ気になることがあったそうじゃ」


 エミリアが言うと、フィフィに視線が集まる。


「……私を拘束したマジックアイテムを誰も持っていなかった。護送する際逆に利用していたはず」


「町長が言うには自分が来たときにはそんな物はなかったと言っておったが、捕縛者が自分で外し捨てたにしても、その残骸があっても良いのに、現場周辺にはそれらしい物はなかったそうじゃ」


 フィフィの言葉にエミリアが続く。


「誰かが回収したのでしょうか? 何かまずいことでも」


 王子も会話に加わってきた。


「まぁ、あの拘束アイテムは一般的には広まっておらんし、フィフィやあの男達をあそこまで完璧に拘束できるアイテムなどそうそうないのじゃよ」


 二人の会話は続く。確かに人を身動きできなくさせる拘束アイテムが一般化してしまえば、犯罪者を捕まえるのに便利な反面、逆もまたしかりである。エミリアの説明では拘束アイテムはここレリレックス王国でしか作られていないらしい。外の国に出回ると厄介だからだそうだ。また、幸いにして一般的な魔工技師が作った拘束アイテムではせいぜいその人を脱力させる程度で拘束力はほとんどないらしい。結構上級の魔工技師にしか作れないのだ。


「じゃが、幸いにもその拘束アイテムが一つ、壊れていない状態で入手できていた。言うまでもないが、フィフィ自身に着けられていたものじゃ」


 エミリアが言うと、フィフィは首輪のような物をテーブルに置く。


(あ、私も着けられて粉砕したやつだ)


 心の中で思ったことを思わず口に出しそうになって、私は慌てて口を押さえてあさっての方向を向くが皆、アイテムに注目していたので気がついていない。


「……興味深かったので拝借していた」


(いわゆるネコババというのだろうか、これは……いやいや、違うよね。向こうが勝手に着けてきたものだもの、え~と、じゃあ、なんて言えば……)


 何かどうでも良いことを考え始めて、頭を悩ませる私。


「……このアイテムはとても精巧にできている。一人を完璧に拘束できる代物。並の技師では作れない。中の魔術回路の構成を見たのだけど、そこに見覚えがあるもの、というか、独特の癖のようなものを見つけた」


 フィフィが珍しく滑舌よくしゃべり出す。表情は無表情だが……。


「……これは、師匠が作ったもの」


 フィフィの言葉に一同が静まってしまった。


「現在行方不明の魔工技師『ギルツ』様が作ったということは、単純に彼もこの件に関与しているということでしょうか?」


 たまらずマギルカも会話に加わってきた。


「……そうかもしれない。ただ、制作日が古い。師匠は型番代わりに制作日を入れる癖がある。それを見ると行方不明になる前になっている」


 そこで私は自分が壊したもう一つの拘束アイテムを思い出した。言わずもがなフィフィ自身が作ったのだ。その時彼女が言った台詞を思い出す。


「確か、フィフィさん。ギルツ様が拘束アイテムを作ったのは町長の依頼だったとか言ってなかった?」


 私の台詞にエミリアがにやりと笑い、フィフィがコクリと頷く。


「伯母上が言うには町長の所にある首輪とは形状が違うらしいがフィフィが言うのが正しいなら中身は同じということじゃ」


「そちらの在庫が少なくなっていれば町長が横流しした可能性もありますね」


「うむ、伯母上が言うには在庫に減っている節は見受けられないそうじゃ。じゃが、伯母上に言われて、フィフィを連れてこっそり見てもらったらその中身が別の技師が作った物にすり替わっていたのが数個あったのじゃよ」


 したり顔でエミリアが言う。だが、私はそれ以上にとっても気になることがあって黙っていられなくなってしまった。


「あの……姫殿下、ちょっと良い」


「なんじゃ?」


「さっきから会話の中にちょくちょく『伯母上』というのが聞こえてくるんだけど、もしかして、あなたエリザベス様に言われたことそのまま行動して口にしてない?」


「ん、はて? そう言われてみればそうじゃな。気がつかなかったのじゃ」


(あんた、エリザベス様の手のひらで綺麗に踊ってるわね~、ああ、恐ろしい……あの魔女様には関わりたくないわ)


 話が逸れてしまったが、エミリアとフィフィの話から町長の怪しさは増してくるが、理由が分からない。ここまでの話で単純に考えると、町長が豹をつれた襲撃者を使ってメイドを攫ったことになる。


(なぜに? Why?)


