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AI教師  作者: AKi
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変わり者のパソコンオタク

翌朝、AIデジタル高等学校の始業式の日。


朝6時、寮内に特別なチャイムが響き渡り、寝静まっていた空気に一日の始まりを告げる。寮生への目覚ましも兼ねたそのメロディは少し優雅でありながらどこか緊張感を漂わせていた。


織田悠馬はチャイムの音で目を覚まし、備え付けの洗面台で顔を洗って寝癖を直すと制服に袖を通し名札を付けた。食堂へ向かう足取りはまだ朝の静けさを引きずったように少しゆったりしている。


エントランスのモニターには「おはようございます」と表示されていた。


食堂で合流したのは同じく寮生の京本と田中。この日の朝食はカニクリームコロッケ定食かシャケ定食、ごぼう定食の三択だったが織田はシャケ定食を手に取る。


「昨日、変な奴が部屋の前に来てさ。夜中に起こされてマジでムカついたんだよ」


田中は少し怯えた表情で「だ、誰が来たの?」と尋ねる。


「ぐっすり寝てたら部屋の外からドンドンって叩く音が聞こえたんだよ」


「まさか…お化けじゃないだろうな?最近、全国の寮で起きる心霊現象が流行ってるって動画で見たぞ」


京本は茶化すように笑いながら言った。


「え、新築なのにもう出るの?」


田中は顔を青ざめたままカニクリームコロッケを箸で持ったまま止まってしまう。


「お化け?ふざけるなよ」


「お前、やけに怖がってるけど何か見たのか?」と京本が田中に聞く。


「見たというか…昨日の夜中、廊下を一人で歩いてたら『侵入者を感知しました』って女性の声が突然聞こえたんだ」


「侵入者?」


織田は驚きもせず平然とした表情でシャケをひとつまみしながら反応した。


「で?どんな奴だったんだ?」


「それが…怖くて見てないんだ。声を聞いた途端慌てて部屋に戻ったから」


「それ、何時ごろだったの?」と織田が聞くと田中は少し考えて「確か夜の11時ごろかな」と返す。


「夜の11時に侵入者か…なんか怪しいな」


京本はそう言いながら一番早く食事を終えると水のお代わりを取りに席を立つ。


「じゃあ、さっき織田君の部屋を叩いた音がしたのって…もしかしてその侵入者?」


田中が不安げに聞く。


「いや、そいつ寮に住んでるって言ってたよ」


「名前は?何て奴だ?」と京本が水を持って戻ってくる。


「それが…寝起きだったから思い出せないんだよな」


「お化けの侵入者だったんじゃねぇの?」と京本が笑いながら田中のカニクリームコロッケに手を伸ばす素振りをする。


「京本君、さっき同じもの食べたじゃないか」と田中が抗議するが京本は「えへへ」とおどけて額の汗を拭う。


ふと京本は何かを思い出したように話し出した。


「そういえば、夜中の0時ごろにエントランスを通った時モニターに知らない名前が表示されてたんだよなぁ」


「モニターに名前?何て書いてあった?」


「確か…山崎海斗って名前だったかな」


「そいつだ!」


織田は思わず声を張り上げる。


「急にどうした?」


突然の大声に京本と田中が驚いた表情で彼を見つめる。するとふいに眼鏡をかけた真面目そうな男が三人の前に現れ向かいの席に座った。その男は「おはよう。昨夜はどうも」と落ち着いた声で挨拶し、ごぼう定食をテーブルの上に置いた。


「こいつだ!昨日、夜中に俺の部屋を叩いて起こしたのはこいつだ!」


「いやー、昨夜の実験は上手くいったよ。途中まではね」


山崎はにっこり笑みを浮かべ軽く会釈する。


「実験?」


田中と京本が口を揃えて尋ねる。


「そうさ。僕はホワイトハッカーを目指してるんだ。この学校でAIについて学んで将来はITの大企業、ゾーン社で働くのが夢なんだよ」


「そうか、頑張れよ」


京本は軽く笑い田中と一緒に食器を片付け食堂を出ていく。朝早いこともあり学校へ登校する時間が迫っていた。


「お前、変わってるな」


織田は呆れた顔で言い残し夜中の一件に少し苛立ちながら食堂を後にした。


山崎はごぼうご飯を頬張りつつ「ふふ…もっとハックしたいなぁ」と小声でつぶやき一人不敵な笑みを浮かべる。

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