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断章「灰雷」

 

 破壊が好きだ。

 殺戮が好きだ。蹂躙が好きだ。攻撃が好きだ。殺傷が好きだ。断絶が好きだ。

 悲鳴を聞くのが好きだ。苦しむ様を見るのが好きだ。悲しむ様を見るのが好きだ。怒り狂う様を見るのが好きだ。怯える様を見るのが好きだ。もがく様を見るのが好きだ。息絶える様を見るのが好きだ。

 未来を奪うのが好きだ。希望を奪うのが好きだ。夢を奪うのが好きだ。物を壊すのが好きだ。物を崩すのが好きだ。物を消し飛ばすのが好きだ。物が積み重ねてきた歴史を消し去るのが好きだ。

 形あるものを破壊するのが大好きだ。

 トュループは心の底からそう思っていた。

 

 彼は、この世界で最も差別はしない者であると言っても過言ではない。

 人間も、同胞『モンスター』も、混血種も、動物も、そしてこの大地も。命あるもの無いもの関わらず、彼にとって自分以外のすべては破壊の対象でしかないのだ。

 故に『モンスター』によく見られるような、群れや集落に混ざることはない。手下を引き連れることもない。

 己の身ひとつで。

 定住も永住もせずに、この世界を渡り歩いている。

 そして目をつけたすべてのものを破壊して回るのだ。

 差別はない。区別もない。見境いもない。ただ破壊する。自分が快楽を得るためだけに。

 それは真の意味で『モンスター』らしい生き方と言えるだろう。

 そんなトュループであるが、なるべく破壊しないと決めているものがいくつかあった。

 強者。そのひとつがそれである。

 気ままに放浪し破壊をし続けていれば、戦いになることも少なくない。

 その中で出会った強者。最低でも自分に血を流させることのできた相手には、トュループは好意に近いものを感じることがあった。

 彼の力の前では、大抵の者は言葉通りの瞬殺をされてしまう。

 そんな中で攻撃をしのぎ、なおかつ反撃し、ダメージを与えてくるような希有な敵。

 そういう強者をトュループは気に入るのだ。

 しかしやはり、そうそういるわけではない。ここ最近で出会った中では、たったのふたりだけだ。

 混血種の、若い男女のふたり組。

 男の放つ『魔術』と女の扱う氷の剣技が見事に合わさり、トュループは多少の手傷を負った。

 勝つこと自体はたやすかったが、トュループはそれで満足し、戦いもなかばにあっさりとその場をあとにした。

 たまにはそうして、「戦いごっこ」というものもしてみたくなるのだ。

 故に生かしておく。またのちのちの遊び相手とするために。

 

 今日も今日とてトュループは行く。

 気ままに、気まぐれに旅をする。

 焦土と化した地の上空から哄笑が聞こえてきたら、それはきっと彼のものだろう。

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