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AI教師  作者: AKi
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AI教師破壊計画

計画実行


平日のお昼に外に出るのはまるで別次元の世界にいるかのような不思議な感覚だった。同じ年代の子はみんな学校で授業を受けている時間だ。彼は目に見えない縛りから解放されたかのような感覚に陥り、特別な時間が貴重で尊いものだと感じる。

このままAI学校へ行くのを辞めて、もう実家に帰ってしまおうか・・・そんな考えが頭をよぎると同時に、両親の顔が浮かんだ。共働きで決して裕福ではない家庭。それでも自分がAIやITを学びたいと言った時、学費の高いAI学校への進学を許してくれた。


「裏切るわけにはいかないな」


そう一言呟くと、寮に向かって歩き出す。帰宅途中にリサイクルショップの前を通ると、外から小型のハンマーが店内に陳列されているのが目についた。

それを見た瞬間、彼の体の中に稲妻が通ったかのような衝動が突き走る。


「これで壊してしまおうか・・・あいつを」


お店に入ると陳列されていたハンマーの前に行き手に取ってみる。非常に軽いがヘッドの部分はズッシリと重みがあり、日曜工具として利用するには本当に使いやすそうだった。

レジに持っていくと店員が奥の部屋から出てくる。50代後半ぐらいのおじさんだ。


「近くの学校の生徒さんかい?このハンマーは何に使うんだい」


「いや、違います。電車で2時間くらいかな、近くに住んでる友達の家に向かう途中にたまたまここを通ったんです」


とっさに嘘を吐く。人にバレてはいけない程のやましい事を考えているからだと自分でも悟ってしまう。幸いなことに新校であるAI学校の制服について店員は認識しておらず、どこの学校の生徒か判別はついていないようだ。


「そうかい。これは小さいハンマーだけど大丈夫かい」


「はい。友達の家でDIYするだけなので、この大きさで十分だと思います」


店員はニコッと笑って袋に商品を入れ、スッと手渡してきた。


「ありがとうございます」


不審に思われないように織田は口角を上げて笑顔を取り繕った。お店を出ると心臓がバクバクしている事に気付く。小型ハンマーを鞄の中に入れると、そのまま寄り道をせず足早に寮へと帰ることにした。


部屋に戻るとカバンから小型ハンマーを取り出しベッドに横たわる。丸い先端を眺めながら妄想にふける。

もしこれを使ってAI教師のモニターを破壊すればどうなるだろうか?新しいAIモニターが設置され、これまでの事がリセットされるだろうか?何もしなければこのまま何も変わらず、AI教師から無視をされたり嫌がらせを受け続け、それを我慢しながら学校生活を続けていかなければならないのだろうか?

考えれば考えるほど嫌な気持ちになっていく。いっそ何もかも消えて無くなれば悩む必要もなくなるのに、と心の中で思っていると、織田はベッドの上で自然と涙を流していた。


しばらくして、京本と花咲が心配そうに部屋にやって来た。織田は慌てて小型ハンマーを机の引き出しに入れて隠す。


「今日、早退したんだってな。体調崩したのか?」


京本が心配そうに声をかける。


「織田くん、大丈夫?まだキツイならすぐに出ていくから、教えてね」


花咲の声も優しく、織田を気遣っていた。


その言葉を聞いた瞬間、織田は耐えきれずに大粒の涙を流し始める。京本は驚き、慌てて声をあげる。


「おい、マジでどうしたんだよ。何か悩みがあるなら、俺たちが聞くからさ。話してみろよ」


織田悠馬は顔を手で覆い、少しの間黙っていた。けれど、心に溜まった思いが次々と溢れ出すように彼は静かに話し始めた。


今までの出来事、日々抱えていた悩み、そして胸の内にあった不安や孤独感。それらを彼は言葉にして吐き出した。


京本はしばらく黙ったままだったが、やがて大きく息を吸い込むと、いつもの少しぶっきらぼうな声で言った。


「……バカかよ、お前。一人で背負いすぎなんだよ。俺たち仲間だろ。もっと頼れって」


花咲も小さく頷きながら、そっと織田の隣に座った。


「織田くん、私…今日のこと、すごく心配したよ。辛いときはちゃんと言っていいんだよ。みんな同じ寮で暮らしてるんだもん」


その言葉に織田は少しだけ肩の力が抜けた。


「それにさ、どんなに嫌なことがあっても絶対に一人で変な方向に行くなよ。そんなの俺が許さねぇからな」


「うん。私も、織田くんが悲しんでる姿を見るの苦しいよ」


二人の言葉が胸に沈み織田はゆっくりと涙を拭った。


「……ありがと。ほんとに……ありがとう」


三人の間にようやく穏やかな空気が戻る。


すると京本が急に立ち上がり軽く拳を握ってこう言った。


「よし、今日はもう何も考えんな!俺らがついてる。夕飯は俺の分も半分やるから、ちゃんと食え!」


「いやそれは遠慮しとくよ…」


織田は思わず笑い花咲もクスクスと笑った。その小さな笑い声が、重かった空気をゆっくりと溶かしていく。三人の温かい空気に包まれながら、織田はようやく落ち着きを取り戻した。京本と花咲が部屋を出るころには、ほんの少しだけ心も軽くなっていた。


けれど…静かになった部屋に一人残されると、胸の奥に重く沈んでいた決意がそっと顔を出す。


引き出しから取り出すとベッドの上に置いた小型ハンマーが目に入る。光を受けて静かに転がるそれを見つめながら、織田は小さく息を吸い込んだ。


「……ありがとう、二人とも。でも……俺の決意は変わらない」


どれだけ励まされても、どれだけ優しい言葉をかけられても、AI教師に向けられた恐怖と怒り、そして『このままではいられない』という焦りが消えることはなかった。


織田はゆっくりと手を伸ばし、ハンマーをそっと握りしめた。


「これで全部終わらせる。俺がやるしかないんだ」


憎悪と悲壮を織り交ぜた織田の決意は揺らぎもしなかった。

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