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静かなる選別
AI高等学校では1学期が終わる頃になると、生徒たちのテスト結果、授業中の態度、さらには日常的な行動データまで、AI教師が緻密に分析して整理する。そしてそれらは学校のネットワークを通じて、開発元であるゾーン社に送信されていた。
個々の生徒を識別できる詳細なデータ、いわば『個人情報』が、民間のIT企業に日々吸い上げられ、統計として蓄積されていく。これに対して日本政府は実態を把握していなかった。いや、正確には、把握する能力すらなかったと言った方がいいのかもしれない。
むしろ日本政府はゾーン社に多額の税金を投入し、AI技術のさらなる発展を推進している状況だった。その名目は『教育改革』。だが、その裏で何が行われているのかを追及しようとする者はいない。
国民の個人情報を保護する――かつて掲げられていたはずのその理念は今や形骸化し、政治家たちにとって目に見える経済効果や税収に直接つながらない問題は、もはや関心の外に置かれていた。
そうした背景の中、AI教師による選別は静かに進み続ける。選ばれる者と、排除される者。その判断基準が政治家や生徒たちの目に触れることは決してなかった。




