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always be with  作者: はるあみ
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 ハート・クラという男は、予想通り普通の真面目なサラリーマンだった。本名は倉科岳という。

 倉科の中にはメールで遣り取りをしたときに漂う異常性はどこにもない。私が感じた異常性は、きっとネットの中という異常な空間が作ったものなのだろう。ただ、とても辛そうな顔をときおりする男だと思った。

「こんにちは」倉科は緊張しながらも、懸命に笑顔で挨拶するのが分かる。

 倉科と話した喫茶店はシュークリームが有名な店で、私も前から気にはなっていた。倉科の勧めどおりシュークリームと紅茶を注文し、私とNPO法人との話をした。

「離婚してるんです」話の流れで、私は自分が離婚していることを告げ、そのとき初めて自分が離婚した女であり、それは人にはいいづらいことだと感じた。

「そうなんですか」身構えながら言った私の言葉を、軽く聞き流しアップルパイも美味しいのだと教えてくれた。

「不思議な縁ですね。僕が自殺サイトを見なくて済むようになったきっかけを作ってくれた人と、僕の詩を初めて褒めてくれた人が長い長い糸で繋がっていたなんて」

 サイトを通じて何度が話をするうちに、男は死について詩を書くように勧めた。

【君の感性はきっと詩に向いてると思う。短い文章で死について書いて欲しい】

 男は理由を言わず依頼した。

 強がりで打たれ弱い倉科は、普段は出来るだけ粗野な言葉を使っていたが、それは自分の中にある言葉とは違うといつも思っていた。だから、詩を書けと言われた時には驚いたが、やってみたいと思った。

「本当は才能なんてないんですよ。顔の見えない世界だからこそ、詩を書くことが出来たんだと思います」

 そういう倉科からは、粗野な面など見えない。むしろ、ナイーブで危なっかしいほどだ。

「僕は凄く攻撃的な人間だったんです。自分と意見の合わない上司とは徹底的に口論をしました。それが、正しいと信じてね。

 でも、そのせいでリストラになりそうな立場に追い込まれました。

 自分は間違っていない。最初はずっとそう考えて悩んでました。会社に行ってもたいした仕事はなく、何度も辞めてやろうとおもいながら、次に何をするかも見つからないまま、悩んでばかりです。

 それが、詩を書き出してから変わったんです。と、言うよりも天狗さんと話しているうちに変わったんでしょうね。

 僕の書いた詩を天狗さんが感想を言ってくれる。それが、きっとカウセリングになったんでしょうね」

 NPO法人の代表は高尾という名前で、みんなから天狗さんと呼ばれている。

「その天狗さんはカウンセラーもしてるんですか?」

 私は熊川が鬱になったとき、心療内科というもの、そこでカウンセリングという医療行為を行っていることを知った。

「違いますよ。天狗さんとの遣り取りが、結局は僕にとってカウンセリングになっただけです」

 私は天狗という男がとても恐ろしい存在のように感じた。そして、倉科というのは、私を天狗に導く使者のように思える。

 へそ曲がりで頑固な私は、それが運命だと思うと逆らってみたくなる。絶対に天狗には逢わない。私は心に誓った。

「高尾だから天狗なんだね」

 彼は私の報告を面白そうに聞いている。

「運命だから従わないんだ」

 私の耳が痛くなるほど電話の向こうで彼が笑う。離婚してからの方が、彼は大声を出して笑うようになった。

「でも、私が逆らって天狗に会わないことも実は運命はお見通しなんじゃないかとも思うのよ。そんな風に考えると、やっぱり運命には逆らえないように出来てるのかな」

「逆の逆が真理ってこともあるからね。とにかく、危険なことに首を突っ込むのはやめてくれよ」

 彼との電話はいつも十分か十五分。それ以上話していると、彼が「愛してる」と言い出しそうだったから。

「愛してる」に「ありがとう」で返すのは辛い。出来るなら、「愛してる」には「愛してる」で返したいから。


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