変わった恋愛方式
現場に着くと、織田は屋上へ続く階段を指さした。
「あそこの階段だよ。透明なオイルがまかれてたから足元に気をつけろよ」
指さした階段の付近には割れた植木鉢の破片が散乱している。広瀬はそれに目を留めると少し眉をひそめたが、すぐに淡々とした声を張り上げる。
「あんたは掃除しなくていいよ。私がやるから」
「何言ってんだよ。・・・もしかして同情してるのか?広瀬らしくないな」
織田は皮肉混じりに返す。
「そうじゃなくて、あんた怪我してるんでしょ?邪魔になるから少し黙ってて」
広瀬はそう言うと、モップを手に取り、勢いよく床を拭き始めた。キュキュと床をこする音が階段に響き渡る。織田はそれ以上何も言わず、オイルがモップに吸い取られていく様子をじっと見つめていた。
「俺…この学校、辞めるかも…」
しばらくして織田は唐突に呟く。その声は驚くほど低く、広瀬の手が一瞬だけ止まる。
「…そう」
「なんてな。お前のことだから、『勝手にすれば?』とか冷たく返してくるかと思ったけど、意外と俺のこと気にしてくれてるんだな」
「はぁ?ふざけたこと言わないでくれる?私はあんたみたいな男になんかこれっぽっちも興味ないから」
その言葉に織田は意外そうな顔をして問い返す。
「え?お前まさか…レズなの?」
「だとしたら何?あんたに私の感情を推し量る権利なんてないでしょ」
広瀬は一瞬だけ織田を睨むように見た後、軽くため息をついて言った。
「ま、マジかよ…。冗談で聞いたつもりだったんだけど…。お前、そういう所でも堂々としてるんだな」
3階の廊下で二人が会話していると、背後から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「ちょっと、二人とも喧嘩しないでよ」
振り返ると花咲が腕組みをし、軽く眉を寄せながらこちらに歩いてきた。
「あら、花咲さん。どうしてこんな時間に学校に残ってるの?」
「二人のことが心配だったから、こっそり残って様子を見に来たの」
そう言うと花咲は割れた植木鉢の欠片を拾い始めた。
「悪いな、面倒掛けちゃって」
「ううん、寮に戻っても特に予定ないから。それより怪我の具合はどう?」
「もうだいぶ良くなったよ。足の痛みもほとんど引いたし、全く問題ない」
広瀬がそれを聞き、少し冷たい声で口を挟む。
「怪我の心配より、勉強の復習をしなきゃでしょ。花咲さん、今夜も教えに行くから早く片付けて終わらせましょう」
「はーい。凛さんと話してると余計なこと考えなくて済むし、勉強も進むからね」
その言葉に織田は目を丸くした。
「お前ら、いつの間にそんな仲になったんだ?」
「何か問題でも?寮では変な男が寄らないように私がしっかり守ってるんだから。山崎にもちゃんと伝えておきなよ」
「もう、そこまで言わなくても大丈夫だってば~」
花咲が苦笑する。
「もしかして山崎、あれからもまた部屋に行ってるのか?」
織田は少し嫌な予感がして尋ねた。
「何回も来てるわよ。その度にいつも私が入口で追い返してるけどね」
その話を聞いて織田は呆然とした。そして山崎はやっぱり変態だ・・・と改めて確信した日でもあった。




