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本当にあった異世界の怖い話  作者: ぽてと


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2/10

【File.01】死者からのクエスト報告(2/5)

「はい、約束のキックバックだ。……今回もいいカモだったぜ、エレーナ」


数日後の夜。冒険者ギルドの裏路地で、エレーナは薄汚れたローブを着た男から、ずっしりと重い革袋を受け取った。

中を覗き込むと、鈍く光る金貨や銀貨がたっぷり詰まっている。


「ふふっ、ご苦労様。あの子たち、ちゃんと『嘆きの森』の奥でくたばってた?」

「ああ。魔獣にこってりやられて、原型を留めないくらい無惨なモンだったよ。新品の鋼の剣もローブも、無傷で回収できた」


男は死体漁りを生業とする悪党だ。エレーナが新人を死地に送り込み、彼が遺品を回収して売りさばく。この持ちつ持たれつの関係で、彼らはこれまで何度も甘い汁を吸ってきた。


しかし今日、男の顔色はひどく悪かった。周囲をキョロキョロと見回し、しきりに自分の腕をさすっている。


「……でもよ、今回はちょっと気味が悪かったんだ」

「気味が悪い? あなたがそんなこと言うなんて珍しいわね。死体なんて見慣れてるでしょうに」

「いや、そうじゃねえんだ。死体の首元にあったはずの『ギルドタグ』が、三人とも消えてたんだよ」


ギルドタグ。それは冒険者の身分証であり、銀でできているため換金性が高い。通常なら魔獣が食べることもなく、死体のそばに落ちているはずのものだ。


「誰か別の業者が先回りして掠め取ったんじゃないの? 臆病ね」

「それだけじゃねえ! あいつら、死んでるのに『手』だけはガチガチに固まってやがったんだ。あんたが適当に吹き込んだ【啜り泣きの血草】を、骨が折れるほど強く握りしめて……それに」


男の顔が、恐怖でヒクッと引きつった。


「あいつらの目、ひん剥かれたまま、ずっと俺たちを睨んでたんだ。まぶたを閉じさせようとしても、どうやっても閉じなくて……まるで『まだ終わってない』って言われてるみたいでよ……」

「……くだらない」


エレーナは冷たい声で男の言葉を遮った。


「死後硬直でしょ。そんなくだらない迷信に怯えるなんて、あなたも焼きが回ったんじゃない? もういいわ、とっとと消えなさい」


エレーナは冷たく言い放つと、男を裏路地に残してギルドの裏口へと戻っていった。

男の怯えなど、彼女にとっては滑稽な戯言にすぎなかった。手元にある金貨の重みだけが、彼女にとっての「絶対的な真実」なのだ。


* * *


深夜。

職員がすべて帰り、静まり返ったギルドの事務所で、エレーナは一人残業をしていた。

とはいえ、仕事をしているわけではない。先ほど受け取った裏金を自分の隠し金庫にニヤニヤしながら移し替えているだけだ。


「……ふふっ、馬鹿なガキ共。おかげで来月の新作ドレスが買えそうね」


金貨を指で弾き、心地よい金属音に酔いしれる。

その時だった。


——ズリッ……、……ズリッ……。


分厚いギルドの正面扉の向こう側から、何か重いものを引きずるような音が聞こえてきた。


エレーナは金貨を数える手を止めた。

深夜のギルドは完全に施錠されており、一般の冒険者は立ち入れない。夜間に外を歩き回るのは、泥酔したならず者か、夜回りの衛兵くらいのものだ。


——ズリッ……、グチャッ……、ズリッ……。


音は徐々に大きくなる。

足音、ではない。まるで、まともに歩けない者が、這いつくばって無理やり前へ進んでいるような……湿った、ひどく嫌な音だった。


「……衛兵さん? もう閉館してますよ」


エレーナは眉をひそめ、扉に向かって声をかけた。

返事はない。

ただ、その「引きずる音」は、ギルドの正面扉のちょうど目の前でピタリと止まった。


静寂が降りる。

気のせいだったのか。そう思ってエレーナが息を吐き出した、次の瞬間。


ガタガタガタガタガタッ!!


施錠されているはずの重厚な木の扉が、外から力任せに激しく揺さぶられた。


「ひっ!?」


エレーナは椅子から転げ落ちた。

外からは何の話し声も聞こえない。ただ、無言のまま、異常な力で扉がガタガタと鳴り続けている。

そして、ゆっくりと。

鍵がかかっているはずの扉の真鍮のドアノブが、ギギギ……と不気味な音を立てて回り始めた。


その隙間から、ひどく生臭い、土と血が混じったような【死の森の匂い】が、音もなくギルドの中へと流れ込んできた——。

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