どうするんだこの世界の日常
purihu様原作の「どうしようもない世界の日常(第三話)」の二次創作作品となっております。
普段投稿している話とは何ら関係のないものとなっておりますのでご注意ください。
原作者purihu様の了承を得たうえで投稿しております。
わたしの名前は杉野このみ。
今年から中学1年生になりました。
わたしの通う学校は都会から少し西に離れたのどかな町にあります。
わたしには両親がおらず、買い物や家事は1人でこなしています。
でも精神年齢が異様に高いわたしには1つ秘密にしておかなければならない重要なことがありました。
実は正体が男だという事だ。
ある日親がいない俺を学校長が呼び出し、第三者抜きの俺1人だけで様々な手続きを済ましてしまった。
その時、昔はいた両親に可愛く女の子っぽく生きてほしいという自分勝手な願いでこんな名前を付けられ。美容や髪を長くするのにも女装をするのにも抵抗が無く育てられてしまったせいで女の子っぽい外見をしていたのが悪かった。俺の性別は女だと校長が記入してしまったのだ。
あの時は本当に無意識だったんだよ。もう何年もそういう恰好させられてきたんだよ。
小学校ぐらいの頃は両親が先進的な教育を家で進めてくれたから問題なかった。
小6が終わるだろう頃に2人とも交通事故で死んじまって。親戚に面倒見てもらうようになったんだ。
そんな親戚も事故で死んじまって。奴の奥さんが慈悲だと言って保険金の一部をくれたんだ。
だがそいつはそれっきりいなくなって。今はスーパーのレジやってる年が離れた友人の助けも借りてさっきの保険金と両親の遺産を切り崩してなんとか生活している。
そこで中学校に入学したんだ。
ああ、行ったさ。校長のところには。
ろくに契約書も見せずにそのまま女にさせられたなんて許せねえだろ。
だが言ったんだよ、奴は。
「その件については謝罪する。だがな君も困るんじゃないかな」
「何が困るというんです、とっくに今も困ってるじゃないですか!」
「そこで小林君のことなのだが」
「ハッ……!!」
小林というのは俺と同じような手違いで女なのだが男にされてしまったやつのことだ。同じクラスのあいつは速やかにクラス内だけに正体をばらし、人気者となった。
「だがどうだね、君の場合は。女が男ならそういうのが好きな奴らもいっぱいおるだろ?だが事態は違う。君は男だ。男が女になっていたなんて知れたら気味悪がられるだけだろう」
「……ひどい差別だ」
「それが君は十分女として通用する。肌もきれいだし顔立ちも良いし、スラっとした四肢は逆に女の子の憧れだろう?」
「だけど…!!」
「それともう一つ。二人目の性別偽装該当者が出ることで生徒の不安感は上がってくる。もしかしたら男だと思っていたやつが女かもしれないその逆かもしれないと揶揄われたりいじめにつながると賢い君なら思うだろ?」
俺は言い返せなかった。昔から自分勝手で人に迷惑をかけるのは嫌だった。俺もその一人だったからだ。俺は渋々校長の話を聞き入れた。
そうして今ここにいるわけだ。
ここは教室。俺は人より早く現場につきたいやつなのでまだ人はあまりいなかった。自転車置き場には自転車はまだ5~6台しか置かれていない。
おっと、奴が来た。小林だ。先日に正体をばらしているという事もあって俺の目も小林へ向いた。
ダメだ、可愛い。
いけないいけない。俺は女だ、そうだ女だ。
ここで奴が教室から出て行った。一体何をしに行くのだろう。
俺はすかさず後を追った。すると俺の友達のゆかりちゃんとほのかちゃんといくつかがくっついてきた。幸いなことだ。これで奴に目を付けられてもカムフラージュになるだろう
「何か用事でもあるの」
いきなり言われたものでドキリとした。危ない。
俺は顔を隠しそそくさと教室に戻っていった。奴め、ただ廊下をぶらぶらと歩きまわっていただけなのだ。
一時限目が始まった。一時限目は国語で、文法のお勉強だ。
朝から疲れがとれずにしばらくぬぼーっと授業を受けていたら先生がいきなり
「文章段落文文節単語ッッ!!」
とまとまりが大きい順に早口で言ったものだから思わず噴出した。
あれでよく噴出さなかったなあと感心しながら小林を見ていた。
二時限目は体育だった。運動系は嫌いで退屈だったため寝ていたので覚えていない。
三時限目は家庭分野。
隣の席のやつとその周りが騒がしかったので、いくらか注意していたのだが。いきなり先生がキレ始めて近くに居た俺までもこっぴどく叱られた。理不尽な世界だ。
奴も怯えてるんじゃないかとちらっと小林の席を見てみた。呑気にお昼寝タイムだったぜこの野郎。
四時限目は歴史。
新人ホモ・サピエンスという単語にハマってしまった。なんでハマった単語が"ホモ"・サピエンスなのだろうか。人知れず理由がある気がする。
小林の腹がうるさかった。
給食。特に何もなかった。あとカレーの時の献立って毎回同じような気がするのって俺だけ?
