織田悠馬と再会
深夜5時頃。自然寮。
山崎は静まり返る廊下を歩き、織田の部屋の前で立ち止まった。ドアをノックしながら声をかける。
「織田くん。開けてくれないか」
だが、返事はない。ただ暗闇と静寂だけが広がる。
「信じられないことが起きたんだ。音楽室の窓から花咲さんが飛び降りた。織田くん、ごめん」
彼の声は真剣だったが、それでもドアは閉ざされたままだった。無音の時間が重たく流れる。山崎は一つため息をつき、諦めたように振り返り、自分の部屋へ戻ろうとした。その時――
【ガチャッ】
鍵が解除される音が響く。山崎が足を止めて振り返ると、ドア越しに弱々しい声が聞こえた。
「だから…言っただろ…」
その声はかすれていて疲れ切っているようだった。
「本当にごめん。君の言葉を信じなかったこと、今になって後悔してる」
ゆっくりとドアが開く。薄暗い部屋の中から現れた織田は、ボサボサの髪に虚ろな目をしていた。その姿は何日も眠れていないかのように疲弊しきっている。
山崎は織田の顔を見つめ、静かに事の経緯をすべて説明した。
「今日は土曜日だから学校は休み。この後、僕の部屋に来てくれないか?みんなと作戦会議をしたいんだ」
「…みんな?」
「京本くんと広瀬さんと僕。そして、織田くんにもぜひ聞いてほしいことがある」
「…田中は呼ばないのか」
「呼ばない。彼は恐らく、あっち側の人間――僕らの敵だよ」
山崎は軽く首を振る。
「…分かった。行くよ」
「ありがとう。また後で声をかけるよ。これから花咲さんの親御さんが荷物を受け取りに寮に来るみたいだから」
そう言い残し、彼はエントランスに向かって走っていく。
寮の出入り口では、花咲薫が車椅子で父親とともに寮の管理人と荷物の受け渡しをしていた。そのそばには広瀬凛の姿もあり、花咲と何やら会話を交わしている。
「花咲さん!」
「どうも・・・。おはよう」
彼女が振り返り、ほのかに微笑む。
「腕の怪我は大丈夫なの?無理してないかい?荷物は僕も運ぶよ」
山崎は心配そうに尋ねる。
「ありがとう…ごめんね」
「どうして花咲さんが謝るんだ。何も悪いことなんてしてないじゃないか。それよりも学校を辞めるって話は本当なのかい?」
その言葉に広瀬が割って入った。
「ちょっと、あんまりでしゃばるんじゃないよ」
「大丈夫…。山崎くん。私、AI学校を辞める。お父さんとも相談して決めたことなの」
多くは語らなかったが、花咲の表情からAI学校を恐れている事が伝わり、山崎は返す言葉もなく、ただただ自分の無力感に絶望していた。




