クラス替えの発表
翌日、AI学校の1年B組の教室は異様な空気に包まれていた。他のクラスの生徒まで集まり教室はざわついている。机や椅子は乱れ、落ち着かない雰囲気の中で、最も目を引いたのは教室の一角にあるAI教師だった。モニターは粉々に砕け散り、無残にも破壊されている。生徒たちが何度呼びかけても反応はない。
京本と田中が教室に入ってきた。二人は目の前の異常事態に驚き、足を止めた。広瀬は腕を組んでため息をつきながら、頭を左右に振っている。花咲は両手で口を押さえ、驚きのあまり今にも泣き出しそうだ。
後ろの方で生徒全員をじっと観察していた持田が、ステップを踏むようにして京本に近づいてきた。
「まさかとは思いますけど、あなたがやったのではないですよね?」
その声に京本は少し眉をひそめると、軽く答えた。
「そんなわけないだろ。俺は昨日ずっと寮にいた。何もやってねぇよ」
田中もすかさず補足する。
「昨日は学校から帰った後、校舎の出入り口が閉鎖される時間まで二人でいたから、嘘じゃないよ」
持田は疑念の目を向けながら、冷ややかに言った。
「あら?どうして昨日の出来事だと知っているの?今朝、学校に侵入してこのようなことが起きたかもしれないじゃない」
その言葉に京本と持田が一瞬、睨み合う。しかし、すぐにその緊張感が切り裂かれるように、山崎が割って入った。
「二人はただの一般論を言っただけだと思う。つまり、何も知らないから昨日のことだと素直に答えただけだろう」
その言葉が教室に響き、1年B組の生徒たちがざわざわと騒ぎ始める。ちょうどその時、遅れて織田が教室に入ってきた。
「おはよう。うわ、なんだこれ。ヤバいな」
彼の大きな声が教室を支配すると、教室にいた生徒たちの視線が一斉に織田に集まる。
「な、なに?どうかした?」
織田は驚いた様子でそう言ったが、京本はすぐに口を開いた。
「お前・・・」
「なんだよ?俺なんかした?」
織田は少し困惑した表情を見せるが、京本は問いを続ける。
「体調は戻ったのか?昨日食堂にも顔を出さなかっただろう」
「昨夜心配で部屋を尋ねたんだけど、鍵が閉まってて反応もなかったから心配したんだよ」
田中も心配そうに声をかける。
「昨日はどこにいたんだい?」
山崎が厳しく尋ねた。
織田はしばらく黙った後、何事もなかったかのように答えた。
「俺は…昨日部屋にずっといた。体調崩して寝込んでたんだよな。二人とも部屋の前まで来てくれていたのか、気付かなくてごめん。心配してくれてありがとうな」
彼は犯行を疑われまいと、妙に明るい調子で答えるもその顔には、どこか浮ついた表情があった。
このタイミングで武田教師が教室に入ってくる。
「お前ら、席に着け。これから今後の授業について説明をする」
武田教師の威圧的な声に、生徒たちは慌てて席に着き、他のクラスの生徒たちもそれぞれ自分の教室へと戻っていく。
「昨夜、学校に何者かが侵入し、B組のAI教師がトンカチかハンマーのようなもので破壊された。犯人はまだ捕まっていないが、心当たりがある生徒はいつでも相談に来るように」
その言葉に生徒たちの視線が一斉に集まる中、織田は内心びくびくしていた。しかし、表情には一切出さず、必死に無表情を貫く。
「今後の授業についてだが、B組の生徒は修理が終わるまで、A組とC組の教室でそれぞれ別れて授業を受けてもらう。分かったな?」
「修理というのはAI教師のことですか?おおよそどれくらいで修理が終わるんですか?」
山崎が手を挙げて質問した。
武田教師は少し間を置いて答える。
「AI教師の修理はおおよそ一週間で終わるそうだ。ただし、修理と言っても完全に新しい物と交換するらしいがな」
「今回の出来事、警察には通報したのでしょうか?」
広瀬がすかさず手を挙げ、真剣な表情で質問した。
正義感の強い広瀬が問うと、武田教師は少し口を尖らせながら答える。
「いや、まだだ。これから学校側で会議を行う。指示があるまで勝手な行動はするなよ」
声を張り上げる武田教師に生徒たちは一斉に返事をし、A組とC組へ移動していった。
「新しいAI教師か。やったぜ」
教室を出る際に京本がぽつりと呟く。
「静かにしなよ。また疑われちゃうよ」
「誰がやったかは知らないけど、これでAIのデータもチャラになるな」
京本と田中はC組へのクラス替えが決まった。
「とんでもないことになったな」
織田は少し疲れた様子で呟く。
「どうやらAI教師本体のデータまでもが破壊されたみたいだね。新しいAIは少なからず旧型よりもアップデートしているだろうから期待したいけど・・・」
山崎は冷静に答える。
「お前の思考は本当に変わってるよな」
織田と山崎はA組へ移動することに。
「入学して一年の間に立て続けに問題が続出してるわね」
広瀬は少し口を尖らせる。
「あら、その言葉、私への当てつけかしら?」
持田が少し挑戦的に言い返す。
「当事者も近くにいたわね。別に当てつけてるつもりはないわよ」
「言い争いはやめてよ、二人共。皆で仲良く力を合わせて、素敵な学園生活にしていきましょう」
花咲が穏やかな口調で二人の間に入る。
広瀬、持田、そして花咲は、C組へのクラス替えが決まった。




