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AI教師  作者: AKi
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この学校は何かがおかしい

犯人捜し


深夜0時過ぎ、山崎はふと部屋を出た。無意識のまま、気がつけば花咲の部屋の前に立っていた。ここにいるはずがない──頭ではそう理解しているのに、どうしても足が向いてしまったのだ。


扉の前でしばらく呆然と立ち尽くした後、おもむろにノックを二度叩いた。すると、中から「ガタッ」と何かが動く物音が聞こえた。


「え?」


驚きの声を漏らす山崎。寮の部屋は自動で施錠される仕組みだ。他人が勝手に入ることなどありえない。


「誰かいるんですか?」ドアノブを掴み試しに回してみたが鍵はしっかりかかっている。「いたら返事をしてください!」


その瞬間、ドアが開き中から人影が現れた。


「うるさいわね。何時だと思ってるのよ?」


広瀬があからさまに不機嫌な顔で立っていた。


「なんで君が花咲さんの部屋にいるんだ?」


「それはこっちのセリフよ。こんな時間に何しに来てるのよ、この変態メガネ男子」


「僕は花咲さんが心配で…もしかしたら戻ってきていないかと思って確認しに来ただけだ。それより君こそ、どうやってこの部屋に入ったんだ?」


「はぁ…私は彼女に頼まれて荷物をまとめているの。これで納得する?」


そう言ってポケットから花咲の学生証を取り出し、山崎の目の前に突きつけた。


「それで部屋に入ったのか…羨ましい」


「やっぱり下心。気持ち悪いわね」


広瀬の冷たい声に山崎は顔を赤らめながら視線を逸らす。


「中に入りな。手伝ってほしい事があるから」


「本当に?も、勿論です」


緊張しながらも山崎は慎重に足を踏み入れる。彼の知る男の部屋とはまるで異なる世界で、甘い香りが空気に漂い床にはピンク色の丸い絨毯が敷かれている。その上にはいくつもの段ボールが雑然と置かれていた。


「教科書を段ボールに全部詰めてくれる。明日彼女の親が来て全部まとめて持っていくみたいだから」


「え?それってまさか・・・」


「彼女、心が折れちゃったみたいね。AI学校から地元の学校へ転校するみたいよ」


「どうして君がそれを知ってるんだい?」


「昨日バスで病院にお見舞いに行った時に直接花咲さんから聞いたからよ」


淡々と、どこか感情を押し殺した声で答える。


「そ・・・そんなぁ・・・」


その場に膝から崩れ落ちる。無言の時間が続き、ふと広瀬の方を見ると、背を向けたまま立ち尽くして微動だにしない。様子がおかしい事に気付き山崎は立ち上がると、後ろから声を掛ける。


「あのう、広瀬さん?どうしたんですか」


「なにも・・・なんでもないわよ・・・」


その小さな声は涙を流しながら乱れていた。山崎は驚きながらもこの機を逃すまいと質問をする。


「二人はどんな関係なの?よく部屋に二人で入るところを目撃していたんだけど、関係性が不思議で気になっていたんだ」


「友人よ。私には持っていない女性らしさ・・・優しさを持つ大切な友人」


鼻をすすりながら答える。


「確かに・・・」


山崎の言葉に広瀬は急に顔をこわばらせ睨みつける。


「とっとと手と足を動かして荷造りを手伝いなさいよ、この役立たず男子」


鋭い言葉に彼女のいつもの表情が戻っていた。口元には少しだけ笑みが浮かび、その態度に山崎も少し安心する。二人は黙々と段ボールに荷物を詰め始めた。部屋には段ボールをこすれる音とかすかな息遣いだけが響いている。


しばらくして、沈黙を破るように山崎が口を開いた。


「原因は何だと考えていますか?花咲さんが音楽室の2階から飛び降りた理由について」


広瀬の手が一瞬止まる。彼女は段ボールの中を見つめたまま、低い声で答える。


「さぁ何かしらね・・・でも、この学校は何かがおかしいわ」


「やはり気付いていましたか…。僕もずっとおかしいと思っていました。でも証拠がないと、高校生の僕らが何を言っても誰も信じてくれない」


「僕ら?私を巻き込まないでくれる?」


冷たい視線を投げかけられ、広瀬は静かに言い放った。


「そういうつもりでは言ってないです。ただ、こういうリスクのあることは男の僕らの役割だと思うんです。京本くんや織田くんにも相談してみようかと」


「何を企んでるの?」


「一連の悪戯の犯人を捜すんです。それに、このAI学校で起きている不思議な現象も」


不思議そうに耳を傾ける広瀬の様子を見て、山崎はこれまでの出来事を順を追って説明し始めた―。



「音楽室に閉じ込められた?織田がそう言ってたの?」


広瀬は眉をひそめながら山崎の言葉に耳を傾ける。


「はい。閉じ込められた上に、大音量の音楽が流れ続けて、気を失いかけたと言っていました。つまり、これはAI教師の仕業かもしれない。それに、花咲さんが音楽室の窓から飛び降りたのも…いや、飛び降りるように仕向けられた可能性が高い」


「そんなことを言っても誰も信じないわよ。この学校には監視カメラも設置されていないし、証拠もないんだから」


広瀬は深いため息をつきながら腕を組む。山崎は表情を変えずに、少し身を乗り出して言葉を続ける。


「僕には考えがあります。その前に一つ確認したいことがあるんだけど…」


「なによ。言ってごらん」


「先日、織田くんの机の上に薔薇の花が置かれる悪戯があったけど、あれは君の仕業じゃないの?」


「…ハァ、呆れるわ。そんなことが聞きたいわけ?私じゃないわよ。彼がどうなろうと全く興味なんかないし」


広瀬は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに呆れたように息を吐いた。


「だとしたら持田由美さんかな?彼女には前科があるし…」


「前科…?何よ。勿体ぶってないで言いなさいよ」


広瀬が食い気味に問い詰めると山崎は去年の出来事を持ち出した。


「去年、京本くんの体操服事件があったでしょ?実は、あれの犯人は持田さんなんだ。証拠も掴んでいる。だから、今回の織田くんの机に薔薇を置いたり椅子に悪戯をしたのも彼女なんじゃないかと…」


広瀬は黙って聞いていたが、しばらくして低い声で答えた。


「…そうね。京本への体操服事件の犯人は持田由美よ」


「え?どうして知ってるの?」


「写真を直接見たから。彼女が犯行に及んでいる時のね」


「それはどこで見たの?」


「校長室よ」


山崎はその言葉に息を呑んだが、すぐに何かを閃いたように目を輝かせる。


「ビンゴ!僕が運営している掲示板にも、持田由美が犯行に及んでいる現場写真が投稿されていた。その発信元が職員室からだったんだよ!」


二人は花咲の部屋で荷造りを進めながら、AI学校で起きている一連の不思議な出来事について話し合っていた。広瀬は手際よく段ボールに教科書を詰め込みながら、時折視線を山崎に向ける。


山崎もまた、手を動かしながらもどこか上の空で、考え事をしている様子だった。ある程度片付けが終わると、山崎は手を止めて小さく息を吐く。


「僕は織田くんに一言謝らなければいけない」


唐突にそう言うと一足先に山崎は部屋から出て、織田悠馬の部屋の前へと足を運ぶ。




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