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すっ飛ばしやがりました

ブックマークありがとうございます。


「へ~、そんな事があったのか。それはいただけないな」


 相変わらず、鍛錬の後のお茶の時間にちゃっかり参加するザッハ。もう最近では3人でいるのが当たり前になってきている。鍛錬が終わると、彼からどうだった?っと話を聞いてくるので、王宮であったことを話すと、先の感想を言われた。


「まったくです!私、周りの人に怒っちゃいましたよ!」


(プンプンしながら言うテュッテは何か可愛い)


「まぁ、おかげで王宮から逃げ出せたんだからありがたかったんだけど…それはそれ、これはこれ、犯人にはきっちりお礼しなくちゃね♪」


 私はにっこりと笑みを作る、邪悪なオーラを発しながら。

それに気がついたのか、二人が少し身を引いた。


「しかし、おかしいな…」


 そこで、ザッハは思案顔になる。


(おお、珍しく無い知恵を使っているのかい?)


「何がおかしいのかしら?」


「王宮内は結界がはられていて、攻撃魔法を使用すると騎士達が集まる詰め所にその場所が知らされ、すぐに駆けつけられるって前に父上に聞いたことがあるんだが…」


「犯人が捕まったという報告はあの時点ではなかったですよ」


「いえ、あれは攻撃魔法ではなく、生活魔法よ。だから、結界に引っかからなかったんだと思うわ」


「えっ!あれが生活魔法ですか?でもあの水の量は1階級魔法では…」


「だから、普段使う生活魔法を2階級魔法まで強化したんじゃないかしら」


「う~ん…確かに生活に欠かせない生活魔法は王宮内でも普通に使ってるから反応しないだろうけど、そんな使い手が、随分としょっぱい嫌がらせをしてきたもんだな、大の大人がやるこっちゃないぞ、それは」


「そうね。私たちと同じ歳くらいで、魔法に精通している家柄か環境にでもいたら、もしかして………まっ、いるわけないわよね、そんな子」


 は~っとため息をつき、紅茶をいただく。

私の言葉に何か思い至ったのか、ザッハがポンッと手を打った。


「あっ、俺が知っている奴で一人いるぜ、その条件にあてはまる奴」


「え!うそっ、マジで」


「ああ、確か、マギルカ・フトゥルリカっていって、俺たちと同い年の女だったはず」


 情報不足で私が頭の上に?マークを浮かべると横からテュッテが小耳に入れるように補足してくれた。


「フトゥルリカ侯爵家は曾祖父が賢者と呼ばれた程の魔法使いのエリートを輩出する家系なのですよ、現在では宮廷魔術師として王家に仕えています」


「俺の家が武術のエレクシル、向こうは魔法のフトゥルリカっていって、二つで王家に仕えていたので結構前から友好関係を築いてたんだ、っで、この前、顔合わせした」


「よくあなたがその女の子を覚えていたわね、もしかして、あなた…ムフッ♪」


(この脳筋が女の子を覚えているなんて、これはもしかして…)


「うん、何か強そうだったから、覚えてた」


(あっ、さいですか)


「まぁ、確かに、その令嬢なら王宮内にいてもおかしくないし、私達より魔法の扱いに長けていても不自然じゃないわね」


「でも、フトゥルリカのご令嬢がなぜお嬢様にあのようなことを?」


「まだそうと決まった訳じゃないわよ、テュッテ」


「そうですね…すみません」


「はいはい、もうこの件は忘れましょっ!今回の件で向こうもそう簡単にまた来いなんて言えないと思うから」


「そうですね…ん?」


 テュッテはホッとした顔で私から離れると、慌てるように近づいてきたメイド長に呼ばれていることに気がついて、私に一礼するとそちらへ赴いていく。

なにやら込み入った話をしているのか、聞いていたテュッテの顔が青くなっていくのが見てとれた。


(何かしら?いやな予感しかしないけど)


 私は内心ハラハラしながらも、冷静を装う。

話し終わったのか、メイド長は慌てるようにその場を去り、テュッテは慌てるようにこちらに駆け寄ってきた。


「あの…お嬢様…」


「いえ、言わなくていいわ。その様子だと、また書状が届いたのでしょ?次はいつ行けばいいのかしら?」


 もう腹をくくって、私は認めたくない現実を自分で口にした。


「いえ、違います。その…来るそうです」


「え?何が?」


「ですから、王子自ら、こちらへいらっしゃるそうです、それも今から…」


 私の想像を遙かに上回った展開に、私もザッハも唖然として、カップを持ったまましばらく硬直していた。


 それから数分が経ち、


「じゃあ、俺はこれでお暇させてもらうよ、お茶、ごちそうさっ!」


 先に動いたのはザッハだった、いつもは言わないお礼の言葉を述べて立ち上がったところで、私はガシッとその肩を掴んで座らせた、かなり力を込めて。


「待ちなさい、何、一人助かろうとしているの?あなたもここで王子をお迎えしなさいな」


「いててててっ、いや、俺は関係ないだろう、いたたた、何だよお前のその力」


(この緊急事態に道連れを作れるならば、少々の力の露呈も辞さないわ)


 メリメリと私の細指がザッハの筋肉質な肩にめり込んでいく。


「メアリィ様、分かった、分かったから、手を離してくれぇぇぇ」


 ギブアップしたのはザッハの方だった。私はホッとして手を離すと、テュッテの方を見る。


「すぐに着替えるわよ、どのくらいで王子は到着するのかしら?」


「それが…もうすでに…近くまで来られていると」


 泣きそうな顔でテュッテが言うのを信じられないと言う顔で私とザッハはお互いを見合ってしまう。


(ガッデェェェムゥッ!普通、そういう時は事前に書状を送り、しかる後に来るのが通例でしょうが!あの王子、全部すっ飛ばしやがったよッ)


 私はそれでも、少しはマシな身支度をするべく、部屋へ戻ると告げた。ザッハにももうちょっとマシな服に着替えさせるように他のメイドに指示を出す。こちらはザッハが逃げ出さないようにするためでもあった。


 私達もさることながら、屋敷内の使用人たちの慌ただしさといったらひどかった。なにせ王族が訪問するのだから、レガリヤ家としては最高のおもてなしをしなくては笑い者にされてしまう。

 そして、終始慌ただしかった屋敷の前に豪奢な馬車が停車する。


(本当に来やがったよ、あの王子…)


 私は今できうる限りで綺麗に装うと、問題ないかメイドたちにチェックさせながら、玄関へと向かう。

途中、襟元が気になるのか指で引っかけながらも、私の後ろ隣に着くザッハの付き合いのいい事に驚きつつ、持つべき者は友達ねっと感激しながら私は一度彼を見て頷くと、使用人たちも引き連れて、外へ出た。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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