「まぁ、そんなことはどうでもよい。でじゃ、ではこれからどうすれば良いかと考えていたら、伯母上が港町にいる魔工技師のリストを見せてくれてな、フィフィがそれを見て、一つ気になる物を見つけたのじゃ」


(ほらまた、伯母上だよ)


 皆はフィフィを見るが私はだんだん呆れ顔になってエミリアを見ていた。だって、エリザベスの行動が用意周到すぎるのだ、ほとんど誘導していると言っても過言ではないくらいに。


「……んっ、私は師匠に弟子入りする前にこの港町にいる技師にも押し掛け弟子をしてた。そして、彼らの技術を見ながら覚え、見よう見まねな上自分なりにアレンジを加えた作品を作ってると大抵お前に教えることはないとしょんぼりされて追い出されてしまった。それから、港町中の数少ない技師を訪れ、全員に同じことを言われた……未だにあれはなぞ……」


 話が逸れたが、フィフィの言葉に皆苦笑する。彼女はおそらく技師として天才なのだろう。皆が苦労して作っている物を見ただけですぐに作り上げてしまったのだ。そして、それが自分達より高性能ときたら、そりゃあ、心折れるわ……。


「……で、私が追い出された技師の一人に今回の偽拘束アイテムの術式に似た物を作る人がいた。現在、とある商会の専属となって働いているみたい……」


「伯母上の話ではその商会、小さくてこれといって目玉商品を売り出しているわけでもないのに働き手を増やしているらしい。しかも、ちょっと周辺に聞き込みをいれたところ、確証はないが町長の使いを見かけたという情報も入ったらしいのじゃ」


 もう私は『伯母上』というパワーワードは聞こえなかったことにすることにして話を聞くことにした。だって、あらゆる商会を事前に調べていたとしか思えないもの、そのご都合情報。


「というわけで、今からそこへ乗り込もうと思うておる」


 サラッと物騒なことを言うお姫様。まぁ、視察に来たとか何とか言えば入れてくれると思うが、まさか問答無用の殴り込みとかにはならないだろう。ならないよね、お姫様?。


「しかし、夕食会の招待がございますよ? こちらの準備もありますし、時間が足らないかと思いますが」


「うむ、そこで二手に分かれようと思うのじゃ」


 マギルカの疑問にエミリアが即答する。あまりにも即答過ぎたのでたぶん例の人の入れ知恵だろうと邪推してしまう、歪んだ私。


「夕食会に参加する班には王子は外せん。連れにマギルカ、ザッハを付ける。さすがに妾も参加せんと自分の客人をほっぽいてどこ行ったになってしまうので妾も同じ班じゃ。大人達もクラウス卿の隊は王子の、夕食会の方へ連れて行く。で、後残りが別班となる」


「あの……私は良いとして、さすがに公爵家のメアリィ様がそちらに出席しないというのは問題が……」


 珍しくも恐縮そうにサフィナがさもありなんと思う疑問を問いかけてきた。


「フ・フ・フッ、その点は抜かりない。ダブザルにはメアリィは先の事件に巻き込まれたくせにケロッとしていたのだが、ものすっごく鈍くて後になって恐怖がやっと訪れ、いきなり高熱だしてぶっ倒れた挙げ句、寝ていると伝えておいたぞ」


「ちょっと、言い方! 実は毅然と振る舞っていたとか言い方があるでしょうがぁぁぁ!」


 エミリアの失礼極まりない言い訳を聞かされ、私は思わず抗議してしまう。これでは私が鈍感なバカな子にしか聞こえないかもしれないではないか。


「まぁ、とにかくじゃ、この班分けでいく」


「ううう、納得できないけど仕方ないわね。ということは別班は私とサフィナとテュッテ、フィフィさん。後はイクス先生というわけね。めっちゃ部外者が多くて調べられないんじゃない、これ?」


 エミリアの提案を妥当と考え、私は残りの人間を確認する。魔族感ゼロのパーティに私は疑問しか浮かんでこなかった。


「安心せい! そなたらの方にはなぜか伯母上がついて行くことになっておる。ついでにスフィアも連れて行くが良い! 伯母上の相手は奴に任せておけば良いから、気楽であろう」


 エミリアがサムズアップして軽快に言った。確かにエリザベスが加われば魔族感ゼロどころの話ではなくなるし、問題ないとは思うけど、全然安心するどころか背筋が凍る気分になって仕方ない。後、エミリアがどさくさ紛れにスフィアをエリザベスへ付けたのは自分への監視を無くして伸び伸びとしたいだけなんじゃないだろうか。そんな気がしてならないのは私の心が荒んでしまったからなのだろうか。

 とはいえ、悲しいかな。これ以上の良い案を私は持っていないので口出しできないのが現状である。


(ぐおぉぉぉ、マズい……このままでは私も魔女様の手のひらでクルクルと踊らされてしまうぅぅぅ)


 私が心の中で悶絶している中、話はどんどん進められ、行動開始へと皆が移っていってしまうのであった。


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