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AI教師  作者: AKi
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掲示板への書き込み

21時10分頃


織田悠馬は自分の部屋へ戻るとすぐさまパソコンの電源を付ける。AI教師掲示板を確認するためだ。

先程の匿名コメントが表示されているのを確認すると、自分も負けじとAI教師について知っている知識を書き込みたい衝動に駆られる。彼は手を動かした。


匿名の名無しさん:『AI教師の行動が不気味。生徒達をまるで監視してるみたいだ。生徒が一人謹慎処分になったらしい。』


書き込みが終わると満足感に浸った。織田は毎日このAI掲示板を覗いては書き込みを行う事が日課となっていた。初めの頃は比較的穏やかな文章で、何気ない日常やAI教師について気づいたこと等を書き込んでいたが、段々と過激になり批判的な内容のコメントも増えていった。

匿名で表示されるので、誰にもバレないだろうという心理が批判的な内容へと拍車をかけていく。


一方その頃、田中守もまた、自室でパソコンに向かって作業をしていた。しかし彼が取り組んでいるのは、掲示板への書き込みなどではない。田中はいつも授業の復習や学校生活についてのレポートをまとめ、それを親に送信するのが習慣だった。


この日も学校で起きた出来事を一通りレポートに書き上げると、父親のメールアドレスへと送信する。だがそのメールは、ある場所にも同時に届いていた。それは、AI高等学校の校長室にあるパソコンだ。


田中守の父親・信弘はこのAI高等学校の校長を務めている。そして校長として効率的に複数のレポートを確認するため、学校に勤務するようになってから、自宅だけではなく校長室のパソコンにもデータが送信されるように設定されていた。


しかし田中は、織田たちに自分の父親が校長であることを一切話していない。田中守はそのことを秘密にしていた。


『変に目立つのは苦手だし、いろいろ聞かれても自分の性格だと上手く答えられないからなぁ・・・』


彼はそう自分に言い聞かせながら、いつものように淡々と作業を進めていく。



夜21時20分頃、


山崎海斗は部屋に戻るなり、ベッドへ倒れ込んだ。足を器用に動かし、靴下を片方ずつ脱ぐと、それを無造作にベッドの下へ蹴り込む。慣れた動作だった。


彼はそのまま目を閉じ、静寂の中、微動だにせず瞑想にふける。山崎には癖があった。考え事をするときには、こうして横になり、余計な動きをすべて排除して自分の思考に集中するのだ。


しばらくその状態が続いたが、やがて彼は自然に眠りに落ちた。目を覚ましたのは数時間後、夜中の1時過ぎだった。


寝ぼけた様子もなく、山崎はすぐにノートパソコンを引き寄せる。電源を入れると、手慣れた動作で掲示板を開き、新しいコメントが投稿されているかをチェックし始めた。一通り目を通すと、管理者専用の機能で投稿者のIPアドレスを確認し、それをメモ帳に書き写す。


彼はこの掲示板の管理人。匿名掲示板とはいえ、管理者としてIPアドレスを確認することができる。そのため、寮内のパソコンから投稿された場合は、IPアドレスの末尾と部屋番号を照らし合わせることで、投稿者をある程度特定できる仕組みになっていた。


画面に目を落としたまま、山崎は呟く。


「また織田くんの部屋のパソコンから書き込みしてる……」


山崎はすでに、織田悠馬がほぼ毎日のように書き込みを続けていることを把握していたが、それを本人に知らせるつもりはなく、情報分析の一つとして利用していた。


そんな折、時計の針が夜中の1時30分を指す頃、掲示板にまた新しい匿名コメントが投稿される。


匿名の名無しさん:『体操服事件の真犯人はこいつだよ』


掲示板に投稿されたコメントには、一枚の画像が添付されていた。それはAI学校の生徒が、京本悟の机に持田由美の体操服を押し込む瞬間を捉えた写真だった。


パソコンに向かいながらその投稿を確認した山崎海斗の指が一瞬止まる。画面を見つめ、ぼそりと呟いた。


「……この人が犯人、か」


画像には犯行を行っている生徒の顔がはっきりと写っていた。山崎は掲示板の管理人として、その投稿をそのまま放置するわけにはいかなかった。万が一、拡散でもされると大炎上し自分の責任が問われかねない。


彼は素早く管理者権限を使い、そのコメントと画像を削除した。しかし念のため、削除前に画像を保存し、別フォルダに移しておくことも忘れなかった。


投稿が掲示板に掲載されていたのはわずか10分程度。しかし、深夜1時30分を過ぎた時間帯だったため、その投稿を目にしたのはおそらく山崎海斗だけ。そして、投稿者がどこから発信したのか、IPアドレスを追跡することでおおよその場所を特定することができた。


画面を見つめ、山崎の口元が笑みを描く。やがてそれは抑えきれない笑い声へと変わっていく。


「ハハハハ……こういう奇天烈な事が起きるから掲示板は面白いんだよ!」


彼は部屋で一人腹を抱えながら高笑いを続けた。投稿された写真が示す犯人。そしてそれを暴露した投稿者。すべてを知ることができた興奮が彼の中に湧き上がっていた。


「なるほどね。この人が犯人で、投稿された場所は……あそこか」


そう言うと、山崎は椅子の背にもたれかかり、しばらく腹を抱えて笑い続ける。自分だけが知る秘密。その特権的な感覚が、彼に優越感を与えていた。


「今夜は眠れそうにないな」


そう呟きながらパソコンを操作し、趣味でもあるプログラミングの勉強を黙々と行い始めた。

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