ファースト・コンタクト
ぐにゃり、視界が一瞬歪にゆがんだ。
「え・・・・・?」
長く座った後の強い立ちくらみのような感覚がミウを襲った。少し体がふらつく。何があったのか分からないままあたりを見渡した。そこは・・・・・・・・・先ほどまでの路地裏ではなかった。
「どこ・・・・・ここ・・・・・」
不気味に薄暗く大量のトーテムポールが立ち並ぶ空間にたった一人でミウは立ちすくんでいた。その中に遠くに一本だけ巨大なトーテムポールが聳え立っている。
ズモ・・・・・・、巨大なトーテムポールが動いたように見えた・・・・・・いや、動いた。
「え・・・・・・?」
ズモ・・・・・、ミウの周囲に立っていたトーテムポールまでもが動き出した。ズモ・・・・・ズモ・・・・・・・悪いことにトーテムポール徐々にミウの周りに接近してくる。
「こ・・・・・・来ないで!」
ズモ・・・・・・ズモ・・・・・ズモ、近寄ってくるトーテムポールの数がさらに増える。遠くに見えていた巨大なトーテムポールもかなり近くなっている。
今まで震えながらも何とか気力を保って立っていたミウだがそれも既に限界となりへたりこんでしまった。そのうちにもトーテムポールはミウを囲み円状に並び、遠かった巨大なトーテムポールはもうあと10mと言うところまで迫っていた。
「もう駄目だ」そう思った、ここがどこなのかは分からないしこのトーテムポールが何なのかも全く分からない。それでも「自分はもう駄目だ」そう思った。「悪い夢であって」そう思いミウは目を閉じた、しかしトーテムポールがその輪を狭めるべく動いている音は聞こえた、さらに他よりも大きな音で巨大なトーテムポールが目前に迫っていることが分かってしまう。ミウはさらに強く目を瞑った。
その時だった、ガラガラと何かが崩れる音が背後からする。恐る恐る目を開けてみると目前まで迫っていた巨大なトーテムポールは4mほどのところで歩みを止め、周りを囲っていたトーテムポールも動くを止め、その沢山彫られた顔を全てミウの真後ろへと向けていた。
「な・・・・・・に・・・・・?」
ミウも後ろを向いた、そこにいたのは・・・・・・真っ黒な外套を纏い、真っ黒な一本の長剣を持った青年。その姿はまるで昨日の夜に見た夢の中でたった一人戦いに赴く青年のまま。
「誰か巻き込まれたのは分かったが間に合ってよかっぜ。大丈夫かお嬢さん?」
口元に微笑を浮かべ余裕の表情でつかつかとミウに歩み寄る青年。ミウに近寄る間に一本のトーテムポールが驚異的な跳躍で青年に襲い掛かったが事も無く長剣で切り裂きミウを抱き起こした。
「だ、誰?」
「さあな、ジョン・ウェインとでも名乗っておこうか。ここで大人しくしといてくれよ、2分でいつもの日常に戻してやるからさ」
さもなんでもないように青年は言うと手にした長剣を構え、手近なトーテムポールから切り裂いていく。ついにミウの周りを囲っていたトームポールたちはバラバラの木っ端となり、残るは巨大な一本のみとなった。
「さーて、残るはデカブツだけか?刻んでさっさと終わらせてやるよ!」
青年は長剣の柄を握り直すとトーテムポールとの距離を一息で詰め一閃、トーテムポールを真っ二つに叩き斬る。
しかしトーテムポールは達磨落としのように長さが詰められただけで健在だ。
「クソッ」悪態をつくともう一閃もう一閃とトーテムポールの長さを詰め終いには自分の膝ほどの高さになったトーテムポールに長剣を突き刺し空中に放り投げ落ちてくるトーテムポールを縦に真っ二つに両断。
青年は長剣を振り刀身にまとわりついた木っ端を振り落とすと虚空に消してしまった。と、その途端に今までいたトーテムポールばかりの荒涼とした空間はいつの間にかもとの路地裏となっていた。
「お嬢さん、大丈夫か?」
青年はミウを抱き起こし無事を問う、「だ、大丈夫です」とミウが答えると青年はその場を立ち去ろうとした。
「待ってください」
ミウは青年を呼び止める、
「さっきの・・・・・・さっきのってなんだったんですか?」
どうしても先ほどのことが信じられなかったからだ。
「夢さ、悪い悪い白昼夢さ」
青年はそれだけ言い残すと足早に立ち去っていた・・・・・・・・・
「な、なんだったの?」
残ったのは謎と路地裏を駆け抜ける風だけだった。
どうもお久しぶりです。
今回は短めであります、前まで書いていたシロクロとは話の流れが全く違います。
理由は簡単「こっちのが書き易くね?」せっかく考えたお話もこんな奴に考えられたのでは不幸だろう・・・・・・まあ全ては僕の文章力不足の賜物なのですが。
よし、国語の勉強をしよう。
ではまた次回。