昼休み。ゆかりちゃんとほのかちゃんとその他もろもろと一緒に小林の話をしていた。今度遊びに誘ってみようなどという会話が繰り広げられる中、俺は話に合わせて聞き流しているだけだった。一緒に遊ぶなんておこちゃまみたいなことは御免だ。でも一緒に話してみたいとは思った。
何か決まったのか話をやめどこかへ向かう。俺もあわててついていくが、まあどこに行くかは話の流れで見当はついている。やはり小林か。
「今日遊べる?」
ほのかちゃんが言った。
「あー、ごめんね。正直いろいろとやらなきゃいけないことがあって。土日なら大丈夫だけど」
なるほど、奴も一人で暮らしていると言っていたし俺と似て大変なんだな、分かるぞ。
「じゃあ土日どっちかで遊ぼう。あとでメールするね!」
ほのかちゃん猛プッシュ。頑張るなー。
ところでカレーと一緒にグレープフルーツ出すのやめない?カレーと一緒なら食べるだろって考えだろうけどカレーと一緒でも食べねえよ?クラスの大半食べてねえよ?正義感が強い俺は苦いの我慢して食べたけどさ。ああもう無理、水飲んで洗い流そう。
五時限目は英語。
両親からの教育と生まれ持った才能のおかげで勉学においては引けを取らすかなり優秀な生徒としてちょっぴり有名だった。おまけに可愛いとか言われているみたいなのだが俺にはおまけは不本意なのだ。
英単語はスラスラと書けた。
六時限目は総合。
担任が
「女子なら一度スカートを穿け」
と言ってスカートをもってきて上手く言いくるめたため小林は渋々女子更衣室に向かった。
あとは女子数名を挙げて更衣室を見に行かせた。楽観していた俺も呼ばれて
「おr…わたしもですか?!」
と。
「女子なら普通だろ、何か不満か?」
と聞いてきたので平然を装い指示に従った。
まさか、というか普通のことなのだが、予想していなかったので驚いた。
それにしても女子更衣室ね…。
俺は早着替えの術と言ってこっそり見られぬところで僅か20秒で着替えるという超人的な技を習得したためまだ体のことはバレていない。
言っても女子なんて見慣れているから気にするような問題も無くなった。今では同性みたいな感じだ。いや、その感覚は危険だな。気を付けたほうが良い。
なるほど、小林やはり女なのだな…。いけない見るな、これ以上はダメだ。
するといきなりゆかりちゃんが
「さらし取ってみたら?」
と提案。
ヤバい。どうしよう。ヤバいヤバいヤバイヤバイ。危機的状況じゃないすかぁぁ!!耐性ないよ、早いよ!いくら見慣れているとはいってもそこまでいくのは健全で純粋な男子にとっても刺激が強すぎなんじゃな…
「やだから、外に行ってて」
あっはい。
着替え終わって教室に戻ると皆一斉によどめき出した。歓声が巻き起こり隣の教室の扉が閉められ。担任にまたもや言いくるめられた小林は登下校もスカートを穿く羽目になってしまった。俺にはさほど関係は無いのだが。
放課後、小林は先に帰ってしまってなぜか少し寂しかった。
小林も俺ら女子組と同じく部活に入っていないため、早めに帰宅するのだ。
女子組は仲の良いゆかりちゃんとほのかちゃんとまたそれぞれの友達が集まってできた大体五人のグループだ。時と場合によって人数は変動するが、何故か俺が女子組の影のリーダーになっている。普段はおとなしくしていても、周りの女子たちが俺に合わせて行動してくれるのだ。俺は時間がないからやらなかったけど部活はちゃんと入ってほしかったのに。
俺が買い出しの為近くのスーパーに寄っていくと言うと、女子らは俺に合わせてついてきた。いい加減正体がバレてないか不安だ。
スーパーで買い出しを済ませルと同時にレジに突っ立ってる友人と今月の生活費もろもろの話をして店を出た。それにしてもあの人、男なのによくあんな仕事ができるよな。顔が良いからだよなたぶん。客引きに繋がるのだろう。
と思っていた矢先、なぜか店から小林が出てきた。なぜかというか、俺と同じ理由だろう。
ちょっと声をかけてみるか。
「あれ?勇姫(小林の名前)じゃん」
"姫"って名前についている時点で女だと疑わなかったのか誰も
「なにやってんの?もしかして買い物?」
ゆかりちゃんが言った。
そうでしょ。買い物だよ。
「そうだよ。」
だろうね。
スーパーって買い物以外何かできたかよ。
それよりも奴の服装が気になる。案外気に入ってるのかもしれない…。
どうなのだろうか。
「うわー、勇姫が女物着てるとか新鮮~w」
ほのかちゃん。たぶんそれ傷つくと思うよ。本人。
小林は無言だった。
しばらくして口を開いたら
「じゃあね」
と挨拶をして帰ろうとした。
ほら、やっぱり傷ついてるじゃんよ。
とそこでゆかりちゃんが
「そういえば勇姫の家って言ったことなかったなぁ。買ったもの少し持ってあげるから家いかせてよぉ」
マジかよ。俺は一人暮らしだから早く帰らないといけないとかないけどさ。
どうすればいいんだよ、小林すごい迷惑そうじゃん。何とかして口実を……
「私は門限があるからもう帰るね」
ナイス!女子組の一番気の弱そうな子の一言で俺は救われたのであった。
「わたしも家の門限が厳しくて…。残念だけどまた明日ね♪」
俺も肖るんだ!彼女に!
「確かにこのみちゃん頭いいからなー。門限とかすごい厳しそう……。」
ほのかちゃんも良い後押しをしてくれたおかげで俺は何とか家に帰ることができたのだ。
「俺も行きたかったなあ」
それは別の世界線の俺が果たしてくれるだろう。そういう女の子な展開はなんかいろんな人が怒りそうだし。俺にできるのはせいぜいこれぐらいだけなんだよ。
さて皆様。俺のお楽しみいただけたでしょうか。小林の頭の中も一緒に見れたらもっと楽しいんだろうなあ。俺はただのモブキャラでいいんだ。目立たなくていいんだ。その後どうなるのかは温かい目で見守ってくれ。
次会うことは無いだろう。どうか小林の頭の中で俺を見つけてくれ。
いつもと違うものを書きたかったのですがやはり私にはこの書き方は合わないっぽいです。
それよりも今時生徒個人が契約書にサインって奇妙な学校ですね。